中央大学理工学部竹内健教授のグループが、指定した時点で自動的にデータが壊れるメモリシステムを開発 -- プライバシー保護「忘れられる権利」を実現

中央大学 2015年06月19日 08時05分
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中央大学理工学部の竹内健教授のグループは、インターネットにおけるプライバシー保護のため、「忘れられる権利」を実現するメモリシステムの開発に成功した。これは、SNSなどに書き込んだデータの寿命をあらかじめ設定しておくと、指定した時点で自動的にデータが壊れるというもの。破壊したデータを再現不能にすることで、より高いプライバシーを担保する「忘れられる権利」を実現する。


 インターネット上に書き込まれた誤った情報やプライバシー情報などにより、当事者が将来にわたって不利益を被ることが大きな問題となっており、デジタルデータの「忘れられる権利」(注1)が注目されている。データが忘れられる(削除されるべき)かは「知る権利」「表現の自由」も考慮して判断されるべき難しい問題で、データの作成者や内容に応じた対応が必要である。

 今回の研究では、SNSなどに書き込んだデータの寿命をあらかじめ設定することで、指定した時点で自動的にデータが壊れるメモリシステムを開発。この新システム(Privacy-protection Solid-State Storage(PP-SSS)System)は、データが記憶されるメモリ上のデータを、ユーザーが決めた時点で自動的に壊し再現不能にすることで、より高いプライバシーを担保する「忘れられる権利」を実現する(図1)。具体的には、フラッシュメモリ(注2)のエラー確率が高い精度で予測できる特徴(図2)を利用し、データをメモリに書き込む時点で寿命に応じた所定の数のエラーを意図的に注入(図3)することで、指定した時点でデータは壊れ、誤りが訂正できないようになる。エラーの注入は、書き換え回数が多く疲労したメモリほど、また、短い寿命を設定するデータほど、多くなる。以上の技術を構想し、事前に設定した寿命の時に画像データが解読不可能になることを実験により確認した(図4)。
 このシステムは、指定した時点でデータを意図的に誤るように制御できるので、メモリデバイス自体は物理的には破損しておらず、メモリは再利用が可能。

 HDDや磁気テープ、DVDなど機械部品を使った従来の記憶媒体では、機械部分の疲労や破壊の予測が難しいため、データの寿命の予測や制御は困難だった。一方、このシステムは半導体製品であるフラッシュメモリを記憶媒体として採用し、リーク電流によるフラッシュメモリのデータ破壊(エラーが生じていく)の予測が可能であることを利用することで、データ寿命を自在に制御できる。このことから半導体メモリの新しい市場ができることも期待される。

 研究グループは2014年にフラッシュメモリに印加するストレスを最小限にすることで、1000年を超える超長期間においてデータを保存できる可能性を示した。今回の新システムと併せ、高いプライバシーやセキュリティが求められるデータは所定期間で破壊し、デジタル文化財など長い時を超えて後世に残すべきデータは超長期に保存するなど、データの属性に応じてさまざまな制御が可能な記憶装置が、半導体メモリ技術により実現することが期待できる。

 なおこの研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業であるエネルギー・環境新技術先導プログラム「IoT時代のCPSに必要な極低消費電力データセントリック・コンピューティング技術」において実施された。

◆研究について
【研究者】
 竹内 健  中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)
【発表(雑誌・学会)】 
 本研究成果は、6月15日から19日に京都で開催されている「IEEE Symposium on VLSI Circuits」で発表される。
 論文名:“Privacy-Protection Solid-State Storage (PP-SSS) System:Automatic Lifetime Management of Internet-Data’s Right to be Forgotten”

●用語解説
(注1)忘れられる権利
 プライバシー保護のためインターネット上に存在する個人情報を一定の期間の後に削除したりや消滅させる権利。
(注2)フラッシュメモリ
 データの一括消去を特徴とする、電気的にデータの読み書きが可能で、電源を切ってもデータが消えない半導体記憶装置。

(参考)
 中央大学理工学部・竹内健教授のグループが、データの1000年記憶を目指してSSDのエラーを80%低減する技術を開発――デジタルデータの長期保存へ道
 リンク 

▼研究に関する問い合わせ先
 中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)
 竹内 健(タケウチ ケン) 
 TEL: 03-3817-7374
 E-mail: takeuchi@takeuchi-lab.org

▼リリースに関する問い合わせ先
 中央大学 研究支援室 加藤 裕幹(カトウ ユウキ)
 TEL: 03-3817-1603
 FAX: 03-3817-1677
 E-mail: k-shien@tamajs.chuo-u.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター リンク

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