ソーシャルメディアを活用したマーケティング戦略の指南書「グランズウェル」の著者であるJosh Bernoff氏が、ad:tech tokyoで講演するために初めて来日した。
Josh Bernoff氏はForrester Researchでデジタル/ソーシャルメディアに関するリサーチ部門のトップを務める。同氏の提唱するグランズウェルという現象が企業に与える影響、そしてソーシャルメディアのなかでも一段と注目を集めるTwitterの活用法について聞いた。
一言でいうと、Web 2.0というのはテクノロジーそのものを表す言葉ですが、これに対してグランズウェルは人間ありきの言葉であると考えています。
グランズウェルはソーシャルメディアの最新トレンドだけでなく、コミュニティやディスカッションフォーラムなど、古いテクノロジーまで巻き込みます。価値の中心にあるのは人間です。
グランズウェルという本を書いたときに学んだのですが、グランズウェルという言葉はほかの言語ではドンピシャの訳がありません。もともとは海の波のような“大きなうねり”を意味するのですが、私がグランズウェルという言葉を用いるときには、ちょうど先日、日本で選挙があって政権が変わったのと同じように、“大きな人々の動き”という意味合いが背後にあります。
おっしゃるとおり、確かに企業そのものが話題になるのに、それを隠したり、止めることができないわけですから、非常に脅威になり得ると思います。ただ、マーケティングメッセージをうまく伝えるという意味においては本当に有効な手段になると思います。
では、どこからそのパワーが生まれるのでしょうか。それは結局、自分がコミュニティをコントロールしようとしないことです。そのコントロールの欠如からパワーが生まれます。これまでの広告は前もって定義したメッセージを企業側から一方的に伝えてきましたが、それだけではいけません。あくまでも人に任せるということで大きなパワーが生まれると私は考えています。
それはどちらとも言えません。たとえば私は誰かに会うとき、その人が属する企業について、Facebook、Twitter、Youtubeなどのソーシャルメディアを使って、その企業に関する情報がないか調べるわけです。
そういう状況に対して企業はどうすればいいのかとよく聞かれるのですが、結局何もできないというのが私の答えです。
というのも、Appleの場合は自分たちですべてのメッセージをコントロールし、逆にマイクロソフトはソーシャルメディアをどんどん活用して人々の意見を取り入れています。そういう意味ではクリアな答えはないでしょう。
Twitterは非常にシンプルかつパワフルなサービスです。Forrester Researchは2年前から、Twitterは成功するだろうと予測していました。それは間違っていなかったと思います。
たとえば顧客サポート、販売活動、マーケティングなど、多くの企業がTwitterを効果的に使っています。具体的なお話をしましょう。
米国最大手のケーブルテレビの会社コムキャスト(Twitterアカウントはhttp://twitter.com/comcastcares/)は、10人のチームでTwitterやFacebookなどを監視しています。誰かがTwitterに自分のコムキャストのテレビがうまく機能していないと書き込むと、コムキャストのチームはその人にすぐ連絡します。そこでお客様をきちんと繋いでおかないとサービスが解約されてしまうとコムキャストは考えているため、即座に反応してくれます。
Dellのアウトレット販売(Twitterアカウントはhttp://twitter.com/comcastcares/)のケースですが、このアカウントには100万人以上のフォロワーがおり、非常にシンプルな試みを展開しています。在庫が余った商品があると、たとえば「Latitudeを300ドルで販売しています」という情報をどんどん発信しています。これによって200万ドル分のPCを販売したそうです。
ブログはかなり努力しないとなかなか更新できませんが、Twitterはショートメッセージ。賢くない人にも使いこなせます。登録も簡単です。コメントを入力すればすぐフォロワーが生まれます。だからたくさんの人がTwitterに参加し、それによって企業にとっても効果が生まれます。これからTwitterをフォローしていけば、大きなビジネスになるでしょう。
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