デジタル時代の著作権協議会(CCD)は6月23日、東京渋谷区の古賀政男音楽博物館けやきホールでシンポジウム「デジタルコンテンツ流通の課題2009〜適正なコンテンツ流通の実現〜」を開催。2008年度におけるCCDの活動を報告した。
まず、文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長の川瀬真氏が国会を通過したばかりの著作権法一部改正について解説。「インターネットの隆盛に伴う、過去最大規模の改正」と強調した。
今後の積み残し課題としては、著作権保護期間の延長と私的録音録画補償金の問題があるという。両方について、「引き続き努力する」と権利者側への協力を約束した。また、一部の団体が強力に推進している「日本版フェアユース」への対応や、放送通信関連9法の統廃合の答申が総務省から出された後の対応など、著作権法をめぐっては今後もさまざまな動きがあるとした。
活動内容の報告では、CCD権利問題研究会主査の久保田裕氏がファイル共有ソフトによる著作権侵害の状況や対策について報告した。CCDを含む権利者や権利者団体が躍起になって違法性を周知しているにも関わらず、2007年度から2008年度にかけてもファイル共有ソフト利用者は増加しているという。
共有されているファイルの内訳を見ると、著作物と推測されるものは47%を占める。また、ここではアダルト系や同人コンテンツは除外されているため、実際にはもっと多い可能性があるという。この著作物のうち、著作権者から許諾を得ていないと推測されるものは97%にのぼるとのことだ。
こうした現状への対策として、久保田氏はファイルをアップロードした人に対する刑事摘発、ソフトの使用停止を促す啓発活動、アップロードをした人への発信者情報開示請求の3つの方法を提示。刑事告発については「年間で3〜4人(の刑事告発)という現状では効果が低い。1カ月に1回程度は摘発を繰り返す必要があるとの声もある」とした。
また、著作権侵害の申し立てが親告罪である点について、「実態を把握するための調査費用が莫大になることもあり、権利主張をしたくてもできない状況にある」と指摘。「このままネットでどんどん情報が流通すると、権利者としては適切な対価が得られなくなる」と日本版フェアユースなどの制度改訂に慎重な議論を求めた。
2008年5月には、こうした実態を背景に著作権団体と通信事業者(ISP)を中心とした「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会」を設立し、コンピュータソフトウェア著作権協会が事務局を務めている。現在は警告メールによる注意喚起活動に重点を置いているが、将来的には著作権侵害者に対するアカウントの停止や損害賠償請求、捜査、検挙などについても含みを持たせていた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス