DX未着手・途上企業のための「DX実践手引書 ITシステム構築編」完成版を公開


2022年10月26日
独立行政法人情報処理推進機構



DX未着手・途上企業のための「DX実践手引書 ITシステム構築編」完成版を公開
~DXの課題を克服した事例やAPI活用事例、API全体管理やアジャイル開発の解説を追加~

 IPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:富田達夫)は、日本企業のDX推進をめざして昨年11月に公開した「DX実践手引書 ITシステム構築編」に、DX実践の課題を克服した事例やAPI活用事例、API全体管理やアジャイル開発といった技術要素の解説を追記し、完成版を公開しました。

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 IPAは昨年11月、DX未着手・途上企業の担当者を技術的側面から支援するため「DX実践手引書 ITシステム構築編」を公開し、DXを実現するためのITシステムとそれを構成する技術要素群の全体像を「スサノオ・フレームワーク」*1として提示しました。その後も同フレームワークとクラウド、IoT、APIといった技術要素の関連を追記するなど改訂を続けてきました。このたび、DXに先行して取り組んだ企業がぶつかった課題を克服した事例や、技術要素としてのAPI活用事例とAPI全体管理、アジャイル開発の解説を追記し、完成版を公開しました。今回追記した主なポイントは以下のとおりです。

1)DX実践における課題と克服に向けた取り組み、結果を整理
 DX を先進的に進めている企業でも、取り組みや施策が最初から問題なく進んだわけではなく、試行錯誤を繰り返し、乗り越えたケースが多いことから、DX先進事例5社へのヒアリング調査を踏まえ、ぶつかった課題とそれを乗り越えるための取り組みおよび結果を整理しました。具体的には、システム開発の課題や、社内変革の地盤固めに関する課題を克服した以下の事例を紹介しています。例えば、作業の内容記録を手書きで倉庫保管していた製造業A社が、「外部リソースの活用」とそれによる「新しい開発手法の適用」によりDXを実現するまでの試行錯誤を1枚の図で表現しています(図1)。

(1)試みはしたが業務の電子化が定着しなかった(製造業 A社)
(2-a)システム開発に技術的な壁が存在した(製造業 B社)
(2-b)システム開発に技術的な壁が存在した(非鉄金属業 C社)
(3)事業の変革を進めるための人材が不足していた(サービス業 D社)
(4)トランスフォーメーションへの道筋が見通せなかった (化学工業 E社)



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図1: 試行錯誤の取り組みと結果、要点のまとめ(製造業 A社の事例)
 
2)API活用企業の事例を紹介し、API全体を管理する考え方を整理
 APIを活用している国内企業4社の事例を「背景・課題・ニーズ」や「取り組みの工夫点とその効果」といった構成で紹介するとともに、4社の共通点とAPI管理ツール提供企業へのインタビュー結果をもとに『API全体を管理する考え方』を整理しました(図2)。ここでは、多数のAPIを全体管理するための考え方を「技術的な観点」と「組織的な観点」に分けて整理しています。「技術的な観点」では、API利用側とAPI提供側の間に位置し、API群の管理や実行時の振る舞いを容易にする「APIゲートウェイ」を中心に、APIの開発を支援する「API開発支援機能」やAPIの動作を監視する「API監視機能」について説明しています。「組織的な観点」では、企業内にAPIを全体的に管理する役割を持った組織(API管理者)を作ることが望ましいとしています。そのうえでAPI管理者として推進が必要な「標準化の推進」「セキュリティ強化」「パフォーマンス改善」などについて解説しています。
また、スサノオ・フレームワークの8つの領域ごとに、APIを活用する際に考慮すべき内容もまとめています。例えば、スサノオ・フレームワークの「独自アプリケーション」領域は、顧客向けにサービスを提供する領域であり、他の領域と比較すると新規にAPIを開発して活用するケースが多いことから、将来的に様々なビジネスに対応できる構成にしておく「APIファースト」の考え方が重要であるとしています。



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図2: API全体管理

3)アジャイル開発の概要、効果、考慮点を明示し、事例を「アジャイル開発の家」を用いて図示
 ビジネスの価値の最大化に向けて、顧客に価値のあるソフトウェアを早く、継続的に提供するためのアプローチであるアジャイル開発について、概要から効果、考慮点、先進事例まで詳述しています。アジャイル開発は価値観や原則であり、ソフトウェア開発手法であり、ビジネス手法でもある複雑な概念であるため、IPAではその概念構造を「アジャイル開発の家」として整理しています。これは、家の土台として組織文化があり、2本の柱として人間中心と技術の尊重という価値観があり、屋根としてビジネス価値の最大化という目的があり、その家の中で高速仮説検証サイクル等の活動を行うことを図示しています。
本書では、アジャイル開発の先進的な取り組み事例として、内製化にシフトした事例やリーン・スタートアップの事例など、4社についてそれぞれの特徴を「アジャイル開発の家」で整理しました(図3)


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図3: 宿泊業・飲食サービス業B社のアジャイルの家

 IPAが本年8月に公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2021年版)」では、日本企業のDXは加速しているものの、依然として、全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が8割以上存在することが明らかになっています。IPAは本書が多くの企業に活用されることで、ITシステムの変革がより確実かつ適切に進み、DXが加速していくことを期待しています。

・DX実践手引書 ITシステム構築編 完成第1.0版:リンク


*1 モノリシックで複雑化・肥大化したシステムを「ヤマタノオロチ」に例え、それらを一つ一つ切り離して、使える部分は形を変えて再生させることで、害となっていた存在を、価値のある存在に変化させるという想いをこめた名称

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