AIツールの専門知識を持つ人々は、今後20年でAIがポジティブな影響をもたらすと比較的自信を持っているが、同じように考えている米国の成人は少ないことが、Pew Research Centerの調査結果で分かった。
ここ数年、OpenAIの「ChatGPT」などの生成AIツールの急速な普及によって、AIの話題は世間に広く浸透してきた。Pewによると、日常生活におけるAIの利用拡大に対し、どちらかと言えば懸念していると答えた人の割合が、2021年に行われた類似の調査と比べて上昇したという。
AI専門家のうち56%は、今後20年におけるAIの米国への影響がポジティブになると予想している。それに対し、一般の人々で同じように考えているのは17%にとどまり、35%はネガティブな影響を予想している(専門家のうちネガティブな影響を予想するのは15%)。
この差が生まれる大きな理由は、一般の米国人が職場や医療、教育といった生活上の重要な領域で、AIがどのような影響を及ぼすかについて、はるかに楽観的ではないことにある。例えば、専門家の73%がAIによって人々の仕事のやり方が改善すると予想したのに対し、同じように考える米国成人は23%しかいない。
すべてのAIが、2022年頃から注目を集めている生成系AIモデルのように動くわけではない。しかしChatGPTやGoogleの「Gemini」といった大規模言語モデル(LLM)が人気を博したことで、IT企業間の競争や、日常的なアプリやデバイスへのAI機能の普及が進んでいるのは事実だ。消費者の反応はまちまちで、2024年に米CNETが実施した調査によると、スマートフォンユーザーの多くは「Apple Intelligence」のようなAIの統合をそれほど喜んではいないという。
今週公開されたPewの報告書は、2つの調査結果をまとめたものだ。米国成人への調査は2024年8月に実施された「American Trends Panel」で、無作為に選ばれた5410人を対象としている。専門家の意見は2024年8~10月に集められた。対象者は、2023~2024年に開催された21のAI関連カンファレンスのいずれかでプレゼンテーションや論文発表をした、AI関連の仕事または研究に従事する米国在住の1013人。
報告書は「これらの調査は、AIに関する深い意見の相違と共通点の両方を示している。専門家は、仕事を含めたAIの可能性に対して一般の人々よりもはるかにポジティブだ。しかし両者ともに、AIを自分でよりコントロールしたいと考え、政府の監視が緩いことに不安を抱いている」と述べている。
どちらのグループも、今後20年でAIが米国により多くの雇用をもたらすと楽観視してはいない。AI専門家では19%が雇用の増加を予想しているのに対し、39%が減少を予想している。一般の人々はその傾向がさらに大きく、64%が減少を予想しており、増加すると答えたのは5%にすぎない。
どの職種が最も大きなリスクにさらされるかという点では、両者ともレジ係やジャーナリストが脆弱(ぜいじゃく)だと考えている。一方、メンタルヘルスのセラピストについては、AIチャットボットが治療に活用され始めているにもかかわらず、リスクが高いと考える人の割合は大きくなかった。
トラック運転手に関しては、AI専門家の61%が雇用の減少を予想しているのに対し、一般の人々は33%にとどまる。自動運転トラックはChatGPTが世間に広まるはるか前から自動運転業界の夢だったが、今回の調査結果は、一般の人々にはまだその考えが十分に浸透していない可能性を示している。報告書に匿名で引用されたAI専門家の1人は「あと10年、20年でトラック運転手はいなくなるだろう」と強調している。
たとえAIに置き換えられない仕事であっても、人間が行う作業の内容は変わる可能性がある。IBMの最高人事責任者であるNickle LaMoreaux氏は、3月のSouth by Southwestでの講演で、AIによって企業が従業員に求める資質も変わり、批判的思考や人間的な要素がより重視されるようになる」と語った。
世間で話題にはなっているものの、実際に多くの職場でAIツールが大きな役割を果たしているわけではない。Pewが2024年2月に公表した別の調査結果では、仕事でAIを利用している米国人労働者はわずか6分の1で、大半はチャットボットを全く使っていないか、ほとんど使っていないと答えている。
AIの利用拡大に対して懸念と期待とちらが大きいかという問いでは、両グループは対照的な結果を示した。一般の人々は51%が懸念と答えたのに対し、AI専門家は47%が期待と答えた。
専門家が希望を持つ理由としては、反復作業の自動化や医療の改善が挙げられる。「特に医療分野へのポジティブな影響に期待している」という意見があった。
しかし懸念も大きい。誤情報やなりすまし(いわゆるディープフェイク)、個人情報の不正利用などは、一般の人々も専門家も共通して問題視している。雇用喪失に対する不安は、一般の人々のほうが専門家よりもはるかに強いという結果になっている。
Pew Research Centerこの記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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