「REDMAGIC 10 Pro」は、ハイエンドのハードウェアを搭載した649ドル(約9万8000円)のゲーミングスマホで、ユーザー体験に関しては素晴らしい価値を提供してくれる。少なくとも、公式のスペック上では。
「Dead Cells」をプレイしたとき、筆者は本機のゲームプレイモードを使用してフレームレートの上限を解除し、より高解像度のグラフィックスに切り替えたが、それでも90fpsで安定してプレイできた。「Mortal Kombat Mobile」も、ディスプレイがサポートする最大フレームレートである144fpsですぐにプレイできた。「グランド・セフト・オート・サンアンドレアス」は古いタイトルだが、「Android」版は、応答性に優れた960Hzのタッチサンプリングレートなどのおかげで操作しやすい。とはいえ、コントローラーを使用することをお薦めする。先述したDead Cellsなどのゲームは鮮やかで滑らかだが、REDMAGIC 10 Proを数日間テストしたところ、それ以外の点では、スマートフォンとしての完成度に大きなばらつきがあることが分かった。
REDMAGIC 10 Proの強力なスペックの1つが、「Snapdragon 8 Elite」プロセッサーだ。筆者はASUSの「ROG Phone 9 Pro」で、初めてこの高速プロセッサーをテストした。REDMAGIC 10 Proは100Wの有線急速充電に対応しており、これで巨大な7050mAhバッテリーを充電することができる。どちらも、米国で販売されているスマートフォンではめったに見られない。このバッテリーと充電速度をテストするのが今から楽しみである。
10 Proは、「REDMAGIC 8」シリーズのデザインをベースとしている。本体前面のアンダーディスプレイカメラも、その1つだ。ノッチのない6.85インチディスプレイでゲームや動画を楽しむことができる。ディスプレイは、144Hzのリフレッシュレートをサポートしており、これは筆者がこれまでゲーミングスマホで見たなかで一番高いリフレッシュレートではないものの、アニメーションを滑らかに表示したり、スクロールをスムーズに行ったりするには十分すぎるはずだ。解像度は2688×1216ピクセルで、ピーク輝度は2000ニトとなっている。また、ゲーミングPCでよく見られる内部冷却ファンと液体金属による冷却システムも搭載している。
グラフィックスとゲーム中心のベンチマークテスト「3DMark Wild Life Extreme」で、REDMAGIC 10 Proは、551ドル(約8万3000円)高いASUSのROG Phone 9 Proに匹敵するスコアを記録した。さらに、CPUのベンチマークテスト「Geekbench 6.0」でも、ASUSをわずかに上回った。つまり、ゲーミングスマホとしては、10 Proの実力に申し分がないことは明らかだ。筆者がいら立ちと失望を感じるのは、10 Proがスマートフォンとして使い勝手があまり良くないことだ。
REDMAGIC 10 Proの初期テストで、筆者は自分の忍耐力を試されるような問題にいくつか遭遇した。こうした問題の多くは、REDMAGICの以前の機種で遭遇したものと同じである。あまり改善されていないのが、いら立たしい。
特にイライラさせられるのが、カメラのソフトウェアだ。デフォルトですべての画像にウォーターマークが適用されるようになっている。しかも、これを無効にする手順がまったく直感的ではない。ウォーターマークを無効にするには、カメラを開いて右上の矢印をタップした後、左上の「More settings」(詳細設定)をタップして、ウォーターマークの切り替えスイッチを見つけなければならない。REDMAGICの「Game Space」メニューからオフにすることも可能で、手順としては、本体の赤いスイッチをオンにしたら、プロフィールアイコンをタップする。表示される画面を下にスクロールすると「Red magic watermark」(Red magicウォーターマーク)というオプションがあるので、そこからオフにするという流れだ。また、メニューの表記の文法スタイルにも一貫性がないため、メニュー画面をさわっているとざわざわする。
