「テレビ局はプライムタイムに視聴率15%以上取る番組を作るというのがうまくいかなくて困っている。生中も似たようなことをやろうとしていて、それは絶対うまくいかないと思っている。すみ分けをしないと、単なるテレビの失敗の後追いをするだけになる」(西村氏)
「(ダウンタウンの)浜田(雅功)さんを出したことで、『テレビと同じようなことをニコニコ動画がやろうと思えばできるんですよ』という証明をした。その時点で僕はもう終了でいいと思っている。やろうと思えばできるけれども、僕たちはそっちにいきません、というようにするべき」(西村氏)
逆に、野球中継や亀井静香郵政・金融担当相の記者会見の生中継のような、何が起こるかわからず、またテレビではなかなか放送できないようなコンテンツに注力すべきというのが西村氏の考えだ。
もちろん、生中のような番組を見るために有料会員が増えたり、タレントを呼ぶことによるプロモーション効果が生まれたりすることもある。問題は、効果測定をきちんとしているか、また将来的な意義や展望をどこまで考えているか、という点にある。
「黒字化に貢献しているのであれば、やっていいと思う。また、たとえば亀井さんの会見の生中継は、今後の記者クラブがどうなるかという議論の中で『大臣が話す際にネットで生中継をするのはあたりまえ』という状況を実は作っている。これが広がっていったときにどういう意味を持つか、というところまで考えているならアリだと思う。ただ、『新しいことをやります、効果測定をしていないのでそのまま続けます』といって、リソースばかり増えるけれども進む速度は遅くなってしまっているというのが現状だと思う」(西村氏)
「僕が言わなくても、ユーザーはわかっていること。それを運営者は気づいているべきなのに、なぜかそっちの方向にいっていない。トップページの問題と一緒で、一回動いてしまったものを変えるというのはものすごいエネルギーがいるし、そこで反発を受けてまでやっても、その人にとってはメリットがないでしょうからね」(西村氏)
ただ、ニコニコ動画における動画ジャンルの偏りについては、カテゴリの再編や、ニコニコ動画に投稿された新着動画を紹介する生番組「世界の新着動画」などで対応しようとしている。
動画のカテゴリはニコニコ動画(9)において、人気だった「アイマス(THE IDOLM@STER)」「東方(東方Project:人気サークル「上海アリス幻樂団」が制作したコンテンツ)」「ボカロ(VOCALOID:ヤマハが開発した音声合成技術を使った歌声合成ソフト)」を1まとめにするなどの変更を加えた。
これは、動画ランキングを多様化する狙いがあったと西村氏は言う。「複数のカテゴリのランキングが並列に表示されることで、マイナーなジャンルのカテゴリにある、再生数はそんなに多くないけれども面白い動画がランキング上位に来れば、広がりが生まれる」(西村氏)
「なぜユーザーが『東方』や『初音ミク』というカテゴリタグを使うかというと、それをつけると見てくれる人が多いから。それはあまりいいことではないと思っていて、本当にそのジャンルが好きでカテゴリタグを使うのであればいいけれども、単に目立つためにそれを使うというのでは、どんどん(ニコニコ動画の)世界が狭くなる」(西村氏)
ドワンゴ ニコニコ事業本部副本部長で、ニコニコ動画では「齋藤P」として知られる齋藤光二氏も、「ランキング上位に行きたいというモチベーションで『ボカロ』などの動画を作るケースがあって、そうするとニコニコ動画の文化が偏ってしまう」と話す。
新たに始まった世界の新着動画も、それまでニコニコ動画内で有名でなかった人が作った動画であっても、良い動画であればほかのユーザーからの評価を得られるようにすることを狙っている。これらはいずれも、ニコニコ動画が掲げる「一般化」に向けた取り組みだ。
「一般化って、僕は多様性だと思う。オタクばっかり集まっていると、それは一般的じゃない。とはいえ、『一般人』というのが存在するわけではなくて、多様性を作っておくといろんな人が来るので、平均すると結果として一般的になる、という方向なのではないか。『東方』などのカテゴリがついている動画にばかり人が集まるという構造じゃないほうが、より多様性が生まれる」(西村氏)
ちなみに、中野氏によると、ニコニコ動画(9)の機能のうち、現在までに盛り込まれているものは「10%程度」とのこと。新機能などについては、2010年2月まで日本各地で開催される「ニコニコ大会議2009〜2010 ニコニコ動画(9)全国ツアー」にて公開される予定だ。
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