「3つ折り」のファーウェイが日本でスマホを売りづらい理由をおさらい--ウェアラブルでは続々新製品

 中国のファーウェイ・テクノロジーズ(ファーウェイ)は10月2日に新製品発表会を実施し、スマートウォッチの新機種「HUAWEI WATCH GT5」「HUAWEI WATCH GT5 Pro」などを発表した。

 かつて日本のスマートフォン市場でも大きな存在感を誇ったファーウェイだが、米国による制裁で中国外でのスマートフォンの開発や販売に大きな制約が生じている。一方のスマートウォッチ市場ではどのような戦略をもって挑んでいるのだろうか。

  1. かつてスマホ世界シェア1位だったファーウェイ
  2. 米国の制裁で一時はスマートフォンの製造も困難に
  3. スマホと違い「独自OS」でも戦えるウェアラブルに商機
  4. といはいえウェアラブル競争激化
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かつてスマホ世界シェア1位だったファーウェイ

 「HUAWEI」ブランドで知られる中国のファーウェイといえば、日本ではここ最近、スマートウォッチやワイヤレスイヤホンなどのウェアラブル製品で知られるメーカーだ。いずれの製品もラインアップの幅広さや、コストパフォーマンスの高さなどで人気を博しており、市場で一定のシェアを獲得しているようだ。

 新製品の投入にも積極的な同社は、10月2日の新製品発表会で新しいスマートウォッチの主力製品となるHUAWEI WATCH GT5、HUAWEI WATCH GT5 Proと、ハイエンドモデルの「HUAWEI WATCH Ultimate」の新色を発表している。

 だがファーウェイといえば、少し前まではスマートフォンメーカーというイメージが強く、現在もそうしたイメージを持つ人が多いことだろう。確かに2019年までは日本でスマートフォンの新製品を積極的に投入しており、一時はNTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった携帯大手にも製品を提供していた実績がある。

 それに加えて最近では、中国で3つ折りスマートフォン「HUAWEI Mate XT Ultimate Design」の発表会を、米アップルの新製品「iPhone 16」シリーズの発表にぶつける形で実施。お膝元の中国ではスマートフォンメーカーとして現在も大きな存在感を発揮している様子がうかがえる。

米国の制裁で一時はスマートフォンの製造も困難に

 にも関わらず、なぜ同社が日本をはじめとした中国外であまりスマートフォンを出していないのかといえば、ひとえに米国による制裁の影響が大きい。同社は一時出荷台数の世界シェアでトップに躍り出るなど、スマートフォン市場で急成長を遂げていたのだが、2018年頃から加熱した米中による貿易摩擦で、同社を巡っても米中が激しく対立。その結果として2019年に米国商務省が同社をエンティティリストに追加し、米国企業との取引が大幅に制限されたのである。

 そもそも、Android OSはオープンソースだが、Google Playなどを使うためのGoogleモバイルサービス(GMS)は制裁の対象となった。また、それを動作させるチップセットなどを開発、製造するのにも米国の技術が必要だ。ファーウェイは一連の制裁によって、一時はスマートフォンの開発そのものが困難となり、同社のスマートフォンブランドの1つだった「HONOR」(オナー)の事業を売却するなど経営的にも非常に厳しい状況が続いていた。

 そこで、同社は戦略を大きく転換。OSを自社開発の「Harmony OS」に切り替えつつチップセットの製造などにも自国の技術を活用することで、制裁の影響を回避、中国市場を主体とし、スマートフォン事業を立て直すに至っている。

 だが多くの人が知る通り、現在スマートフォンのエコシステムは世界的に見て、アップルの「iOS」またはグーグルの「Android」という、米国製OSの下に成り立っている。

 ファーウェイもHarmony OSのエコシステム構築には力を入れているが、中国外でその開拓が進んでいるとは言い難い。そのため、同社は現在もスマートフォン事業で思うように中国外に出ていくことができていないのである。

