Elon Musk氏と投資家グループが、OpenAIを管理する非営利団体に一方的な買収提案をもちかけたことに対し、OpenAIの最高経営責任者(CEO)Sam Altman氏が反発している。Musk氏のAI企業であるxAIと複数の投資会社による974億ドル(約15兆円)の買収提案は、2015年に共同設立したOpenAIをめぐるMusk氏とAltman氏の確執を深めるものとなった。
The Wall Street Journal(WSJ)がいち早く報じた買収提案は、Altman氏がOpenAIを営利企業に移行させる計画を進めている中でなされた。OpenAIは最近、ソフトバンクグループとともに、今後4年間でOpenAIの新しいAIインフラに最大5000億ドル(約77兆円)を投じる「Stargate Project」も発表した。
Altman氏とMusk氏はすでに法廷で争っている。Musk氏はAltman氏が、人類に利益をもたらすAIを開発するという非営利団体の使命から逸脱したと主張し、OpenAIは一時はMusk氏自身がOpenAIを営利企業に変えたいと思っていたと反論した。OpenAIは、人類に利益をもたらすという使命を支えるためには営利部門が必要だと主張している。
WSJによると、Musk氏は「OpenAIはかつてのような、オープンソースで安全性に重点を置いた善の力に立ち返る時が来た」として、「われわれはそれを実現する」と語ったという。
買収提案に対する「X」での返答で、Altman氏はMusk氏のソーシャルメディア企業X(旧Twitter)を引き合いに出し、「いや結構だ。でもお望みならTwitterを97億4000万ドルで買おうか」と述べ、Musk氏の買収額を一桁減らした金額を提示した。Altman氏はOpenAIの従業員に対し、Musk氏の買収提案は「われわれが大きな進歩を遂げているため、弱体化させようとする」動きだと語ったと、WSJは報じている。
no thank you but we will buy twitter for .74 billion if you want
— Sam Altman (@sama) February 10, 2025
OpenAIは非営利団体として発足したが、Musk氏が数年後に退社し、Altman氏がCEOに就任した後、Microsoftなどから資金を調達し、営利部門として運営されるようになった。Altman氏は現在、これを一般的な企業に移行し、より収益性を高めることを目指しているが、その評価額がどうなるか、また消費者への影響については疑問が残る。
「OpenAIにとって営利企業への転換がどのようなものになるかはすでに明らかだ」と、市場調査会社ABI Researchのアナリスト、Paul Schell氏は米CNETに語った。「同社は、最先端のモデルを開発する真の意図が何であれ、現在市場で事業を展開しているAI企業の中でとりわけ商業的に成熟した企業の1つだ。言い換えれば、現在の事業が『慈善』または利益以外の何かを追求するものであっても、営利企業への移行はそれほど大きな変化には見えないだろう」
しかし、これが消費者へ直接的にどのような影響を与えるかは不明だ。料金に影響する可能性もあるが、「将来の価格を予想するのは非常に難しい」とSchell氏は述べた。
「ハードウェアまたはソフトウェアの革新によってコストが大幅に減少し、革新的企業がそれを利用して市場シェアを伸ばせば、他社も追随せざるを得なくなる」とSchell氏は述べた。「同様に、モデルが変革的になり、人々のワークフローや生活により深く組み込まれれば、人々はアクセスためにより多くを支払うことを厭わないだろう」
Schell氏はMusk氏について、OpenAIの買収で何を達成しようとしているのかは不明だとしている。
「仮に同氏が資金を持っていたとしても、OpenAIははるかに高い評価額を目指しており、Altman氏とMusk氏の間には深い溝があるため、取締役会はこのような動きに同意しないだろう」とSchell氏は述べた。
Altman氏は2月11日、Bloomberg TVのインタビューで、Musk氏の入札は「われわれの動きを鈍らせる」ための、より大きな取り組みの一部だと確信していると語った。Musk氏のxAIはOpenAIと直接競合しており、Musk氏はOpenAIの「ChatGPT」サービスに対抗する製品の開発に多くの時間と労力を費やしている。
「OpenAIは売り物ではない。OpenAIの使命は売り物ではない。Elonは長きにわたり、あらゆる手を試している。これは今週のエピソードというわけだ」と、Altman氏はインタビューで語った。
「彼には、より良い製品を作って競争してほしい」「しかし、多くの戦術、多くの訴訟、そしてあらゆる狂気じみたことがあり、そして今回はこれだ。われわれはひたすら努力し、働き続けるだけだ」(Altman氏)。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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