キリンホールディングスは8月4日、AI役員「CoreMate」を経営戦略会議に導入すると発表した。過去10年分の議事録データを学習したAIが複数の人格で議論を行い、経営層に多様な視点を提供するという。
CoreMateは、キリンホールディングスの取締役会やグループ経営戦略会議の議事録データに加え、外部の最新情報を読み込んで構築された12人のAI人格で構成される。これらのAI人格同士が経営戦略会議で議論すべき論点や意見を交換し、抽出された数個の論点を実際の経営戦略会議で経営層に提示する。
導入によって期待できる効果は大きく2つあるという。まず生産性向上の面では、会議の起案者が事前にCoreMateと付議内容について議論することで、多様な経営視点を取り込んだ資料作成が可能になる。これにより会議準備の効率化や会議時間の短縮を実現し、経営層や担当者が価値創造活動に専念できる時間を創出する。
価値創造の面では、CoreMateが過去のキリングループの経営知見に加えて外部の最新専門知識を継続的にアップデートすることで、経営会議での議論の質向上と迅速な意思決定を促進する。AI人格を介して客観的かつ多様な意見を即座に取り込めるため、変化の激しい事業環境への対応力強化が期待されるとしている。
同社は「KIRIN Digital Vision2035」に基づくデジタル戦略の一環として、7月以降のキリングループ経営戦略会議でCoreMateを導入する。年間30回以上の会議で活用される見込みで、人とAIの共創により意思決定の質とスピードの向上を図る。
今後は機能拡張も予定している。2025年9月までに起案者の資料壁打ち機能、同年10月までに議論内容の図・表化機能、2026年3月までに会話機能をそれぞれリリースする計画だ。当初はキリンホールディングスのグループ経営戦略会議で運用し、将来的には取締役会やグループ事業会社の経営戦略会議にも順次展開する方針を示している。
キリングループは「人がやらなくてよい仕事をゼロにする」生産性向上と「人と共に価値を生み出す仕事を加速させる」価値創造を両軸としたデジタル活用を目指している。
AI役員はSNSで「想像以上に本格的だった」「人間の役員は性別も年齢も偏っているが、AIはそれがない」「12人分の人格というのはAI円卓会議の仕組みを取り入れている」などと話題になった。
また、LINEヤフー代表取締役会長の川邊健太郎氏はXで「キリンのAI役員導入も、人間の今後重要な能力が『シゴデキから人気者へ』になっていく分かりやすい初期的状況かと思う。リスキリングよりも、人への共感力やコミュニケーション力を高めたい」と私見をつづった。
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