公取委のGoogle排除命令で、割を食うのは結局日本メーカーのワケ ソニーやシャープのスマホ事業に痛手(石川温)

 公正取引委員会(公取委)は、グーグルに対して、独占禁止法の規定に基づき、排除措置命令を下した。グーグルが独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項「拘束条件付取引」)に違反する行為を行っていたと認定した。

Googleの違反行為についてのサマリー Googleの違反行為についてのサマリー
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 公取委では、グーグルが端末メーカーに対して、スマートフォンに「Google Play」をプリインストールする条件として「Google」アプリや「Chrome」アプリ、さらにウィジェットやアイコンを初期画面に配置する契約を結んでいたと指摘する。また、Chromeの検索をグーグル検索が選択された状態から変更しないことを条件に、端末メーカーに対して、広告収入で得た収益の一部を還元するという契約を締結していたという。

 この契約によって、他の検索エンジンが使われない状態を問題視。検索エンジン間の競争が起きない、不公平な状況だとして、公取委は上記のような契約を結ぶ行為を辞めるように命じたのだった。

今回の排除措置命令の概要 今回の排除措置命令の概要
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 ただ、そもそもの話、Androidを使っているユーザーであれば、検索と言えば、当然、グーグルを真っ先に使いたいのではないか。Androidスマホを使っているが、検索は「やっぱりヤフーじゃなくちゃ」「Bingが最高だよね」という人がどれだけいるというのか。Google Playストアで自由に他の検索アプリをダウンロードできる環境にあるのだから、ここまで公取委が口を出す意味があるのか。

最も影響を受けるのは日本メーカー

 実は今回の排除措置命令によって、最も影響を受けるのはシャープやソニーなどの日本メーカーだということはあまり知られていない。

 公取委が指摘するように、グーグルと端末メーカーの間には契約が存在する。端末メーカーがAndroidやアプリを搭載することで、グーグルが広告事業で得た収入の一部を還元するというものだ。

 これにより、端末メーカーは開発費の負担を抑えてAndroidスマートフォンを作ることができる。結果として、ユーザーは安価なAndroidスマートフォンを購入できるというわけだ。

 今回の公取委の命令によって、この契約が禁止された場合、端末メーカーはグーグルから広告収入の一部を還元してもらえなくなるだけでなく、ChromeやMap、YouTubeなどグーグル製アプリを搭載するために使用料を支払わなくてはならなくなる。

 もちろん、メーカーが一時的に使用料を負担することになるが、このしわ寄せは端末代金として、我々、ユーザーが購入する代金に跳ね返ってくるのだ。

 公取委では、この契約は複数のメーカーと交わされていると指摘している。例えば、サムスン電子やシャオミなど、海外のメーカーであれば、仮に日本でこのような契約が禁止されても痛くもかゆくもない。海外メーカーは日本での販売台数は世界向けに比べれば数が少ない。日本向けの端末販売で、グーグルからの資金提供が受けられなくても、グローバルでは安定した収入が得られるため、影響は軽微なのだ。

 一方、シャープやソニーといった日本メーカーは、一部で海外展開しているものの販売台数としては日本市場向けが圧倒的に多い。公取委がグーグルに対して契約を禁止するように命令すれば、日本メーカーとしては開発費の上昇を招き、端末代の値上げを余儀なくされ、結果として、販売面で海外メーカーのスマホに負けるなんてことも想定される。

なんとか生き残った日本メーカーにトドメ

 公取委によって、将来的には日本メーカーが「スマホ市場から撤退」なんて悪夢もよぎるのだ。

 公取委がやっていることは、まさに日本のユーザーから「日本メーカーのスマホ」という選択肢を奪う可能性がある。日本市場からシャープとソニーがAndroidスマホから撤退すれば、日本のスマホ市場にはアップルとグーグル・Pixel、サムスン・Galaxy、シャオミぐらいしか残らなくなってしまうのではないか。

 公取委は巨人であるグーグルをこらしめて、悦に浸っているのかもしれないが、結果としては日本の産業を衰退させる一方、グーグル、サムスン、シャオミなどの海外企業を潤わせるだけの展開になってしまいかねないのだ。

 かつて、日本の通信産業は総務省の失策によって、数多くのメーカーがスマホ市場からの撤退を余儀なくされた。なんとか生き残っていた日本メーカーの首を公取委が最後に締め付けにかかるとは思いもしなかった。

 日本の産業を守るためにも、再考が必要なのではないだろうか。

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