ウルシステムズの漆原氏は、大手企業とベンチャーが組む際に、「大手がベンチャーと何をどうすればいいのか、理解しきれていないケースもある」と指摘する。ウルシステムズとHPとの関係が良好なことについて同氏は、「HPはわれわれがどう動くか、あうんの呼吸で理解してくれているところがある。一方、関係があまりうまくいかないケースでは、大手がベンチャーを管理しようとすることがある。そうなるとベンチャーのよい特色が生かされない」と話す。
他にも、ベンチャーが大手にアプローチする際の課題として、どこにどうアプローチしていいのかわからないことがある。大手の規模が大きくなればなるほど、ベンチャーがアプローチした際にたらいまわしにされ、最終的には取り合ってもらえないというケースもある。
HPの重松氏も、この点については問題だと考えている。「IBMのようにコーポレートベンチャー部門があればベンチャーも大手にアプローチしやすいが、HPはベンチャーと出会うための仕組みがない」と重松氏。同氏は新事業を立ち上げることをミッションとしており、常にアンテナを張っているというが、それでも優秀なベンチャーを見つけ出すのは困難だという。重松氏は、「ベンチャーと組めばHPにもメリットがある」という点を強調し、企業としてベンチャーを受け入れやすい土壌作りに努めているというが、「出会い系企業版のようなものがあればいいのに」との思いもあるようだ。
IBMの勝屋氏はこの課題について、「大手はVCと積極的につきあうべき」と提案する。常に優れたベンチャーを捜し求めているVCが、ベンチャーと大手企業の「のりしろ」の役目を果たしてくれるというのだ。
また、リアルコムの谷本氏はベンチャー側の立場から、「大企業がベンチャーを見つけるのは大変だが、ベンチャーが組みたい大企業はたいてい決まっている。その中で誰にアプローチするかだが、それは大企業でいい意味で浮いている人だろう。型にはまっていない人をベンチャー側から探せばよい」と述べた。
ベンチャーと出会った際、大手企業はベンチャーの何を見るのだろうか。IBMの勝屋氏は、「経営チーム、ビジネスモデル、競合優位性、市場性などはもちろんだが、ISVの観点で個人的にとても惹かれるのは、お客様のことをとことん理解しているベンチャーだ。やはりユーザーの視点に立つことのできる経営者は非常に魅力的」と話す。「逆に、お客様の立場に立てない経営者だと難しい。中にはユーザーメリットをほとんど説明できない経営者もいる」(勝屋氏)
HPの重松氏は、「最初の出会いの場では、自社のいい面ばかりをアピールすることも理解できるが、2回目以降は守秘義務契約を結ぶなどして本音で話してもらわないと困る」と話す。また、「HPはこんな会社だ、という先入観を持ってアプローチされるのは困る。実際には思っていたこととは違う分野で組めることもあれば、その逆もあるからだ。何かできることがあれば組みたい、というスタンスで来てもらうほうがやりやすい」とも言う。
一方、ベンチャー側から大手企業に対する意見としては、漆原氏が「ベンチャーに任せられる部分は任せてほしい」と述べた。「ウルシステムズも大企業から転職してきた社員がいるが、ベンチャーでは管理されすぎるとやる気が失せてしまう人が多い。逆に任せてもらえると、皆猛烈に働く。言わなくても勝手に働くということをわかってほしい」(漆原氏)
また、谷本氏も「ベンチャー企業はそれぞれ得意分野に特化して強みを磨いている。よってパートナー関係を結ぶ特定分野においては、大企業もベンチャー企業も互角であると考えてよいはず。その中で、よい意味で同じ目線で、コミットメントを持って仕事をしてもらいたい」とした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境