ことえりと比較すると細かいところには差が現れたものの、実はメールやビジネス文書を作成するにあたっては変換効率に大きな差異が見られなかったのも確かだ。しかし、ATOKが大きなアドバンテージを持っているのが「校正/入力支援」。この機能があってこそのATOKと言っても過言ではない。
校正/入力支援機能はいくつかの種類に分けられる。主な機能として挙げられるのは、(1)入力の間違いを自動訂正、(2)尊敬語と謙譲語の混同や二重敬語の指摘、(3)「ら抜き/さ入れ表現」の指摘、(4)商標名の指摘、(5)慣用句・ことわざの誤りを指摘──などだ。
(1)は、入力ミスを犯した際、「delete」キーで一旦消去したのち正しい文章を入力することで、同じ入力ミスに対して正しい入力での推測変換候補を表示してくれる機能だ。推測変換候補は、「shift」+「return」キーで確定する。
(2)は、混同しがちな尊敬/謙譲語・二重敬語を指摘し、正しい変換候補をいくつか表示してくれる。「control」+「↑/↓」キーで変換候補の中から選んで確定する。
(3)は、知らずに使っている「食べれる」「見れる」といった「ら抜き表現」、「読まさせていただく」「使わさせていただく」といった、へりくだった表現の誤りを指摘、正しい表現を表示する。
(4)は、「セロテープ」「ホチキス」「バンドエイド」などを始めとして、日常で何気なく口にしてしまう商標名を指摘。使っている本人は商標名と気づいていない場合が多いので、ウッカリ文章中に登場させるのを防げる。
(5)は、「無尽蔵に使う」「上や下への大騒ぎ」といった慣用句やことわざの誤使用を防ぐ。さらに、入力するであろう慣用句/ことわざを最初の数文字から推測して変換候補として表示する機能をも備えており、文章表現の広がりをサポートしてくれる。
これらの機能に加え、推測変換の柔軟さがATOKをより使いやすいものにしている。これまで入力/変換した文字列をコツコツと学習してくれているので、ユーザーに合わせた変換候補の表示が可能になるのだ。最初の数文字を入力してtabキーを押せば、これまで入力した文字列を表示してくれるのだ。つまり、「使えば使うほど自分に合った辞書」が自動的にでき上がっていくことになる。
ATOKを使い始めて「これはもう手放せない」と感じた決定打になったのは、ズバリ「連想変換」機能だ。変換している言葉の類義語や言い換え表現を多数候補として表示してくれる。図のように、「ありがとう」のひと言から「御礼の申し上げようもございません」「恐悦至極に存じます」「ご足労をおかけしました」のように、さまざまなシチュエーションに合わせた御礼の言葉がずらりと並ぶ。筆者のように執筆業を営む者はもちろん、ビジネス文書の作成にも大いに役立つだろう。
連想変換は、類語を探したい際にもピッタリだ。単語ののみならず四字熟語や諺を含めた候補をふんだんに表示するのが大きな特徴だ。例えば「美しい」を変換した場合は139項目もの候補をピックアップ。「愛らしい」「浄妙」「雅やか」らの単語に加え、「鬼も十八番茶も出花」「明眸皓歯」「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」といった慣用句、諺なども加わっている。変換候補はひとつひとつが「日本語使いさばき辞典」と連動しており、アクティブになっている候補に対しての解説が表示されるため、どういった場面で使えばいいのかが一目瞭然なのもうれしい。
この連想変換機能に、新バージョンから英文レター文例集が候補として追加された。「ありがとう」の入力に対して「Thank you」が候補に現れるだけでなく、「I have no words to express my thanks.」「Thank you very much for the wonderful present」といった英文が現れる。英文候補の場合も単語の連想変換と同じく、選択されている英文例に対しての日本語訳と、その言葉を使うべき場面の簡単な解説が表示される。
連想変換機能を駆使すれば、日本語も英語も単語を入力するだけでいっぱしの文筆家になれそうな勢いだ。これまで類語辞典を引きながら文章の多彩な言い回しに四苦八苦していた筆者としては、IM(Input Method)単体で解説も読め、候補が選べる機能が何よりもありがたい。また、文章にしても普段なら思いもつかないような言い回しがゾロゾロ出てくるあたり(例:『おわび』の連想変換候補として『ご寛恕を願う次第です』など)、非常に勉強になった。
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