東京医科大学分子病理学分野 黒田雅彦主任教授、泌尿器科学分野 大野芳正主任教授らの研究チームが、「がん細胞核の形態学的特徴から膀胱がんの早期再発の可能性を予測できる人工知能(AI)を開発 ~今後の人工知能のシステム開発に応用が期待~」

東京医科大学 2021年11月25日 20時05分
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東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)分子病理学分野 黒田雅彦主任教授、泌尿器科学分野 大野芳正主任教授、徳山尚斗助教、人体病理学分野 長尾俊孝主任教授を中心とする研究チームは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、がん細胞核の形態学的特徴により筋層非浸潤性膀胱がんの早期再発を予測する新規の人工知能(AI)モデルを開発しました。




 この研究成果は、膀胱がんの再発予測に核形態の定量的評価と人工知能技術が有効であることを示し、従来のリスク分類とは別視点から正確な再発予測を提供することが期待されます。これらの研究成果は、米国・カナダ病理学会(USCAP)の機関誌Modern Pathology誌 (IF 7.842)にオープンアクセス論文として掲載されました。


【本研究のポイント】
●初回標準治療である経尿道的膀胱腫瘍切除術は手技上、検体を細かい切片にするために構造や深達度評価が難しい場合があります。そのため、今回は手技的に影響の少ない核異型に着目しました。

●従来の主観的評価とは異なり、デジタル病理画像技術を用いて、細胞核の形態に関する様々な特徴量を抽出しました(図1)。これまでのAI病理学とは異なり、細胞の核異型のみで判断することが可能なアルゴリズムを開発しました。

●人工知能(AI)のテスト検証においてサポートベクターマシン(注1)は正答率90%、ランダムフォレスト(注2)は正答率86.7%と高い精度での再発予測が可能であることが示されました。


【研究の背景】
 膀胱がんは、世界で9番目に多い悪性腫瘍とされ、国内では、毎年約2万人が膀胱がんにかかり、約8000人が死亡しています。未治療膀胱癌のうち、膀胱筋層に浸潤を認めない筋層非浸潤性膀胱がんは全体の約70%を占めます。これらは比較的予後良好とされていますが、同時に30-50%と高い再発率が報告されています。再発を繰り返すことで予後の悪い筋層浸潤癌への進展を認めるケースも多くあり、正確な再発予測が治療戦略の構築には不可欠です。現在、デジタル病理画像、人工知能技術の発展により、人間の目視では確認できない画像の特徴を捉え応用していく試みが世界的に広がっています。しかし、筋層非浸潤性膀胱がんにおいては人工知能による再発予測の報告はこれまでありませんでした。

【本研究で得られた結果・知見】
 今回の研究によって世界で初めて筋層非浸潤性膀胱がんに対して、人工知能による再発予測の有効性が示されました(図1)。また、本研究ではがん細胞核の定量化された形態学的特徴の有用性が確認されました。これらの手法は一般的な病理画像であるHE染色をベースに測定できるものであり、簡便に他のがんの解析にも応用できる可能性があります。

【今後の研究展開および波及効果】
 人工知能を用いた予後予測の検討は、世界中で行われています。今回の手法は、HE標本という、安価で病理診断のスタンダードになっている組織画像を用いることから、波及効果が大きいことが期待されます。今後、さらに検討症例を増やすことにより、AIの予測精度を上げ、実用化を目指します。

【用語の解説】
(注1)サポートベクターマシン:人工知能の機械学習モデルの一つで、様々な特徴量を持つ集団を分類することができる。少ないデータ量でも高い精度のモデルを得ることができる手法である。
(注2)ランダムフォレスト:人工知能の機械学習モデルの一つで、分類(判別)・回帰(予測)、クラスタリングに用いられる。

【掲載誌名・DOI】
 掲載誌:Modern Pathology(Nature Publishing Group)
 DOI:10.1038/s41379-021-00955-y

【論文タイトル】
 Prediction of non-muscle invasive bladder cancer recurrence using machine learning of quantitative nuclear features

【著者】  (*責任著者 黒田雅彦)
 Naoto Tokuyama, Akira Saito, Ryu Muraoka, Shuya Matsubara, Takeshi Hashimoto, Naoya Satake, Jun Matsubayashi, Toshitaka Nagao, Aashiq H. Mirza, Hans-Peter Graf, Eric Cosatto, Chin-Lee Wu, Masahiko Kuroda* & Yoshio Ohno

【関連論文】
1. Saito A, Kuroda M et al. Mod Pathol. 2021;34(2):417-425. doi: 10.1038/s41379-020-00671-z.

【分子病理学分野ホームページ】
 リンク

【主な競争的研究資金】
 本研究は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「病理画像を用いた癌コンパニオン診断AIシステムに関する研究」の支援を受けています。

▼本件に関する問い合わせ先
企画部 広報・社会連携推進室
住所:〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1
TEL:03-3351-6141
メール:d-koho@tokyo-med.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター リンク

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