勢いを見せる女性向け恋愛ゲーム市場の動き--女性の願望を体感させるメディアとは - (page 2)

松橋正博(ドコモ・ドットコム コンサルティング部コンサルタント)2009年08月03日 16時20分

サービス面でのバリエーション

 その後、サービス面での多様化が進み、2008年2月にスタートした「ヒルズの恋人」では、ポイントの追加購入を行うことで1日に読み進めることができるボリュームの制限解除が導入される。これにより、ユーザーは日数の束縛を受けず読み進めることができるようになった。多くのグッドエンドを見たり、一度クリアしなければ登場しないキャラクターの攻略を行ったりと、本格的にゲームを攻略したいユーザーには受け入れられた。

(※主人公がOLなど、他サイトよりやや対象年齢が高いのも特徴。)
ヒルズの恋人 ヒルズの恋人

 また、2008年3月開始の「僕は君と恋に落ちる」は、キャラクター自体に力が入れられた例だ。モバイルゲームでは数少ないボイス対応を行い、そこに有名声優を起用。さらにキャラクターデザインには漫画版「恋空」の人気漫画家を起用した。モバイルオリジナル作品が多い中、著名な作者をゲーム利用のきっかけとして用いるといった差別化が図られていた。もちろんサイトではその効果を最大限に活用し、ボイスや待受画像のなどの関連コンテンツの販売が行われている。女性向け恋愛ゲームで、いかに利用を促進させるかのひとつの方向性と言えるかもしれない。

  • 僕は君と恋に落ちる

 さらに、2008年10月に開始された「執事達の恋愛事情」においては、購入できるコンテンツとして、主人公のアバターアイテムが提示された。登場する相手の男性キャラクターには、「俺様キャラ」「弟キャラ」など様々あり、もちろん女性の好みも男性キャラクターごとに「エレガンス系」「キューティー系」など、それぞれ持っている。そのため、相手に合わせた言動(選択肢)だけではなく、自分の見た目も変化させることで相手を惹きつけるのである。好きな人のために、好みの服装をしたり、デートのたびに服装を変えたりと、女性的視点での演出の細やかさが見られる。また、アバターアイテムが次々増えていき攻略要素が増えていくことはモバイルネットワークの特性を活かした販売手法とも言える。

モバイルユーザーとPCユーザーの違い

 さてここまで紹介して、「特に新しいゲームの紹介ではないのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれない。なぜなら、確かにモバイルの女性向け恋愛ゲームは、「ゲーム」として見る場合、特殊なルールや独自のゲーム性など特徴的なところは意外に少ないのである。先にも述べたように複雑なルールや、やり込み要素などを必要とせず、シンプルと思わせるようなゲームシステムが逆に特徴となっているのだ。それはなぜか。比較をする意味で次にコンシューマ向けゲームを紹介したい。

 女性向け恋愛ゲームと聞いて、筆者がまず思い出すのは、「アンジェリーク」や「遥かなる時空の中で」などのネオロマンスシリーズや、「ときめきメモリアル ガールズサイド」などである。いずれも女性が主人公となり、男性キャラクターとの恋愛を楽しむといった目的はモバイルゲームと同様である。それぞれはゲームジャンルが異なるため一概にまとめることは出来ないが、相手の男性キャラクターの好みに合うように該当のパラメータを上昇させたり、対象としているキャラクターと出会えそうな場所に移動したりするといった内容は共通しているように思われる。

 さらに、ゲームによっては裏パラメータが存在したり、対象キャラクターだけではなく交友関係を意識した攻略を必要するケースまで存在している。素養としてゲームをプレイしたことがあるユーザーにしてみれば、一見ゲームとしてはあって然るべき要素だと思われるかもしれない。ただし、普段ほとんどゲームをプレイしたことがないユーザーにとってみると、それだけで難しいと感じてしまう可能性は高い。ターゲットユーザーの違いにより支持されるゲームシステムが異なることが分かる。

 また、その違いはキャラクターの設定などにも見られる。コンシューマタイトルの女性向け恋愛ゲームの対象キャラクターを見ると(参考:ゲーム白書2007女性向けゲーム)、幕末志士だったり、アラビアの王子だったり、異世界の住人だったりと、ややファンタジックな設定が多いように見受けられる。もちろんモバイルゲームにもファンタジックな内容のゲームも存在するが、支持を受けているゲームを見ると、設定は学生やアイドルや社会人といった現実的なものが多い(対象が若くてイケメンでお金持ちだったりするのでファンタジックと言えなくも無いが)。ファンタジックな設定より、現実に近い設定が好まれるというのは、コンシューマユーザーが、単にモバイルに移動してきたわけではなく、新たに開拓された層により、モバイルは独自の市場を獲得したことが言えるのではないだろうか。

 一方、ストーリーにはセクシーさを多く含まないのもモバイルの特徴であろう。このセクシーさを含まない設定自体が新興市場には重要なポイントだったように思われる。それは、ややセクシーな内容やマニアックな設定のものはごく個人的な趣味範囲で留まることが予測されるが、ある程度現実的な設定であれば、他者に対しての口コミによる波及効果を伴うこともできる可能性がある。事実、多くのコミュニティーサイトで攻略記事やゲームコミュニティーを見ることができる。

 どういったユーザーをターゲットとして、そのユーザーがどういう判断基準で、どういう嗜好を好むのか、マーケティングの王道ではあるのだが、改めて当市場を分析すると再確認されたことである。

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