最終更新時刻:2010年12月18日(土) 8時00分

【第2回】サーバスペックの向上を実現するために〜paperboy&co. 宮下 剛輔〜

安定稼働を重視したシステム構成

―――今回のリニューアルにおけるシステム構成変更のポイントについて教えて下さい

 ポイントは「安定したサービス」「ユーザーメリット」「ペパボエンジニアが楽」の3つです。

 まず1つ目のポイントである「安定したサービス」は、レンタルサーバーで一番の肝とも言える安定性です。今回のリニューアルでは、サーバを機能ごとに分離することにより、負荷や障害を局所化したり、柔軟な対応や拡張ができるようにしています。

 たとえば、今まではひとつのサーバでウェブ機能とメール機能を提供していましたが、新構成ではウェブサーバとメールサーバを分離しています。これにより、ウェブの負荷がメールに影響を与えたり、逆にメールの負荷がウェブに影響を与える、といったことがないようにしています。

 メールサーバはさらに、実際にユーザーのメールがスプールされるPOP/IMAPサーバと、メールを受け付け、アンチスパムやアンチウィルスの処理を行うSMTPサーバを分離しています。これにより、アンチスパム/アンチウィルス処理が重くなることによる、ユーザーのPOP/IMAPアクセスへの悪影響を防ぐことができます。

 また、ウェブのリバースプロキシやPOP/IMAPプロキシも導入しています。リバースプロキシをWAFとして利用することにより、スパムアクセスや不正アクセスをここで防いだり、大量接続やDOSアタックなどを、リバースプロキシやPOP/IMAPプロキシの段階でブロックすることにより、実サーバへの被害を最小限に食い止め、ユーザーのサービス利用に影響が出ないようにすることを狙っています。

 さらに、SMTPサーバ、リバースプロキシ、POP/IMAPプロキシの前段にLVSを用いたロードバランサを配置することにより、これらのサーバを負荷に応じて柔軟に増やすことができるようにしています。SMTPサーバ、リバースプロキシ、POP/IMAPプロキシは、性質上固有のユーザー情報を持たず、データベース(MySQL)でユーザー情報を管理しています。そのため、メールやウェブアクセスがあるたびにデータベースへのアクセスが発生するわけですが、アクセスを最小限におさえるために、memcachedを用いたキャッシュサーバを導入し、一度取得した情報はキャッシュサーバに保存、再取得する際にはデータベースへアクセスせずにキャッシュサーバから取得することにより、データベースへの負荷を軽減しています。

 データをディスクに持つ必要の無いロードバランサ、リバースプロキシ、POP/IMAPプロキシ、キャッシュサーバは、ディスクレスサーバとなっています。サーバで一番壊れやすいパーツであるハードディスクを持たないことにより、耐障害性が向上しますし、固有のデータを持たないため、負荷に応じてサーバの役割を入れ替えることができたり、予備のサーバを共通化することによるコスト削減などのメリットもあります。

 以上のような新構成とすることで、より安定的なサーバ稼働が実現できると考えています。

目に見えないところのメリットを大事にしたい

―――では2つ目の「ユーザーメリット」について詳しく教えていただけますか?

 2つ目のポイントである「ユーザーメリット」についてですが、先述の「安定したサービス」を提供することがそのままユーザーメリットに繋がる、というのが、技術的な視点から見た一番のポイントと考えています。

株式会社paperboy&co.技術責任者 宮下剛輔氏

 それ以外にも、新構成になってロードバランサ配下にSMTPサーバ, POP/IMAPプロキシ、リバースプロキシを置くことでメールやウェブの入り口がひとつになったため、ロリポップ内でサーバ移転する方の負担を軽減できるようになりました。容量や負荷の問題や、さまざまな理由でサーバを移転する必要が出た場合でも、ロリポップ内のサーバ移転であれば、表から見えるドメインやIPアドレスはまったく変わらないため、ユーザーさんは移転後もメーラのPOP/IMAPサーバ設定やSMTPサーバ設定を変更する必要がなくなりましたし、DNSレコード変更による浸透待ち時間もなく、移転の際のダウンタイムを最小限に抑えられます。

 ディスク容量が200MBから1GBに増えることは、ユーザーさんにとって目に見える一番のメリットですが、技術的な面から言うと、そこは主眼ではありません。サーバ構成のリニューアルと、それに伴うサーバスペックの向上によって、結果として多くのディスク容量を提供することができるようになった、というだけのことだったりします。ロリポップというサービスを裏側から支える技術者としては、見えないところ、見えにくいところのメリット、というところも大事にしたいと考えています。

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