日産自動車は3月10日、ドライバーレス自動運転実験車を活用したモビリティサービスを公開した。
独自開発した自動運転実験車で、横浜市みなとみらい地区の公道を走行する。都市部の混在走行下で運転席が無人状態のドライバーレス運行は日本で初の事例になるという。
今回の実証は、自動運転実験車で日産のグローバル本社を出発、横浜赤レンガ倉庫まで行って戻るというもの。
スマートフォンでルートを選択、予約し、乗降地で車両にQRコードをかざすことで乗車できる。自動音声によるアナウンスでシートベルトを装着すると、ショッピングエリア「ワールドポーターズ」周辺を走行する約4km20分の自動走行を開始する。
実験車両は、「セレナ」をベースに独自開発。従来の実験車両「リーフ」から大幅に性能を向上させたカメラ、レーダー、ライダーを搭載し、セレナ特有の車高を生かしてセンサーの検出エリアを拡大。AIによる周辺環境の認識、制御機能も強化し、よりスムーズかつ安全な走行ができるとしている。
今回の実証は、特定の条件下で人が介入せずに自動運転を可能にする“レベル4”ではなく、遠隔地の運転者席で必要な監視、運転操作を行う“レベル2”に該当する。
運転席を無人化する代わりに「遠隔監視操作室」「遠隔監視室」を別途設置し、遠隔監視操作者がシステムをモニタリング、必要に応じて操作する。遠隔監視操作者は運転者という位置づけのため、運転免許も携帯する。
また、実際の運行車両の助手席には保安要員も同乗する。万が一の場合は非常停止ボタンで停止、自動運転から人の運転へ切り替えるという構成だ。
日産は、無人運転サービス「Easy Ride」など、2017年度から自動運転のモビリティサービスに向けて実証を実施。国内の道路交通ルールの下でも問題なくドライバーレス走行を行うべく、走行環境やシステムの安全などを設計、検証している。今回の実証に向けても国土交通省や警察庁とも協議を重ね、遠隔型自動運転システムに基づく道路使用許可を取得したとしている。
成果を踏まえ、2025年度下期から2026年度にかけて、横浜市内で約20台を運用するサービス実証実験を実施する予定。その際はいくつかの走行ルートを選択できるよう準備しているという。また、2027年度には遠隔監視設備を備えた自動運転レベル4のモビリティサービスを開始する計画だ。
なお、報道陣向けに公開された試乗では、保安要員が非常停止ボタンを押して有人運転に切り替える場面もあった。左ウインカーを出していざレーンチェンジを試みたタイミングで左後方の車両も加速したという状況で、約70周試走したうち2回目の非常停止だったという。
日産はその後の検証で、非常停止した2回ともに自動運転を継続しても立て直せた可能性もあるとしつつ、「ぶつかる可能性もゼロではなく、そういった際は保安要員が緊急停止ボタンを押すよう訓練している」としている。
日産自動車 総合研究所 モビリティ&AI研究所 エキスパートリーダーの木村健氏は、今回の実証について「まず、普通の交通に混じって公道で走りぬことができるかを明かにする。将来的には本当のレベル4に変えたい」と話した。
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