トランプ氏一族がMVNO「トランプモバイル」発表--長続きしないとの見方も

Omar Gallaga (CNET News) 翻訳校正: 編集部2025年06月17日 06時03分

 トランプ・オーガニゼーションが通信事業に参入し、月額47.45ドルのモバイルプランと499ドルのスマートフォンを予約受付中だ──。

  1. トランプ・モバイルとは
  2. 「アメリカ製」を掲げて
  3. 短命に終わるとの見方も

トランプ・モバイルとは

 トランプ・オーガニゼーションは、月額制の通信プランと、黄金色のスマートフォン「T1」(価格499ドル:約7万2000円)を含む携帯電話ビジネスを立ち上げた。

 米国時間6月16日、ドナルド・トランプ・ジュニア氏がサービス名を「トランプ・モバイル」とする新事業を発表。公式サイトによれば、月額47.45ドル(約6800円)で音声通話・SMS・データ通信がすべて無制限、契約期間の縛りなしというプランが用意されており、手持ちの端末と電話番号をそのまま利用できる。

 さらにトランプ・モバイルは、6.8インチAMOLEDディスプレイを搭載し、Android 15で動作する「T1」を予約販売中だ。発売は9月予定。通信網は米大手3社(AT&T、T-Mobile、Verizon)のネットワークを利用するMVNOとなる。

T1の概要 T1の概要
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詳細スペック
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月額料金の「47.45ドル」は、ドナルド・トランプの大統領在任期間に由来する。47は現在の第47代大統領として、45は2017~2021年の第45代時代を表している。

 最近はこうした著名人やブランドを軸にしたモバイル通信サービスが新しい潮流になりつつあるようだ。実際、トランプ・オーガニゼーションが発表したちょうど1週間前にも、人気ポッドキャスト「SmartLess」が同様の試みを開始したばかりだ。このポッドキャストは、俳優ジェイソン・ベイトマン、ウィル・アーネット、ショーン・ヘイズらがホストを務めている。

 こうした動きを受け、米Fast Company誌は「通信業界は新たな『テキーラビジネス』になるのか?」と問いかけている。テキーラ市場にはレブロン・ジェームズ、ジョージ・クルーニー、エヴァ・ロンゴリア、ケンダル・ジェンナー、ドウェイン “ザ・ロック” ジョンソン、そして『ブレイキング・バッド』のスター俳優アーロン・ポールとブライアン・クランストンといった数多くの有名人が参入し、賑わいを見せているからだ。


「アメリカ製」を掲げて

 トランプ・オーガニゼーションは、今回のサービス提供にあたり「米国内に設置したコールセンターでカスタマーサポートを提供する」とアピールしている。さらに同社は、T1スマホを「米国で設計・製造された製品」と説明している。

 ただ、この発表では製造プロセスや部品の調達先についての詳細は明かされていない。現実的なサプライチェーンの状況を考えると、端末に使われる部品の一部は中国をはじめとする国外から調達している可能性が高いだろう。トランプ政権は「アメリカ製」への回帰を強く推進し、アップルに対してもiPhoneの米国内生産を迫っている。

 トランプ・モバイルが提供するのは、単なる音声通話やデータ通信だけではない。Drive Americaが提供する24時間365日のロードサービス、遠隔医療やメンタルヘルス支援サービス、さらには信用調査不要という手軽さに加え、世界100か国への国際電話も無料で提供する。中でも米軍基地が置かれる多くの国が対象となっており、「国外で勇敢に任務にあたる軍人たちとその家族を称え、支えるため」と同社は強調している。


 月曜にニューヨークのトランプ・タワーで行われた発表会にトランプ大統領本人は姿を見せず、息子のエリック・トランプとドナルド・トランプ Jr. が壇上に立って新サービスをPRした。


 トランプ・オーガニゼーションは大統領個人のビジネスを取りまとめる持株会社として知られる。ロイター通信によると、トランプ大統領は多岐にわたるビジネスや取引を通じ、総額6億ドルにのぼる収入を得ていると報告している。同政権は仮想通貨分野にも積極的に取り組んでおり、この新しい通信事業もその一環と言えそうだ。



短命に終わるとの見方も

 トランプ大統領という圧倒的な知名度と、SNSを巧みに使ったプロモーション戦略により、トランプ・モバイルの新サービスが話題になるのは間違いない。ただ、業界関係者から見ると、市場の勢力図を大きく塗り替えるほどの「ゲームチェンジャー」となる可能性は低いようだ。

 「米国の通信市場は年間3000億ドルを超える巨大市場で、決してゼロサムゲームではない。トランプ・モバイルやSmartLessのような新興勢力は、基本的には大手3社の通信インフラを借りるMVNOだ。ブランドの魅力や支持層の忠誠心を武器に一定の市場を獲得することはあるだろうが、それによって大手キャリアや規模の大きなMVNOが築いた経済基盤や優位性を覆すほどの影響力は生まれにくい」


 上記のように分析するのは、米国のMVNO「US Mobile」のCEO、アフマド・カタック氏だ。同社はすでに100万人以上のユーザーを抱え、CNETの通信サービス評価でも高い評価を得ている。

 また、トランプ大統領が通信政策を管轄するFCC(連邦通信委員会)の委員を指名する立場にあることから、「利益相反や規制上の問題になるのではないか」といった懸念についても、カタックは冷静に見ている。

 「FCCはあくまで独立機関だ。大統領が指名するとはいえ、最終的には上院の承認が不可欠であり、さらにFCCはMVNO企業の契約やサービス開始といったビジネス上の決定に直接関与することもない」

 さらに彼は、トランプ・モバイルの登場が、セレブを起用した新たな通信業界の潮流を示しているわけではないと断言する。

 「むしろ、そうした時代はもう終わりを迎えている。Mint Mobileはよく俳優ライアン・レイノルズのブランドとして取り上げられるが、その親会社であるUltra Mobileは、彼が関わるずっと以前から米国最速クラスの成長を遂げていた。通信業界は運営負荷が非常に高く、利益率が薄い厳しいビジネスだ。多くのセレブ主導のMVNOは短命に終わってきた。これは、最近流行しているセレブ主導のテキーラブランドやポッドキャストのように簡単にはいかない」

 カタック氏はそう締めくくり、トランプ・モバイルの船出を冷静に見つめている。

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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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