ベトナム ホーチミン市に近いビンズン省で、日本企業の東急を中心とした街づくりが進んでいる。「東急ガーデンシティ(TOKYU GARDEN CITY)」と名付けられた街にさまざまな日本企業が参画し、大型ショッピングセンター、人気飲食店、高級マンションなどが集積している。
その中で、ブランドとして大きな存在感を放っているのがパナソニックだ。電気、明かり、空気・水といったインフラ関連商材を中心に、さまざまなところでブランドロゴを確認できる。
そもそもパナソニックは、ビンズン省だけでなくベトナム全土において広く親しまれているようだ。例えば、ECM(electrical construction materials:電設資材)に分類される配線器具とブレーカー、はたまたIAQ(Indoor Air Quality:室内空気質関連機器)に分類される天井扇、換気扇、ポンプなどで、ベトナム国内のシェア1位を獲得しているという。
パナソニックがベトナム市場で愛される理由はどこにあるのか――国内外の戦略を担うパナソニック エレクトリックワークス(EW)や、現地関係者などに理由を聞いた。
パソニックグループでは、配線器具などの「電気設備」領域は、パナソニックEWが管轄。パナソニックEW 電材&くらしエネルギー事業部 電設資材ビジネスユニット 戦略企画統括 松本亮氏は、パナソニックグループ全体の年間売上高は約8.5兆円、パナソニックEWは約1兆円であり、「パナソニックEWは年間の比率で見た場合、グループ全体の売り上げで約12%、利益で約17%を占めることになる。全社に対して利益の面で貢献できている」(松本氏)と話す。パナソニックEWはパナソニックグループ内で重要な役割を担っているようだ。
配線器具の事業として見ると、前述のベトナムだけでなく日本でもシェア1位を獲得。世界での販売は100カ国に達し、東南アジア向け事業の中心と位置づけるベトナム、南アジア・中東・東アフリカの中心のインド、欧州・CIS・北アフリカの中心のトルコという、同社が核と設定する3カ国でも1位を獲得しているという。
海外の成長率も、核とする3カ国のGDP成長率の平均より高い。そのほか多くのアジア各国、アジア全体のシェアでも1位を獲得していると説明する。
しかし、松本氏は「フィリピンでは首位から3位に転落するなど、中国勢の脅威にさらされている。安泰とはいえない事業で、大規模設備投資とコスト力、代理店・工事店網のカバー率、SCMオペレーションといった強みなど、それぞれの地域で着実に伸ばせる所を伸ばし、事業を盤石化させたい」とし、今後も事業をより一層推進すると語る。
日本のパナソニックではなく、ベトナムのパナソニックはどんな状況なのだろうか。
実はパナソニックは、日越外交関係樹立に先駆けてベトナムで事業を開始。2021年には事業進出50周年を迎え、現在は統括会社となるパナソニックベトナムのもと、6の事業会社で約6800人が事業に従事するという。
配線器具とブレーカー、天井扇、換気扇、ポンプといったベトナムでシェア1位の商材を取り扱うパナソニック エレクトリックワークス ベトナム(PEWVN)など、6社それぞれが各商材ごとに開発や製造、販売を手がけている状況だ。
配線器具という商材単体で見た場合も、ベトナムでの販売開始は1994年と、30年以上前までさかのぼる。現地法人としては2013年にPEWVNの前身となるパナソニック エコソリューションズ ベトナムを設立し、その翌年には新工場の稼働が開始。着実に生産基盤を拡大してきたという。
PEWVNでは現在、本社機能を持つ大規模工場と2014年創業の小規模拠点が連携し、ブレーカーやスイッチ、コンセントといった高品質な配線器具を生産。現地だけでなく世界市場への輸出も見据えた体制を確立しているという。いずれもビンズン省にあり、就労環境の創出という意味で寄与している点も特徴だ。
PEWVNでGeneral Directorを務める坂部正司氏は、「日本の人口が1億人を超えたのは、経済成長が盛んになった1970年代。ベトナムも人口が約1億人を超え、ちょうど成長期にさしかかっている。若手が多いことに加えて手先が器用、向上心がある、勤勉で真面目といった国民性があり、アジア主要国と比較して平均賃金が30~40%低い。ASEAN諸国で随一の地理的優位性もあり、製造業・輸出業向きで、今後の成長も期待できる魅力的な場所」と話す。2024年には422KWのソーラーパネルや最新の自動化設備を導入した第二生産棟(新棟)の増築が完了し、事業をさらに推進すると意気込む。
パナソニックの現地における大きな原動力として欠かせない存在が、ともに歩み始めて30年来という現地パートナーのNanoco(ナノコ)グループだ。
ベトナム全土に21の営業所を保有し、人口の97%をカバー。物件などに継続的に投資しており、今後は約2時間以内に製品を供給できる体制を構築する予定だという。
Nanocoグループ CEOを務めるルーン・リュク・ヴァン氏は、パナソニック製品について「従来のベトナムではプレミアムブランドとして認識されていたが、昨今はさまざまな価格帯の製品が展開されている。ベトナム人の所得水準も上昇しつつあるが、パナソニック製品を持っていると自慢できることに変化はない」と話す。
実際に市街に出ると、さまざまな電気店でパナソニックブランドを発見できる。その中の1つ「Nguyen giang」では、パナソニックの全商材の年間販売上は約200億VND(約1億1000万円)と、ベトナムで受け入れられていることがよくわかる。
ヴァン氏は一方で、中国企業の参入が新たな課題になりつつあることも加える。中でも中国企業は、市場の変化への素早い対応、消費者ニーズに合わせた強力な製品のカスタマイズ力などの特徴があるという。
「中国企業の強みはスピードと柔軟性にある。しかし、われわれもベトナム全土に2時間以内にアクセスできる。パナソニックが対応できるようフィードバックを早めるなど、今後も協力していきたい。お互いが協力して迅速性を確保すれば、負けずに発展できる」(ヴァン氏)とし、今後も両社のパートナーシップを深めたいと話した。
取材協力:パナソニック エレクトリックワークス
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