日本触媒とNTTコミュニケーションズは2月18日、これまで困難とされてきた「状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転」に成功したと発表した。熟練運転員の操作を学習したAIを活用することで、運転員の負荷軽減と技能継承プロセスの効率化が見込まれる。
化学品を製造するプラントの運転には、豊富な知識と経験が必要とされる。特に、温度、圧力、濃度など状態が絶えず変化する工程では、自動運転が困難とされる。
今回の実験では、化学品の純度を高めるための連続蒸留工程の自動運転を実施した。同工程では、流入する反応液の組成が、流出する留出液の再利用量や組成によって変化する。さらに天候などの外部影響も受けるため、熟練の運転員が高い集中力をもって常時手動で操作する必要があった。
両社は、連続蒸留工程の運転データと運転員の操作履歴、運転員が蓄積してきた運転ノウハウを学習させたAIモデルを構築。このAIモデルをNTT Comの「AI Autopilot System」に組み込むことで、状態が複雑に変化する連続蒸留工程の自動運転に成功した。
具体的には、熟練運転員による手動操作時と比較すると13.5%の改善となり、手動操作と同等以上の運転品質を実現できることが確認できたという。
日本触媒は、今回の取り組みを工場内の他のプラントへ水平展開することで、運転員の負荷軽減と技能継承プロセスの最適化を通してDXによる変革を引き続き推進していく方針だ。
一方、NTT Comは、バッチプラント(一定量ごとに製品を製造する方式のプラント)や少量多品種生産を行うプラントなど、手動操作が残っているプラントの自動運転の実現に向けてシステムの機能拡張を進める。さらに、この技術を化学工場のみならず幅広い産業分野にも展開し、人手不足などの課題解決に向けた取り組みを進めていく。
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