スマホと違い「独自OS」でも戦えるウェアラブルに商機

 だが同社は、中国では家電からEV(電気自動車)に至るまで非常に幅広い製品を手がけており、米国の制裁の影響を受けない製品も多く存在している。その1つとして現在中国外での市場開拓を推し進めているのが、スマートウォッチなどのウェアラブル製品だ。

 スマートウォッチはアップルの「Apple Watch」や、「Pixel Watch」といったグーグルの「Wear OS by Google」を搭載したモデルが知られている。だが一方で、同市場ではファーウェイのほか、米ガーミンやフィンランドのポラール・エレクトロなど、独自OSを採用した複数のメーカーが一定のシェアを獲得しており、スマートフォンのような「2強体制」とはなっていない。

 その理由は、スマートウォッチに求められるニーズに幅があるためだ。Apple WatchやPixel Watchなどは、確かにスマートフォンとの連携に優れ、モバイル通信や決済が利用できるなどの非常に豊富な機能を持つ。しかし、その分バッテリーが持つのが1、2日程度と非常に短い。

 だが現在、スマートウォッチで最もニーズが高いのはスマートフォンのサポート的な機能ではなく、健康管理やフィットネス、スポーツの練習支援など身体に関する機能だ。そうした用途では確実な身体データの取得が求められ、そのためには24時間常に装着していることが求められる。1日程度でバッテリーが切れてしまうようでは使い勝手が非常に悪いのだ。

 そういった背景から、センシングやランニングなどに欠かせない位置測位などに機能を集中し、他の機能は省いて1週間以上バッテリーが持つことに重点を置いた機種も、実は支持を集めている。

ファーウェイの新機種は「ゴルフ」で差別化

 ファーウェイもそうした市場環境に商機を見出し、中国外ではスマートウォッチを主力製品の1つに位置付けて市場開拓を進めているようだ。実際に同社は手首装着型ウェアラブル端末の出荷台数で、世界トップシェアを獲得しているという。

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 ただ、先にも触れたように、スマートウォッチはOSが多様なだけに競争相手も多い。いかに差異化して顧客を獲得するかが大きな鍵だ。ファーウェイの製品ではこれまで、ランニングやダイビングなどのニーズを押さえる製品に注力してきた印象があるが、今回の新製品ではそれに加えてゴルフ関連の機能を大幅に強化していることをアピール。ゴルファーの開拓に力を入れようとしている様子を見て取ることができる。

 実際、新製品のHUAWEI WATCH GT5はゴルフ関連機能が大幅に強化され、GPSの精度向上でより正確な距離を測定できるようになった。さらに、ウォッチ上でスコアを入力して分析できる機能、スマートフォンからプレイ軌跡を振り返る機能も搭載した。

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 加えて、Proモデルでは、グリーンの方向と距離が確認できるため、コースを外れてもリカバリーしやすい。さらに、グリーンの傾斜を地図で確認したり、グリーンの中心だけでなく手前や奥の距離も測定できる機能を備えるなど、ゴルフ関連の機能に力を注いでいる。

 ただ、ゴルフの分野に力を入れているのはファーウェイだけではない。ガーミンもフラッグシップモデルの「fenix 8」や、ゴルフに特化した「Approach S70」など、ゴルフ関連の機能に注力したモデルをいくつか投入している。

 また、ゴルフ以外の動向として、従来日本では代理店を通じた販売のみだった「Amazfit」ブランドでスマートウォッチを展開する中国のゼップライフが、日本法人の立ち上げを予定していると発表。競合他社が日本市場に力を入れる動きも、密かに強まっている。

 加えて、日本では圧倒的なiPhone人気に支えられ、Apple Watchが非常に高いシェアを獲得している。米国の制裁を受けにくいスマートウォッチの分野ではあるが、日本での市場拡大に向けてファーウェイが超えるべき壁はまだ多い。

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