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なぜSMBのIT投資が進まない?監査法人/公認会計士の視点からの分析(前編)

経営トップの無関心が問題、まず、ITにもっと興味をもつべき

 大手ITベンダーは、こぞって、「中堅・中小企業がターゲット」であると異口同音に叫んできた。製品やサービスの価格、導入しやすい仕組みなど、さまざまな施策も講じている。だが、中堅・中小の企業は、漠然とIT投資が必要という意識を持っているもののIT投資にどれだけ成功しているのだろうか。大原氏は「IT投資がうまくいかない状況の背景にあるものは、実は、大手でも同様なのではないかと思います。まず、第一に経営のトップが、ITをあまりよく理解していないとともに、業務フローについても十分に分かっていない。彼らが勉強不足なのだからではないでしょうか」と指摘する。

アルテ監査法人 大原達朗 代表社員

 では、なぜ大手とは異なった結果になるのか。「大手と中小の差は、社長がITのことをよく知らなくても、他に熟知している人が内部にいるのかいないかの違いということになります。中小では、システム担当の専任要員を置くのは困難になりますが、大手では、ITに習熟している人々がいて、そこそこうまくシステムを動かしていけるわけです」。とはいえ、大手にも課題はある。「ITのスペシャリストたちも、実際のビジネスへの理解は乏しいという場合が少なくありません。結局、国内の大手企業でも、真にシステムを使いこなしているといえるところはそれほど多くないのでは。やはり全体として、勉強不足であるとの感が強いです」。

 中小企業の経営者は、どのような勉強をすべきなのか。大原氏は「勉強といっても、無論、何かの試験のために学習するというようなことではなく、まずは、大企業のシステムや業務フローにもう少し関心を持つことが必要になります。IT投資を選択して、どんなシステムを構築するのか勉強をしていなければ、厳しい経営環境の下で、何一つ、武器を持たないで立ち向かわざるを得ないことになってしまいます」と話す。

 中小企業経営者は、なぜITへの関心が低いのか。「中堅・中小の経営トップは、いわば、宝くじに当たり続けている、きわめて強運の人々が多いのではないかといえるかもしれません」と、大原氏は語る。「彼らは、一人で、あるいは非常に少ない人数で起業し、人を集め、金の工面をして、企業を整えてきました。基本的には、創業者がすべて一人でしなければならないわけです。やがて、一人ですべてを見ることはできなくなり、人を集め、システム導入に至るわけですが、導入しても、一定以上の効果が出なければ、本来、会社は立ち行かなくなるはずです。しかし、経済全体が右肩上がりを継続していた頃の良い影響が残っていて、IT投資を丸投げで適当にやっていても、何とか会社は存続していけたのですが、もはや、そんな時代は終わりです。折角ITを導入したにもかかわらず、業績にプラスにならないのだとしたら、IT投資は、事業に関係のない高級外国車を買っているのとなんら違いはないことになります。会社として儲かっていれば、当面は傾かないのですから、それでここまで来てしまった人々が多いのではないでしょうか」(大原氏)という。

 ただ、「経営者層にも変化の兆しがでてきた」と大原氏はみている。「私が講師をしているビジネススクールには最近、40代の二世経営者たちがやってきて、システム、業務フロー、マーケティング、ファイナンスなどを学んでいます。おそらく、先代のやり方のままでは、いずれ挫折するということが分かっているのでしょう。彼らにより、中堅・中小のIT投資が変わっていく可能性はあります」。

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