毎年1月にアメリカ・ラスベガスで行われる世界最大級の展示会「CES」。かつては「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」の略称で「家電見本市」という位置づけであったが、ここ数年はそうした略称ではなく、単に「CES」というアルファベット3文字だけのイベント名となっている。主催者は家電ではなく「テクノロジー見本市」を明確に打ち出している。
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実際、出展しているソニーも、プレスカンファレンスでは家電製品を一切、紹介しなくなった。今回、ソニーのプレスカンファレンスで最も目立っていたのは、2025年に世界で劇場公開される『劇場版「鬼滅の刃無限城編』だった。鬼滅の刃はソニー・ミュージックエンタテインメント傘下のアニプレックスが手がけており、またソニーはアニメのストリーミングサービスである「Crunchyroll(クランチロール)」を所有し、アメリカやイギリスなどに配信を行っている。
ソニーと言えば「PS5」が有名だが、ゲームのアセットをアニメーションやミュージックビデオに展開するといった取り組みを行っている。
さらに、ゲームの世界観を、映像や音響、触覚など最新の技術を用いて再現し、まるで没入感のあるテーマパークのアトラクションのように、ユーザーに体験してもらう施設なども作っていたりする。
もともと、映画会社のソニーピクチャーズでは、「グランツーリスモ」など、ゲームタイトルを映画にしてしまうなど、最近のソニーグループは「映画」「音楽」「ゲーム」「アニメ」などを横展開を拡大することで収益を最大限化するのが本当にうまい。
ゲームを映画化したり、映画をゲーム化したり、映画の世界観をリアルな施設で再現するといった取り組みは、コンテンツと技術の両方を持つソニーだからできる技といえるだろう。
また、ソニーでは今回、空間コンテンツ制作支援を行う「XYN」というソリューションを発表している。人の動きや物体を捉え、3Dコンテンツとして制作や確認をしやすい環境を一気通貫で提供するというものだ。
実は、スマートフォンとBluetoothで接続されたセンサーを身体につけて、人の動きを手軽にキャプチャできる「mocopi」という製品、昨年のCESで参考出展されていた「XRヘッドマウントディスプレイ」、ミラーレス一眼カメラで撮影した画像と独自アルゴリズムを用いて高品質な「3DCGを作るソリューション」といったように、これまで別々に開発や製品化されていた3つのプロダクトをまとめて「XYN」という形で見せているのだ。
ヘッドマウントディスプレイは、Apple Vision Proなど競合製品も多く、なかなかソニーとしての差別化が伝わりにくいジャンルの商品といえる。
そこで、バラバラであったXRコンテンツ制作の製品やソリューションを「XYN」としてブランド化し、まとめて見せることにしたのだ。
もはや、単体の製品で他社と戦っていては、他の国のメーカーに真似され、価格競争に巻き込まれてしまいかねない。そんななか、XR向けコンテンツを作りたいクリエイターに向けたソリューションとして、複数の製品をまとめることで、ソニーは他社にはない付加価値を提供していくというわけだ。
ソニーがソリューションを提供して成功しているのがアメリカのプロアメリカンフットボールリーグであるNFLとの関係だ。
NFLとはテクノロジーパートナーという関係を組んでおり、ラスベガス・レイダースの本拠地であるAllegiant Stadiumではソニーのカメラで中継映像が撮影されているだけでなく、複数のカメラで撮影した映像からボールの軌道をコンピューターグラフィックで瞬時に再現する「ホークアイ」も導入されている。
またソニーはNFLのオフィシャルヘッドフォンパートナーでもあり、今回、アメリカのキャリアであるベライゾンの5G回線を用いたヘッドフォンも新たに開発しているという。
ソニーといえば家電メーカーでスマホやデジカメ、ゲームを作っていたり、それ以外でも銀行や生命保険、損保というイメージが強いが、世界に向けては「テクノロジーによって、クリエイターが作りたいものを作れる環境を提供する会社」になっているのだ。
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