しかしHPとNanolithoは、このシステムは比較的安価なため、大学の研究開発機関などを惹きつけると考えている。こうした顧客は、おそらくまず複数のユニットを購入して実験的に使用し、問題がなければ実際に製造工程に組み込む可能性が高い。
HP Labsのシニアフェローで、Quantum Science Researchグループの責任者を務めるStan Williams氏は、次のように話す。「ユーザー層の範囲は、きわめて広い。可能性として、電子機器メーカーがある。光学や光通信の分野もあるだろう。医療研究の分野という可能性もある」
Williams氏によると、Nanolithoが市場投入する予定の同技術は、じつのところHPが10年にわたって改良を重ねてきたシステムの4代目だという。その10年の間にHPは、従来のマスクアライナによる回路パターンの原板に合うように、装置のサイズを縮小していった。
Nanolithoは、すでに1件契約を獲得し、それ以外にも複数の顧客とベータテストに入る予定になっている。同社はCEOのPi氏と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の教授であり、以前HP Labsに所属していたYong Chen氏が設立した会社で、HPが株主となっている。これ以上の財務状態は公表されていない。
Nanolithoは、インプリントリソグラフィのマシンの販売のほかに、顧客に合わせて複雑なモールドの成型も行う計画だ。Pi氏によると、実際には、モールド上にパターンを組むほうが、マシンそのものよりもコストがかかるという。モールド上へのパターン形成は、電子ビーム(EB)リソグラフィを利用したエッチングで行うが、EBリソグラフィは非常に精密な線を形成できるかわりに、量産するのが難しい。だがこのシステムでは、1回モールドを作成してしまえば、あとはそれを使って同一のチップを大量に製造できる。
プリンストン大学とテキサス州にあるMolecular Imprintsの共同研究からスピンアウトしたNanonexも、インプリントリソグラフィ技術を開発している。
MicrosoftやIBMをはじめとするハイテク企業同様、HPも自社技術のライセンスからさらなる売り上げを得ようと、同社研究所の成果および保有特許を洗い直していた。
より未来を見据えたHPの構想の1つが、クロスバーラッチと呼ばれる、ワイヤの格子を分子で架橋して演算処理ができるようにするスイッチング回路だ。
Williams氏によるとHPは、同社が開発したインプリントリソグラフィマシンで、クロスバーラッチなどの次世代回路を製造したという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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