REDMAGICではAndroidの仕様にいくつかの変更が加えられているが、これも邪魔に感じた。例えば、初期状態では、「Googleニュース」のフィードが「Z-Board」に置き換えられている。筆者はすぐにこれを無効にした。Z-Boardは、「Recommended news and service info」(お薦めのニュースとサービス情報)とうたっているにもかかわらず、組み込みの広告のように感じたからだ。ブラウザーも、デフォルトでは独自のブラウザーアプリになっているが、こちらは簡単に「Google Chrome」やMozillaの「Firefox」などのブラウザーに変更できる。
ノッチのないディスプレイは画面を見る分にはいいのだが、アンダーディスプレイカメラの撮影画質はよくない。例えば、1600万画素のカメラで撮影したこちらの自撮り写真は、背景がかなり白っぽくなっている。マイクロファイバークロスでディスプレイの「レンズ」部分を何度も拭いてみたが、結果は同じだった。なお、背面カメラは、5000万画素のメインカメラ、5000万画素の超広角カメラ、200万画素のマクロカメラで構成されている。
ソフトウェアとセキュリティのアップデートに関しては、REDMAGICの実績はあまり優れたものではない。それは10 Proでも同じだ。REDMAGIC 10 Proでは、メジャーソフトウェアアップデートが1回、セキュリティアップデートが3年間、「REDMAGIC UI」アップグレードが2「世代」分提供されることになっている。2024年の基準で言えば、これは非常に少ない。参考までに、ASUSの場合、ROGゲーミングスマホに対して2年間のメジャーソフトウェアアップデートと5年間のセキュリティアップデートを提供している。これでも、2024年に発売された「Google Pixel」シリーズの全機種やサムスンの「Galaxy S24」シリーズで提供される7年間のソフトウェアアップデートとセキュリティアップデートには遠く及ばない。
REDMAGIC 10 Proは、サムスンの「Galaxy」シリーズのような従来のフラッグシップスマートフォンからユーザーを奪うことを目指しているわけではない。しかし、比較的低価格なので、Snapdragon 8 Eliteプロセッサーを搭載したスマートフォンのなかでも手に届きやすい1台となっており、純粋なゲームパフォーマンスという点では、米CNETが2024年にテストしたどのスマートフォンよりも上回っている。「全画面」ディスプレイのおかげでメディアマシンとしても優秀で、特にゲームコントローラーに接続して、コンソールレベルのゲームをプレイする場合に、その実力を発揮する。大容量バッテリーと急速充電機能も、ポケットサイズのゲーミングデバイスとしての魅力をさらに高める要因となっている。ROMに詳しい人は、カスタムROMをインストールして、REDMAGICの標準のソフトウェアではなく、自分の好みに合うように仕様をカスタマイズしてもいいかもしれない。
ハンドヘルド型ゲーム機市場も競争がどんどん激しくなってきているため、REDMAGIC 10 Proのようなゲーミングスマホが最適なユーザー層については、さらに疑問が生じる。スマートフォンとしての機能性が弱点であることを考えると、なおさらだ。「Steam Deck」はポケットに入れるには大きすぎるものの、REDMAGICよりも低価格で多くのPCゲームに直接アクセスできる。ただし、Steam Deck自体はスマートフォンではない。ASUSのROG Phone 9シリーズは高性能なスマートフォンとしても、ゲーミングデバイスとしてもお薦めしやすい製品だが、価格は10 Proよりもずっと高い1000ドル(約15万円)からとなっている。
とはいえ、REDMAGIC 10 Proは、北米市場に投入される、最新のSnapdragonプロセッサーを搭載した最初のスマートフォンの1つとして、特に注目されるだろう。おそらく、アーリーアダプターで熱狂的なゲーマーでもある人たちにとっては、それだけで購入に踏み切る十分な理由になる。しかし、ほとんどの人は、Snapdragon 8 Eliteを搭載するフラッグシップAndroidスマートフォンの最初の波を待った方がおそらくいいだろう。ゲーミング機能ともっと整理されたソフトウェア体験を重視する人は、より高価なASUSのスマートフォンを検討してもいいだろう。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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