ソフトバンクグループで代表取締役会長兼社長執行役員を務める孫正義氏は10月3日、自社イベント「SoftBank World 2024」に登壇。パラメーター数を抑えた生成AIについて本質的ではないとの認識を示した。
孫正義氏は「人間の脳のシナプスが100兆個あり、その1万分の1は金魚。知能はニューロンの数におおむね比例する。最近の生成AIは一番大きなモデルでパラメータが数兆個ある」と前置きしたうえで、次のように述べた。
「よく、日本製の生成AIだから工夫をしようと、工夫をするからとパラメーターを少なくして、少ないパラメーターだと省電力、チップが少なくて済む、小さくするのが努力、日本的だと主張する人が多い。しかし僕に言わせればそれは言い訳だ」(孫氏)
続けて「GPUが買えない、電気が買えない、予算がないから仕方なく小さくしているようだ」とも指摘。「日本の道は狭いからと、田んぼのあぜ道でも通れるように小さな二輪車を作る。そうすればモータリゼーションが来ても誇れると言っているのと同じ」と切り捨てた。
その後「もちろん小さくして効率を上げる方向もある」としつつ「知能の進化の方向は強くて賢くて、遥かに遥かに賢くなる」と指摘。「学校で出された宿題で、成績が10番目の人とクラスで一番賢い人、どちらに教えてもらうのが良いか」とも述べ、企業は競争をしているから、一番パラメーター数の多い優れたAIに利用が集中するとの見立てを示した。
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こうした発言の背景にあるのが、生成AIの発展はまだ始まったばかりという点だ。孫氏は、AIが人間の知能を超える「AGI」の到来について「2〜3年以内」と予測。また、人間の知能の1万倍(その逆は金魚)の超知能「ASI」が10年以内に到来すると述べた。
さらに、OpenAIから登場した「OpenAI o1」について「ChatGPTとは根本的に異なる」と述べた。「GPT-4oまでは言葉の数珠つなぎだったが、OpenAI o1では生成AIで初めて『考える』という能力を持った」という。
そして、AIにおける思考を実現するための論理的思考の連鎖、強化学習、報酬プロセスのためのQ関数に触れ、OpenAI o1の思考について「会社に例えるなら、2000人のエンジニアが並行して、1日にそれぞれ数億回を三段論法で思考しているのと同じだ」とし、次のように述べた。
「『EVのバッテリー寿命を2倍伸ばす電池を発明してくれ』とAIに指示して、実現すればエンジニアにとって最大の成果だ。世の中がすでに知っていることを調べていても競争に勝てない。人が知らないことをAIを使って先に考え出す必要がある。」(孫氏)
つまり、あらゆる産業の企業は、一番優れたAIを用いて「発明」を生み出す必要があり、一番優れたAIにアクセスできない企業はその産業から淘汰される。というのが孫氏の見立てだ。
また孫氏は会場で、ASIに達するまでのAIの進化を8段階で説明した。
・レベル1「人間と同等のスピードで会話できる。遮っても会話が続く」
・レベル2「ありとあらゆる科目で博士レベルの知識を持っている」
・レベル3「個人や組織の代わりにAIがいろいろこなすエージェント機能を備える」
・レベル4「AGIが自ら発明をする」
・レベル5「AIのエージェントが組織的な活動を群れになってやる」
以降がASI領域だという。
・レベル6「感情を理解して長期記憶をもつ」
・レベル7「自らの意思を持つ」
・レベル8「調和の取れた超知性へ進化する」
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(更新)10月4日午前10時30分:初出時、孫氏の発言のなかで「ニューロンが100兆個ある」と記載していましたが、正しい孫氏の発言は「シナプスが100兆個」でした。訂正しお詫び申し上げます。
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