買収の狙いは新たな市場構築にある--シスコのM&A戦略責任者に聞く - (page 2)

文:Marguerite Reardon(CNET News.com) 翻訳校正:向井朋子、小林理子2007年06月27日 08時00分

 非常に裕福な人なら、現在のホームネットワークで確実に素晴らしいことがたくさんできるでしょう。シリコンバレーは、完全に自動化された住宅に住んでいる人々や、18台ほどもの高精細度テレビ(HDTV)でストリーミングをしている人々がいることで有名ですが、これは平均的な消費者ではありません。小売価格はまだ安くなる必要があるのです。高価すぎる製品を売り出すのはわれわれの本意ではありません。Linksysの持つ力は、平均的な消費者に近い位置にいられるところにあるのです。

--Ciscoなどの企業がいつも喧伝している素晴らしさが実現するとすれば、人々はかなり高価だとしてもホームネットワークのアップグレードに金額をかけると、業界は考えているのでしょうか?

 消費者の支出の仕方は変化しています。以前はレコードやCDに使われていた金額が、現在はiPodや「iTunes」に使われるようになってきました。人々は映画に出かけるよりも、ホームエンターテインメントに投資するようになっています。したがって、デジタルメディアへと支出が移っていることによって、消費者の財布の中身に対してCiscoが働きかけられる割合は大きくなっていると言えます。しかし、それでも価格は適正でなければなりません。

--最近、非公開投資会が関係する買収が多数あります。たとえば、AvayaやPalmが資金を非公開投資会社から得ています。これは、CiscoにとってのM&A環境をどのように変化させましたか?

 どの市場で同じですが、買収と合併にもサイクルがあります。数年前には、多数の企業にとって買い手企業は当社だけでした。それが、当社の買収パワーを大きくしました。われわれは、時間をかけて決定を下し、契約条件を規定することができました。現在、状況は変化しています。新規株式公開(IPO)市場は後退し、非公開投資会社が事情を違ったものにしています。われわれは、まったく違った対処をしなければなりません。WebExの買収によって当社は、非常に素早く中規模の株式公開企業と交渉できる能力を示しました。このことは非常に重要です。

--1990年代末、ほとんどすべての新興企業がCiscoに買収されることを望んでいました。それはまだ今日でも同じだと思いますか?

 はい。多数の企業がいまなお当社に買収されたいと考えていると思います。それはわれわれが、現在の社会の事情ついて非常によく理解していることを意味します。そして当社は今も、多数の買収交渉に関して「イエス」か「ノー」を言える立場にあり、実際にそうしています。今日のような環境においても、買収が当社の利益になるかをよく確かめます。

--最近、「ノー」と言わなければならなかったのは何ですか?

 Avayaはしばらくの間身売りの意向を明らかにしていましたが、われわれはAvayaに対し、高い市場価格を付けていませんでした。当社では、市場を統合する目的での買収はしません。なぜなら、そういった買収は成長を促進しないからです。よいM&A戦略とは、技術とビジネスモデルを拡大することにより、市場の構築を目指すものです。

--Ciscoはこの5年から10年の間に、大きな変化を遂げました。そして現在、複数の新しい市場に参入しようとしています。今後の5年間、Ciscoはどこに進むと思いますか?

 とてもいい質問ですね。このビジネスでは、変化こそ常態です。年商500万ドルの企業であろうと3600万ドルの企業であろうと、変化しなければ、市場でのポジションを失います。技術は急速な周期で発展し、変化を拒む人々は現実に報いを受けるでしょう。振り返えれば、1965年のFortune 500企業のうち、現在のリストに残っているのは、わずか19%の企業だけなのです。

 今後多くの変化があり発展を遂げるであろう場所は、技術のコンシューマ化のなかにあると私は考えています。当社は、家庭で消費者が使用しているアプリケーションを、小規模企業や中規模企業へ、さらには大規模企業へと導入するのを支援するつもりです。また、当社の顧客であるサービスプロバイダーが、これらの技術をその顧客に提供できるように支援していきたいと考えています。さらには、新しいビジネスモデルに対応するため、以前とは異なる形でも顧客と協力していくつもりです。

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