Pixarは作品の冒頭に流れるアニメーションで、かわいらしい電気スタンド「ルクソーJr.」が「PIXAR」のIに飛び乗るという演出によって、長年観客を魅了してきた。ルクソーJr.はデジタルキャラクターだが、Appleの研究チームは、ルクソーJr.が(人工の)生命を得たかのような実物のロボットを開発した。
Appleのロボット工学の科学者とエンジニアらは、1月に同社の「Machine Learning Research」サイトで紹介した論文で、人間とコンピューターの相互作用というテーマのプロジェクトについて詳述している。サイトには研究の概要のほか、ロボット電気スタンドの動画も掲載している。
このプロトタイプのロボットは、さまざまな動作を見せる。いたずら好きな猫のように積み木を倒したり、本が動くのに合わせてついていき、常にページに光が当たるようにしたり、手を振って方向を指示する人に対して反応したりする。冷たく計算高いロボットというよりも、かわいらしくお手伝いをしてくれるペットのような動きだ。
この論文は「ELEGNT: Expressive and Functional Movement Design for Non-anthropomorphic Robot(非人間型ロボットのための表情豊かで機能的な動きのデザイン)」と題され、arXivで閲覧できる。この一般公開されている研究アーカイブでは、査読や学術誌への掲載前の研究を掲載している。この論文では、人間以外のロボットを魅力的かつ実用的なものにするための枠組みを説明している。
研究者は、6つの異なる状況を設定し、純粋に機能的な動作をするロボットと、スクリーンに登場するルクソーJr.のような表現力豊かな動作をするロボットに対するユーザーの反応を比較した。その違いは顕著だった。写真撮影のために被写体を照らすタスクでは、機能的なロボットはほとんど動かず、ユーザーの指示に直接反応して動くだけだった。表現力豊かなロボットはランプシェードを揺らし、対応しながらユーザーを「見ている」ように見える。
別のタスクでは、ロボットが「今日の天気はどう?」という質問に答える。表現力豊かなロボットは、まるで状況を確認するかのように窓の外を見ながら答える。その動きや反応は、人間や動物の顔がないにもかかわらず、感情を感じさせる。愛嬌があり、一方で機能的なロボットはストイックな道具のように見える。
ロボットがタスクをこなす動画を21人の参加者が視聴し、動画内のロボットと人物のやりとりに対する印象を評価した。論文では、「表情を伴う動きはユーザーのエンゲージメントと、ロボットの質に関する認識を大幅に高める」ことが分かった。特に、エンターテイメントや会話に関連するソーシャルなタスクでは、肯定的な印象が強かった。
このプロトタイプの電気スタンドという形状は、意図的に選ばれたものだ。研究者らは、今ではアイコンとなっているあの電気スタンドが、大きな電気スタンドが見守る中でボール遊びをするという、1986年のPixarの短編映画「ルクソーJr.」に敬意を表した。
「家電製品のように見えるが、ランプの頭部や、頭部とスタンドをつなぐアームなど、人間のような要素が微妙に組み込まれており、頭と首がある姿を想起させる」と研究者らは記している。
Appleはスマートフォンやコンピューター、アプリで知られているが、家庭用ロボット分野への参入を狙っていると、2024年にBloombergが報じた。AIに多額を投じ、OSに「Apple Intelligence」を導入している同社にとって、これは自然な動きといえる。家庭用ロボットは、AIや機械学習の分野で同社が培ってきた技術を活用しながら、ハードウェア販売の新たな道を開く可能性がある。
Appleは、電気スタンド型ロボットに関するコメントの依頼にすぐには応じなかった。
今回の論文からは、Appleが家庭用ロボット分野で進むであろう方向性を垣間見ることができる。このロボット電気スタンドは、単なる金属とプラスチックの塊ではない。機械というよりも、仲間のような存在だ。
Machine Learning Research(Apple)この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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