今回の震災では、企業や地方自治体で、サーバが流され、データが失われるという事態が発生した。そこで、バックアップの重要性が見直されるとともに、広域同時被災であったことから「遠隔地にミラーサーバを設置する、あるいはクラウド上にデータを保存するといった策」も検討されている。
また金谷氏は「クラウドを利用すること自体が、災害対策になるともいえるだろう」と指摘している。クラウドを担うデータセンターは堅牢なところが多く、冗長化も進んでいることが理由だ。
さらに「クラウドはインターネット上のリソースであり、一般的な専用線やWANとはちがう」ことも大きな強みを持つ。例えば今回の震災においては、首都圏でも固定電話や携帯電話の大規模なマヒ状態が発生した。その際に威力を発揮したのがツイッターだったように、インターネットの強さは実績を伴って証明済みだ。
ただ金谷氏は、「現段階(2011年5月末)では、バックアップ、DR(DisasterRecovery:災害復旧)などに大きな関心が集中しているが、夏が過ぎれば、その熱気も冷めてしまいかねない可能性もある。本業のIT投資も十分でないのにバックアップを優先するのはおかしい、との経営判断も一方ではあるだろう」と考える。そのため「IT市場側でも、関心が高いうちに教育、啓蒙、サービス提供などをしておいた方がいい」と指摘する。
「BCP、DRやセキュリティ関連のサービスは、当事者になってみないとなかなか動かない典型的なソリューションであるため、取り入れなければ大変だ、というような危機感が強くならないと企業内では予算化しないし、内部での理解も得られない傾向がある」(金谷氏)からだ。
中小企業の場合、IT全般について、いくつかの弱点もある。
金谷氏は、人材、リテラシー、さらに投資予算の3つが不足していると指摘したうえで、「中小企業では、ITの専任として、人材を配置する余裕はないところが多く、ITをわかる人がいないため、ITに対し徒手空拳になってしまうことさえある。また、リテラシーが十分でないと、最新鋭の技術を活用したくてもままならないということもありうる」と現状を分析する。だが、こうした現実を補ってくれるのがクラウドというわけだ。
クラウドの大きな利点のひとつは、初期投資額が低く固定費を変動費化することだ。「中小規模の企業では、業容を拡大するところまではいいのだが、それからが大変になる。常に上り調子が継続するとは限らないため、ITへのさまざまな費用が固定化していると、調子が良くないときには、重い負担となる。ここが変動費になれば、使った分だけの支払いですむわけで、負担を軽減できる。」(金谷氏)
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