初代「Powerbeats Pro」の発売から約6年を経て、アップル傘下のBeatsは新モデル「Powerbeats Pro 2」を発表した。2月12日より予約受付を開始し、2月13日に発売する。
Powerbeats Pro 2は、人間工学に基づきデザインを刷新。新ドライバーやAppleのH2チップ、内蔵型心拍センサー、シリーズ初のアクティブノイズキャンセリング(ANC)を搭載。カラーは4種類で、価格は「AirPods Pro 2」と同じ3万9800円だ。
今回のPowerbeats Pro(第2世代)では、従来比でイヤーフックを50%小型化。柔軟な形状記憶合金であるニッケルチタンの採用によって、フレキシブル性と耐久性も向上した。イヤホン本体も前モデルより20%軽量化された。
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装着感も間違いなく向上し、形状が特殊な筆者の耳でも初代よりはフィットした。それでも、Beatsの付属イヤーチップ(XLサイズまで用意)では耳の密閉感が十分ではなかった。そのため、SennheiserやBowers & Wilkinsのイヤーチップを装着してテストしたところ、音質とノイズキャンセリング性能が大きく向上した。
大多数のユーザーは問題なくフィットすると思われるが、筆者のようにチップの形状が合わない場合もある点は留意したい。
Beatsのイヤホンは物理ボタンを搭載している点も人気だが、今回も「b」ボタンによる再生コントロールと音量調整ボタンを備える。ランニングやサイクリングなどアクティブなシーンでは、物理ボタンのほうが操作しやすい。また、耳掛け式デザインでイヤホンが外れる心配も低く、IPX4防滴に準拠し激しい運動や大量の汗にも対応している。
ケースは依然として大きいが、33%の小型化が図られた上に、ワイヤレス充電(Qi規格)にも初めて対応した。
バッテリー駆動時間は前モデルの9時間からわずかに延び、ノイズキャンセリングをオフにした場合で最大10時間、ANCオンでも最大8時間を確保。ケースでの追加充電を含めると合計で最大40時間近い使用が可能だ(ANCオンでは約36時間)。これはAirPods Pro 2に比べて倍近い駆動時間となる。
Powerbeats Pro 2は、AirPods Pro 2と同じApple製H2チップ(Bluetooth 5.3)を搭載。また、耳を検出するセンサーに加えて、左右それぞれに超小型の心拍センサーを内蔵している。
Powerbeats Pro 2の心拍センサーは、胸に巻くタイプの心拍ベルトの代替を狙っているが、Apple Watchの心拍センサーの代わりにはならない。Apple Watchを装着しながらPowerbeats Pro 2を使う場合、心拍数はApple Watch側の結果が優先される。
本稿ではイヤホンの心拍計測機能を詳細に検証する予定はないが、Nike Run Clubアプリで試したところ、正常に作動しており、バッテリー消費への影響もほとんど感じられなかった。計測された心拍データはAppleのヘルスケアアプリにアーカイブされた。
心拍測定は現時点で、BeatsはOpen、Peloton、Runna、Nike Run Club、Slopes Ladder、YaoYaoなどのフィットネスアプリとの連携を表明している。
Powerbeats Pro 2もAndroid端末で問題なく動作し、BeatsのAndroidアプリと連携できる。ただし、Apple向けの独自機能も多い。たとえば、ヘッドトラッキング付きのパーソナライズド・スペーシャルオーディオ、ハンズフリーSiri、オーディオ共有、iCloud経由のペアリングなどが含まれる。
ただし、紛失時の追跡機能は基本的な「Find My」のみで、AirPods Pro 2のような「探す」は利用できない。AirPods Pro 2はケースにもスピーカーがあり、紛失時に音を鳴らせるが、Powerbeats Pro 2にはそうした機能はない。
また、AirPods Pro 2にある最新機能の一部は搭載されていない。「補聴器モード」や、会話時に自動で音楽の音量を下げる「Conversation Awareness」、周囲の環境に応じてノイズキャンセリングを調整する「Adaptive Audio」などだ。個人的にはConversation Awarenessの利便性が高いと感じているため、今後のアップデートで追加されることを期待したい。
前述のとおり、Powerbeats Pro 2と AirPods Pro 2は根本的にはよく似ている。では音質とノイズキャンセリングはどうだろうか。少なくとも私の耳では、Powerbeats Pro 2のほうが実際に良い音に感じるし、ノイズキャンセリングと外部音取り込みモードも AirPods Pro 2にかなり近い印象だ。外部音取り込みモードはとても自然に聞こえる。
また、私の場合、AirPods Pro 2のほうが若干フィット感が良く、結果的にノイズキャンセリングは AirPods Pro 2のほうがわずかに優れているように思う。なお、Bose や Sony のフラッグシップイヤホンが持つノイズキャンセリング性能には一歩及ばないかもしれないが、ほぼ同じレベルにあり、Appleのノイズキャンセリングは非常に優秀だと言える。
さらに、Powerbeats Pro 2には新しいドライバーと新しい通気システム、アンプを搭載している。AirPods Pro と比べるとサウンドがより力強くクリアに感じられ、全体的なセパレーションも良くなっているように思う。Beatsの製品らしく、パワフルな低音再生性能がありつつも、しっかりと定義されていて、低音が高音や中音を圧倒しすぎることのないバランスの良さを持っており、トーン全体に深みを与えている。
Powerbeats Pro 2の通話性能はどの程度向上したのか。BeatsはH2チップの搭載やマイクの刷新、音声加速度センサーの導入により、騒がしい環境でも声を明瞭に届けられるよう改良された。
ニューヨークの街中でテストしたところ、交通騒音や風の影響がある中でも、通話相手からは「声がはっきり聞こえる」と評価された。一般的なイヤホンでは同様の環境下で声が途切れることが多いが、3回のテスト通話では雑音がほとんど気にならず、クリアな音声が維持されていた。
ノイズ低減機能は効果的で、若干ロボットのような質感はあるものの、実用性は高い。詳細な通話サンプルは動画レビューでも確認できる。
Powerbeats Pro 2は、初代からあらゆる面で改良が加えられており、スポーツシーンだけでなく日常用イヤホンとしても十分に活躍する。
AirPods Pro 2と機能面の差はあるものの、音質の向上や安定した装着感を重視するユーザーにとっては魅力的な選択肢だ。
一方、Appleは今年秋にも「AirPods Pro 3」を投入するとみられている。市場により多くの選択肢が増えることで、Apple系のイヤホン選びは今後いっそう多様化していくだろう。
現在、耳掛け式のワイヤレスイヤホンは増えているが、「Shokz OpenFit 2」などオープン型が中心で、カナル型イヤーチップとANCを備えたモデルは少数派だ。オープン型は耳への負担が少ない半面、ノイズキャンセリング性能などに限界がある。一方、Powerbeats Pro 2は優れたサウンドと強力なANCを兼ね備えており、耳掛け式を望む人には、現時点で最有力の選択肢と言える。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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