西日本旅客鉄道(JR西日本)は5月14日、決済サービス「Wesmo!(ウェスモ)」を同月28日より開始すると発表した。 スマートフォンアプリを5月28日以降に提供し、JR西日本グループの商業施設や「e5489」などのネット予約サイト、Smart Codeの加盟店、また「BLUEタグ」の加盟店の合わせて全国160万カ所以上で利用できる。
Wesmo!の残高は、クレジットカードまたは、セブン銀行ATMなど銀行口座からチャージが可能。チャージ手段や決済利用に応じてWESTERポイントで還元が行われる。Wesmo!ではユーザー同士の個人間送金のほか、将来的にWesmo!残高からのICOCAへのチャージ機能を検討している。
Wesmo!は、「WESTERポイント」経済圏を拡大する決済サービスだ。
WESTERポイントとは、JR西日本が提供するポイントプログラムJR西日本グループの関連企業や提携店舗でのショッピング利用でポイントが貯まり、同グループ内で利用可能な旅行券や商品券への交換できる。
スマートフォンユーザーに向けて「WESTERアプリ」と「WESPOアプリ」の2種類のポイントプログラム利用アプリが提供されているが、前者は鉄道や旅行利用がメインのユーザー、後者はルクアなど関連商業施設でのショッピングを主に利用するユーザーを対象としている。いずれもWESTER IDという共通IDでポイントが管理されているため、用途に応じてアプリを使い分けることを想定していると思われる。
同社がWESTERポイントを強力にプッシュしていることは明白だ。2023年3月にサービスが開始された「モバイルICOCA」の利用に際してWESTER IDでのログインを必須としているからだ。JR東日本のモバイルSuicaなどではポイントプログラムへの登録は現状で必須ではないため、この点が大きな特徴といえる。
一方で、WESTERポイントが適用されるのはあくまでJR西日本の営業エリアが中心となるため、全国共通のポイントプログラムと比較してエリア外の利用者へのアピールが弱い。
なお、JR西日本では2025年3月、JR東海の「TOICA」とJR九州の「SUGOCA」の2つの交通系ICカードについて、2027年春以降にも「モバイルICOCA」アプリを活用したスマートフォン向けモバイル定期券の発行サービスを開始すると発表している。モバイルICOCAの利用にはWESTER IDが必須のため、この施策の狙いの1つはWESTERポイントによる経済圏の拡大を狙ったものと考えられる。
JR西日本によれば、2025年2月時点でWESTER会員数は1000万人を突破しており、これら一連の施策を経てさらに会員基盤を強化していくことになる。ただし、JR西日本のエリア外の利用者にとってはポイントを利用する機会が少なく、またポイントが貯めにくいという問題もある。
それを解決するのが今回のWesmo!であり、全国のコンビニエンスストアなどで利用が可能なSmart Codeによる決済のほか、新たにBLUEタグの加盟店網を拡大することでポイントを貯めたり、支払いに充てるなど、利用機会を増やすことが可能になる。
域外からの利用者については「例えばSuica経済圏から関西に訪問する利用者であっても、滞在中の利用でメリットを感じていただけるものを目指す」(JR西日本)と、同様にアピールしている。
同社では、今後5年でのWesmo!のユーザー数獲得目標を300万人としており、取扱高を1兆円と見込んでいる。「キャッシュレス決済全体の1%程度の利用規模を目指す」(同社)としており、キャッシュレス決済事業者の中堅から大手の中間程度のポジションを狙っていることになる。
サービス開始にあたり、JR西日本では各種キャンペーンを展開する。まず「スタートダッシュキャンペーン」の名称で、WESTERポイントが最大200ポイント提供される施策を6月16日から6月30日までの半月間実施する。
WESTERアプリ上でエントリーし、指定の動画を視聴してWesmo!へのチャージを行うことで100ポイントが後日付与され、さらに加盟店で1回あたり500円以上の決済を5回行うことで追加の100ポイントが後日付与される。
このほか、Wesmo!へのチャージが可能なJ-WESTカードの入会キャンペーンも実施されており、入会特典として通常のJ-WESTカードが5000ポイント、ゴールドカードが1万ポイント付与される。J-WESTゴールドカードでWesmo!へのチャージを行い、さらに特定のWESTERポイント加盟店でWESTERアプリまたはWESPOアプリを提示してWesmo!アプリで支払うことで、最大4.5%の還元を受けられる。
このほか、今年7月に大型キャンペーンの実施を予告しており、事前にマイナンバーカードや運転免許証などの身分証明書で本人確認を済ませておくことで、キャンペーンの参加資格を得られ、さらにWesmo!で提供されるすべての機能が利用できるようになる。
JR西日本では今年になり国内の鉄道事業者としては初めて第二種資金移動業者への登録を済ませており、最大100万円までの出金可能な現金残高の取り扱いをユーザーアカウント上で行えるようになった。本人確認を済ませることで、Wesmo!アプリからの出金が可能になり(クレジットカードでチャージした場合を除く)、ATMなどでのキャッシングが行えるようになる。
JR西日本ではWesmo!での決済が可能な加盟店を増やす施策としてBLUEタグの展開を開始しているが、これは決済ターミナルなど専用の端末を設置せずとも中小の小売店がキャッシュレス決済を簡単に導入できる仕組みとしてアピールしている。初期費用や固定費は無料で、加盟店は1.9%の手数料で導入が可能。売上金は各店舗の加盟店アカウントに最短翌日で振り込みが行われるが、ここでの残高は現金としての出金のほか、取引先とのB2B決済にもそのまま利用が可能。
またJR西日本によれば、現在厚生労働省とデジタル給与払い導入に向けた話し合いを始めており、将来的に加盟店が従業員の給与支払いにWesmo!のアカウントを活用することも見込んでいるという。時期は不明なものの、アプリを介したユーザーの行動データ収集や店舗への送客サービスなど、さまざまな可能性を模索しており、JR西日本の営業エリアにとどまらない経済圏の確立を目指す。
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