ソーイは、「全てを使い切り、エネルギーを無駄にせず、ゴミを作らない」をテーマに、発酵食品である“麹”と食品廃棄物を活用したアップサイクル製品を手がけている企業だ。
ソーイ 代表取締役社長の石垣哲治氏は麹について、「国菌(こっきん)」に認定される国を代表する菌であり、現代では「KOJI」としても海外で通じるようになってきたと説明する。発酵と聞くと“ぶくぶくぶく”というイメージがあるかもしれない。実は泡のイメージを持つ乳酸菌や酵母を活用した「微生物発酵」は、原料となる糖を変換させて乳酸やアルコールをつくるもの。発酵の過程においてCO2が発生する。
一方の「麹発酵」は、デンプンやタンパク質といった大きな分子を分解させ、糖やアミノ酸の小さな分子にする。ハサミでチョキチョキと切るようなイメージであり、CO2の発生はごく微量だという。
ソーイにおける発酵の考え方は“美味しいものにしてゴミもゼロにする”こと。たとえば、生の大豆を食すると美味しくないだけではなく、お腹を下す危険性もあるが、発酵によって味噌や醤油のように美味しいものができる。加えて、豆腐にした場合はおからが発生するが、麹を使って発酵させることでおいしい味噌・醤油ができ、ゴミもゼロにする力を持つ。
ソーイのビジョンは“食材をまるごと使い切る”。美味しくない、食べにくいとして残りカスとして捨てられていたものを、発酵の力を使って美味しい食品や有益な材料に変換する。そしてすべてを使い切り、エネルギーを無駄にせずゴミを作らない「完全循環型経済」の実現を目指すとしている。
マグロのトロを例に“食材と廃材”についても触れた。かつて江戸時代は、脂っこい食べ物が好まなかったとされ、マグロにおける脂ののったトロは捨てるものだったという。しかし、現代では人気の高い高級食材だ。
アジの食べ方についても触れ、アジはマグロのエサとされており、マグロはサイズを問わずまるごと食べる。人間は、豆アジであれば同様にまるごと食べるが、大きなサイズの場合には身だけを食べ、それ以外の部分は廃材と分けており、サイズによる意識差があることを指摘する。
食べられる・食べられない、食べやすい・食べにくいと分けているのは人の心(=意識)であり、それが食材と廃材を分けている要因と指摘した。
ソーイが提唱する「UP 0 TECH(アップ ゼロ テック:商標登録済)」は、人間の心が分けてしまっている廃材を美味しい食べ物にするという考え方のもと、実際に美味しい食べ物にしたり、食べられないものもコスメや肥料などにしたりするなど、食材資源をすべて活用し、地球上での循環がまわっていくようにする循環型社会形成を目指す。
一般的に食品廃材を再利用すると、乾燥過程でCO2が発生するだけではなく、非有用部分がゴミとして残ることが多い。さらにアップサイクル製品が、利用後にゴミとして破棄され焼却処分されることにより、CO2が発生してしまう実情がある。
ソーイの取り組みは、食品廃材を加水させて独自の発酵技術を活用し、原材料として使い切る形にする。アップサイクルさせながらもゴミを発生させないことに革新性があると語る。
食品業者として目指すのは、循環経済と呼ばれるサーキュラーエコノミーだ。縦型経済と呼ばれるリニアエコノミーから再設計することを提唱している。
UP 0 TECHの例として、コーヒー残滓(※残ったかす)の活用を挙げた。ウェットな状態にある残滓を、そのまま加工処理してペースト化。“コーヒーかすは美味しくない”というイメージだが、ペースト化することによって、心理的なハードルを下げる。工程においては、食品衛生と物流の関係上、殺菌のため熱を加える必要があるものの、殺菌まではCO2は発生させずに進められるという。なお、残滓の受け取りから発酵ペースト化して提供するまで3日以内でできるとしている。
これを新たなコーヒーとして飲み物にしたり、お菓子に活用したりできる。実際に、ある外資系IT企業内のカフェテリアから出るコーヒー残滓をキャラメルラテや焼き菓子などに転換。シグニチャ―ドリンクとして、月間約3000杯が飲まれているほど好評だという。UP 0 TECHを活用したサステナブル原料は、ビールのあとに出てくるモルト滓、チョコレートを作る際に出てくるカカオハスクなどもあり、広がりをみせていることも付け加えた。
こうした取り組みのきっかけは、醸造家として“もったいない”思いが精神的なコンセプトとしてある。
現状においては設備の関係上、植物性のものを扱っているが、動物性も扱えるようになれば、たんぱく質不足も十分に補っていけるのではないかと展望を語る。また、一般的なキッチンカーぐらいの車に設備を入れることも可能としており、中小企業や個人経営といったところでも活用できるように、静岡県から車両等のサポートがあるとありがたいという要望を寄せた。
静岡県の発展に向けて、県内企業同士での結びつきや出会い、そして販路拡大だけではなく、川上の部分から出口までの全体のサポートを求めた。これに対して静岡県側としても、一次産品の余剰などの確保にあたっては、表に出ていない部分なので把握できていないところがあり、全体にわたっての整備や手当が必要になってくると説明した。
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