勢いを見せる女性向け恋愛ゲーム市場の動き--女性の願望を体感させるメディアとは - (page 3)

松橋正博(ドコモ・ドットコム コンサルティング部コンサルタント)2009年08月03日 16時20分

競合サイトと差別化するための視点

 「ゲーム性をターゲットに合わせあえて弱める」それは逆を返せば、他ゲームサイトと差別化しにくいという意味にもなりえる。そこで、冒頭で紹介したゲーム、恋人はNo.1ホストが、テーマとしてサイト開始時期のいわゆる「ホストブーム」を用いたことに注目したい。人気ドラマや話題作品の登場人物の職業やテイストを取り入れ(もしくは先取りし)、いち早くサービスとする。もちろんモバイルに限った特性ではないが、女性向けの恋愛ゲームでは良く見受けられる手法である。

 例えば、最近では「天下統一恋の乱」「天下一戦国LOVERS」「姫君恋花絵巻」のような歴史をテーマにした作品が多く見られるようになった。いずれも戦国武将などとの恋愛がテーマになっており、大河ドラマに登場する直江兼継を始めとした武将を愛でる「歴女」ブームを意識した内容である。他にも、今年に入りドラマやアニメで「執事」をテーマにした作品が話題になっていた際に、「執事たちの恋愛事情」「執事サマにお願い」「執事ホテル」といったサイトが立ち上がっている。

 これは、なにもサイト単位に限ったことではなく、追加キャラクターやストーリーのディティールなどコンテンツの更新部分に取り入れることでも実現可能な部分はありそうだ。いずれにせよ、話題性をいかにゲームとして昇華させるのか、隆盛の激しいモバイル市場においては非常に重要な視点と言える。

 また別の視点から見ると、この手法が女性向け恋愛ゲームに適していたと言えるかもしれない。複雑なゲームシステムを持たないということで、一般的なモバイルゲームと比べても、制作コストを安価に抑えることができる。ゲーム構成などを固定化し、バリエーションにより複数サイトを立ち上げていくことで、さらに運用コストを安価にできる可能性もある。コスト面での優位性は柔軟な対応の実現を生み、時流に乗ったコンテンツを素早く市場に提供できると推察される。

女性の願望を体感させるためのメディア

 女性向け恋愛ゲームが何であるか。それは「女性の願望を体感させるためのメディア」であると言ってよいだろう。部活のマネージャーを務めてキャプテンと恋に落ちたい。修学旅行で憧れの男子に告白されたい。芸能人との秘密のスキャンダルを暴かれたい。そんな女性であれば誰しもが一度は夢見たであろう体験を、今最も手軽に味あわせてくれるコンテンツこそが、これらモバイルの女性向け恋愛ゲームなのである。

 いずれにしても、恋愛ゲームとは「攻略」や「コンプリート」などの「ゲーム性」を敢えてそぎ落とすことで、女性であれば誰もが持っている「願望」をシンプルに楽しませることに成功したと言えるであろう。これらをゲームと呼ぶかどうかは賛否が分かれるところではあるが、携帯電話というパーソナルツールにおいて、新たなマーケットとして確立されたことは確かだ。

 作品数の増加と共にテーマやシチュエーションは多様化、細分化が進んでいく。そしていつかは全てのシチュエーションが出尽くし市場が飽和する日がやってくるかもしれない。しかしそれは杞憂である。少女マンガやトレンディドラマがそうであるように、真に魅力のあるシチュエーションはテイストを変えて2度でも3度でも楽しめるものだからだ。女性向け恋愛ゲーム市場はまだ始まったばかり。第2のケータイ小説ブームのように、ドラマ化、映画化などを踏まえた展開が現れるのか、注目を集めつつある今だからこそ、今後の女性向け恋愛ゲームに期待したい。

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