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転職を決心する瞬間

転職を決心する瞬間

CNET Japan Ad Special2011年9月22日 11時00分

経済評論家・山崎元が語る-転職原論
~20・30代ビジネスパーソンのための転職成功ガイド~

転職の基本は「猿の枝渡り」


 転職するか・しないか、最後の決断は誰にとっても悩ましい。決断のポイントの前に転職の基本を説明しておくと「次の入社が確実に決まるまで、現在の会社を辞めるアクションを一切起こしてはいけない」ということを肝に銘じて欲しい。

 仕事と生活のリスク管理上当然のことなのだが、この基本が守れない人が少なくない。自分は今勤めている会社を辞めるかも知れないと臭わせたり、実際に我慢しきれずに辞めてしまったりするのだ。前者は全く余計な行動だし、自分に関心を惹こうとしているようで大人として見苦しい。後者は、後のことを考えるといかにも不利だ。

 会社を辞めてしまうと、仕事のキャリアに空白が出来て人材価値が下がる、次の入社の際の給与交渉で無収入状態は不利だし、無業状態が続くと焦りが出て転職活動に悪影響を与える、といった不利がある。

 また、「辞めたい」あるいは「辞めるかも知れない」と一度口にした人は、組織の中で信用を失い、価値が下がる。使う側は、辞めるかも知れない社員に重要な仕事を任せないだろうし、仕事上の重要な情報を伝えるのも躊躇するようになる。

 筆者はよく「転職の基本は猿の枝渡りだ」と説明する。猿は次の枝を握ってから、現在掴んでいる枝から手を離すというのが主な理由だが、ついでに地上に落ちた猿は弱いということも併せてイメージしておこう。

リスクとリターンで判断する

 転職の決断には、必ず何らかの不確実性が伴う。しかし、転職に限らず「現在よりも『絶対に』良くなるのでなければ○○しない」といっていると、人生で重要なことは何も決められない。転職は、大まかでも確率を一緒に考えて、投資の世界でリスクとリターンを考えるように決めなければならない。

 転職先の職場のことが完全に分かることはあり得ないし、転職後の自分の気分にも不確実性がある。しかし、現在の職場についても、将来の会社の盛衰、自分や上司の人事異動など、不確実なことは山ほどあることも考えなければならない。一般に、後者を軽視しがちな傾向があるし、自分が決めたことで後悔したくないという心理が働くので、現状維持に過大なウェイトが掛かりがちになることが多いかも知れない。

 また、逆に、今の職場が嫌だと思っていると、次の職場を過度に美化して、早く転職を決めたいという心理になることもある。現在の自分が、どちらの偏りを持っているのかを考えて、意識的に気持ちをリセットしよう。

 二つの職場をできるだけ公平に較べることが大事だし、完全にはそれが出来なくても、そうしようと努めたことが転職してもしなくても、自分の決定に対する納得の源になる。

 考慮すべき要素は人それぞれだが、一般的には、

(1)その転職がもたらす自分の人材価値への影響はどうか、
(2)二つの仕事はどちらが自分の価値観に合っているか、
(3)働くための組織の環境はどちらがいいか、
(4)経済的にはどちらが勝るか、といった点がポイントだ。

 大雑把な質問で言い換えると、

「仕事のスキルはどっちの会社にいる方がアップするか?」、
「どっちの会社の仕事が誇らしいと思うか?」、
「どっちの会社の方が自分をフェアに評価してくれそうか?」、
「損得を年収換算するとどれくらいか?」、といったところか。

 若い読者に対して、敢えて一点だけに絞るなら、(1)だけを集中的に考えるのがいい場合が多いと言っておこう。自分の仕事のレベルを上げることが出来れば、それを後からお金や時間や自由に換えることが可能だから。

転職の相談相手


 転職は基本的に自分で決めるものだが、自分の頭の整理のためにも相談相手が欲しい場合がある。こうした場合、どうすればいいか。

 理想的な相談相手は「同業他社の優れた先輩」といったところだろうか。

 絶対にやってはいけないのは、自分の会社の同僚や上司に相談することだ。情報が漏れる危険があるからということもあるが、相手が秘密を守ってくれるとしても、相談された側は、友人の秘密を守るべきか、それとも会社の為に友人の状況を然るべき相手に報告すべきかという問いに晒される。人間として、相手を「試す」ようなことはすべきでない。

 妻や夫といった家族も、生活上の利害が絡むし、相談者と距離が近すぎて、あまり適当な相談相手でないことが多い。

 尚、採用の面接をしていて好感触を伝えると、「それでは家に帰って妻(夫)とよく相談して、お返事します」と答えられて脱力することがある。妻や夫の賛否で自分の仕事を決めるという説明はいささか恥ずかしい。

転職の失敗は後からリカバーできる

 今の会社か、転職先か、どちらかの方が「良さそうだ」という暫定的な結論が出ても、踏ん切りが付かないことがある。特に、一回目の転職については、転職自体の経験がないので、「良いだろう」と思っても決めきれない人が時々いる。

 こうした人には、転職の失敗(転職しないことの失敗も含めて)は、後から十分取り返しが利くということを言っておきたい。転職に失敗した場合、人生の中の1、2年の貴重な時間をある意味で無駄にすることは事実だが、その後にまた転職することは十分出来る。

 仕事の内容さえ十分確認して転職していれば、それほど人材価値を落とさずに再び転職が可能な場合が多い。

 人生の時間は貴重だが、チャンスは何度か自分で作ることが出来る場合が多い。

「やる気」と「健康」があれば大丈夫

 実は、若い頃の筆者は、当時、転職が一般的でなかったこともあって、最初の転職にあたっては大いに悩んだ。その時に、自分なりに考えに考えて得た結論は「もし、この転職で失敗しても、健康で働く気さえあれば、元より得ではなくとも、人生は何とかなるのではないか」という大雑把な割り切りだった。

 転職するにしても、しないにしても、自分で決定することを恐れていてはつまらない。

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