筆者が気に入っているのは、ATOKパレットの「メニュー」から利用できる「お気に入り文書」だ。「メール署名」「ビジネス文書」「お気に入り(ユーザー定義)」「顔文字1」「顔文字2」「あいさつ文例」から、目的に合わせて顔文字や文章を選べる。中でも特に重宝しているのが「あいさつ文例」。書き出しや結びの定型文、感謝、謝罪、依頼などのシチュエーションに合わせて使える文例が6〜10種類ずつ用意されているのだ。前文・末文などよく使う言い回しは頭に入っているものの、見舞いや励ましなどの文書はなかなか普段から書き付けるものではない。ここぞとばかりにビジネス文書集を引っ張り出していたのだが、ATOKがあればさらさら書き進められそうだ。
「お気に入り文書」は、編集ツールを使うことで不要なものを削除したり、新しく文書を登録したりできる(あいさつ文例を除く)。「メール署名」といった「グループ」の新規作成も可能なので、例えば請求書や書類送付状、ファクシミリ送信状などの定型文を登録しておけば便利だろう。
辞書・変換機能が大幅に向上したATOKだが、一番驚いたのは起動・入力時の変換スピードだった。以前のバージョンを利用していたとき、OSと共にATOKも起動する設定になっていたのだが、ATOKの起動を「まだ起動してないのか」と少々苛つきながら待っていた記憶がある。また、入力してからインラインで変換するときもワンテンポ遅れがちで、思考が分断されてしまいそうになることもあった。それを考えると、特に単語・英語に対する解説機能までを加えた電子辞典を搭載しながらも入力スピードを緩めることなく文書入力できる「ATOK 2005 for Mac OS X」はかなりの改善が施されている。
個人的には連想変換機能が大のお気に入りだ。変換候補だけが並んでいても、どういったニュアンスで使われるかが把握できなければ、やはり最終的には辞書に頼らざるを得なくなる。電子辞書によって手間は軽減されていたものの、候補の隣に文例を表示してくれることで理解が深まり、文脈に沿った正しい言葉が選べるようになるメリットは計り知れない。特に英文に関しての悩みが深かっただけに、少々大げさだが「天の助けか」と喜んだほどだ(文例集を眺めていると自分のボキャブラリーや言い回しの貧困さに直面するのも事実だが……)。ATOKはもはや、単純に日本語を入力するというプログラムではない。新しい言葉や文章との出合いを提供する場であり、日本語を使う者に対して言葉の理解や美しさへの気づき──つまりは言葉に対する豊かさを与えるツールではないだろうか。
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