「ショートドラマ」流行の理由--JALの航空券予約数は3.7倍に、Z世代から支持

 スマホ向けの縦型の短いドラマ、「ショートドラマ」を見たことがあるだろうか。「TikTok」や「Instagramリール」「YouTubeショート」などのほか、ショートドラマアプリ「BUMP」や「ReelShort」など、さまざまなところで配信されている。ショートドラマが人気な理由と実例を紹介したい。

タイパ志向Z世代の支持を受けて人気拡大

 ショートドラマは1話1~3分程度と短く、1つのタイトルにつき2~3話程度から構成されている。恋愛モノや学園モノなどさまざまなジャンルが投稿されている。2023年頃に中国で流行したのがきっかけとなり、流行が海外にも広がっていったと言われている。

 Z世代はYouTubeでも長い動画は最後まで見られず、倍速視聴やスキップ視聴しがちだ。タイパ世代の彼らにとって、ショート動画はちょうどいい長さであり、隙間時間にスマホで見ることができることで支持を受けている。ショートドラマはそのようなZ世代の支持を受け、人気が広がっているのだ。

 このショートドラマを使ったPRコンテンツが大いに受けており、ヒットが続いている。マーケティングに使えると企業の熱い注目を集めているのだ。

 ショートドラマ研究プラットフォームDataEyeによると、中国のショートドラマの市場規模は2023年の373億9000万元から24年は500億元に拡大。海外の市場規模も、2022年に約1億7000万ドルに達しているという。

広告なのに高い好感度--認知度拡大・販売促進に効果あり

 Z総研の「TikTokショートドラマ」に関する意識調査(2024年6月)によると、「TikTokを1日にどのくらいの時間見ていますか?」という質問に対し、「1~2時間未満(27.6%)」が最多であり、次いで「2~3時間未満(22.6%)」と、Z世代は1日に数時間、TikTokを見ていることが分かっている。

 「TikTokのショートドラマ広告に対する印象」を聞いたところ、「ややポジティブな印象(52.9%)」が最も多く、続いて「ポジティブな印象(33.0%)」となった。Z世代の86%と約9割が、広告でありながらコンテンツとして楽しめるショートドラマに好印象を持っているというわけだ。

 「TikTokのショートドラマ広告がきっかけで、これまで知らなかった商品やサービス、ブランドを知ったことはあるか」についても聞いている。「数回ある(46.6%)」が最多であり、次に「何度もある(32.6%)」となり、Z世代の83%以上が商品やサービス・ブランドの認知に繋がっている。

 「TikTokのショートドラマ広告がきっかけで、商品やサービス、ブランドに興味を持ったことはあるか」と聞いたところ、最多は「数回ある(45.2%)」、次いで「何度もある(22.6%)」に。Z世代の67.8%、約7割が同様に商品やサービス、ブランドに興味を持ったことがあるのだ。

 「TikTokのショートドラマ広告がきっかけで、商品を購入したりサービス利用をしたことはあるか」と聞いたところ、「全くない(56.1%)」が最多であり、次いで「数回ある(26.7%)」となった。

 Z世代は一般的な広告は好まないが、押しつけがましくなくコンテンツとして楽しいショートドラマは広告なのに好感を抱いており、認知拡大や販売促進などにも効果がある。企業が注目しているのも当然というわけだ。

JAL「久米島」路線は航空券予約数270%増

 前述のように、ショートドラマは企業のマーケティングにも効果的と言われている。広告感を出さず、ストーリーの中に自然に訴求したいサービスや商品を入れ込むことも可能だ。狙ってヒットにつなげやすいと言われており、注目のジャンルなのだ。

 JAL、ショートドラマクリエイター集団「ごっこ倶楽部」、セプテーニは、沖縄の久米島の魅力を伝えるドラマを前後編で作成し、2024年1月の投稿以来わずか1カ月で、再生数は1000万回を超えたという。

 JALは、久米島路線の予約数が伸び悩んでいること、若年齢層へのリーチを考えて作成。中でも久米島を選んだ理由は、JALの単独路線のため、久米島に来る人が増えればJAL利用者も増えると考えたためだ。

 ショートドラマのタイトルは「旅する度」。旅先でのカップルの価値観の違いによる喧嘩がテーマとなっている。旅行中は観光したい派とのんびりしたい派で意見が分かれるという「あるある」をテーマにしたことで、コメントしたくなる内容になっているのだ。また物語中に、JALのキャビンアテンダントを旅行中のサプライズを相談するキーパーソンとして自然な形で登場させており、JALへの訴求を成功させている。

 ショートドラマの投稿と同時に、「X」公式アカウントとキャンペーンサイトでドラマの内容に関するクイズを出題。クイズへの回答と同時に、元の投稿のリポストとフォローを行うことで、久米島往復航空券が当たるキャンペーンを行った。クイズはショートドラマを見ないと答えられないものだったため、視聴を促す効果につながったのだ。

 キャンペーンでは、他の地方路線キャンペーンと比較して応募者数が2倍となり、若年層や非会員の比率が過去施策と比較して増加。若年層比率では10%、非会員比率も8%増加したという。

 アカウントのフォロワー数は動画投稿から1日で約9000人増加し、コメント数は2700件以上ついた。配信前後における久米島行きの航空券の予約数は270%以上増加しており、高い販促効果につながったのだ。

 ほかにも、日本テレビがショートドラマ専用アカウント「毎日はにかむ僕たちは。」を開設し、はにかんでしまうような一瞬をコンセプトに継続的にショートドラマ動画を投稿している。執筆現在でTikTokフォロワー数は67.8万人、3461.1万「いいね」を獲得する人気ぶりとなっている。日本テレビの調査によると、Z世代の3人に1人が認知、4人に1人が実際に視聴している人気アカウントになっているという。

 Z世代に向けたショート動画の活用やマーケティング事例が増えている。今後も、新しい動向をお伝えできればと思う。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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