今回開催された公募説明会には、昨年度の『飛躍 Next Enterprise』に参加して実際に海外に派遣されたベンチャー企業55社を代表して、シリコンバレー派遣コースに参加したライフイズテック株式会社の海外事業統括マネジャーである宮川聡氏、シンガポール派遣コースに参加したリーズンホワイ株式会社の代表取締役である塩飽哲生氏、オースティン派遣コースに参加した株式会社QDレーザの事業開発マネジャーである宮内洋宜氏、また運営事務局として昨年度より継続して運営に携わるトーマツベンチャーサポート株式会社の海外展開チームリーダーである大野祐生氏が登壇し、実際にプログラムに参加して得られた手ごたえや、その後の事業にどのような点が活かされているかなどを語り合った。
中高生向けにプログラミング教育の事業を展開しているライフイズテックの宮川氏は、プログラムに参加したことによる気づきについて、「現地で活躍している方々との交流はとても良い刺激になった。また、現地の投資家と直接話ができたのは非常に参考になった。彼らがどのような基準でベンチャーに投資をしているのかは、なかなか知る機会がない。直接お話をして感じる熱量はウェブサイトなどを通じては感じられないものだった」とコメント。また投資家によっても注目している領域に大きな違いがあった点を指摘し、「どのような人と交流すればビジネスに繋がるかがわかった」と手ごたえを語った。「『飛躍 Next Enterprise』に参加するにあたっては、目的を明確にすることを大事に考えた。なにをしたいのか、誰に会いたいのか、どんな知識を得たいのかなどをはっきりさせることが大切だ」(宮川氏)。宮川氏は今秋から米国に常駐して米国内で教育機関へのビジネス展開を本格的に進めていくほか、シリコンバレーの科学博物館で中高生向けにワークショップを開催することを通じてプロダクトのブラッシュアップを進めていくのだという。
世界的なヘルスケアの課題を解決することを目的に医師のソーシャルネットワーク「Whytlink」をグローバル規模で展開することを目的に事業を展開しているリーズンホワイの塩飽氏は、政府がベンチャーエコシステムの構築を積極的に推進しているシンガポールについて「金融街のあるアクセラレータでは、ウェブサイトを通じて数分の手続きで会社を設立することができ、またその場ですぐに資金調達をすることができる。そうしたベンチャー企業が創業しやすい環境が整備されている点に驚かされた」と日本との環境の違いについて指摘。また、「『飛躍 Next Enterprise』に参加して感じたのは、政府・経産省の支援というバックグラウンドによるアポイントの成功率の高さ。そして日本に帰ったあともJETROやTVSの密なサポートを受けられたのは、この1年の事業展開で非常に役に立った」とコメントした。今後は、『飛躍 Next Enterprise』が契機となり繋がったシンガポールの公立医療機関と提携して国内の医療機関に「Whytlink」を実装していくとしている。
富士通と東京大学の産学連携研究からスピンアウトして起業し、レーザ技術を活用した小さなプロジェクタを眼鏡に装着して網膜に映像を直接照射する網膜走査型アイウェアを視覚障がい者向けの医療機器として開発しているQDレーザの宮内氏は、オースティン派遣コースに参加して今年3月に開催されたサウス・バイ・サウスウエスト(以下、SXSW)に出展した。3日間ブースを通じて製品を来場者にデモンストレーションして、宮内氏は「SXSWはネットワーキングを最重視しているイベント。いろいろな人と交流しながら刺激を受けることができた。また、SXSWの大きなメリットは自社製品を知ってもらうという広報効果だが、国の事業として派遣してもらっているというブランド力は大きいと感じた。実際に、出展したことによる問い合わせは捌ききれないほど寄せられた」と語った。今後は、この経験を通じて生まれたネットワークを最大限活かして、ビジネスを推進していきたい考えだ。
3,000社以上のベンチャー企業の支援実績があり、昨今ますます高まる海外展開支援のニーズに応えて、様々な日本企業の海外展開を支援しているトーマツベンチャーサポート株式会社の大野氏は、日本企業が海外展開を進めるにあたって一番のボトルネックは、知識やノウハウ、人脈が無い中で手探りで進めてしまうことだという。その中で『飛躍 Next Enterprise』は、プログラムを通して海外展開に必要な情報やきっかけをつかむことができ、かつ事業が終わった後も、海外展開を目指す日本企業が集まるコミュニティの一員として繋がり続けることで、継続して海外展開を行う体制に参画できることが、海外展開を目指す企業が参加する一番のメリットだという。
パネルディスカッションの最後には、登壇者からこれから『飛躍 Next Enterprise』を通じて海外に挑戦しようとしているベンチャー企業に対するメッセージを寄せた。宮川氏は「海外への挑戦は楽しくマーケットも広い。しかし日本のベンチャー企業から海外への挑戦は少ない。これは課題である一方で大きなチャンスではないか。教育に従事する者として、若い人がベンチャー企業から海外へ挑戦する応援をしていければ」とエールを送り、塩飽氏は「海外には大きな志を持った多くの若い人達が挑戦している。こうした人たちと交流することで面白いことが起きるのではないか。私たちも引き続き挑戦するので、ぜひ一緒にやりましょう」と呼びかけた。そして宮内氏は「最初にプロジェクトを知ったときは、“日本政府はなんてすごいことをするんだ”と本当に驚いた。海外進出に必要な環境を整えてベンチャー企業の背中を押してくれる『飛躍 Next Enterprise』は凄く良い仕組みだと思う。私たちベンチャー企業はとにかくチャレンジしてみることが大事だと思う。攻めの姿勢をもって走る続けることが重要だ」と締めくくった。
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