メルカリで代表取締役CEOを務める山田進太郎氏は8月13日の決算会見で、低迷が続く米国事業について、2025年6月期(2024年7月〜2025年6月)の通期で「ブレークイーブン」をめざすと述べた。
ブレークイーブンとはつまり、利益も損失もないトントンにするという意味だ。メルカリは2014年に米国事業を開始したが、流通取引総額(GMV)は低迷している。2024年6月期のGMVは前年同期比で10%減の9億1300万ドル、売上高も同9%減の2億9300万ドルと、成長領域とは思えないほどに落ち込んだ。
この要因についてメルカリは「インフレ長期化をはじめとする外部環境の影響によって、成長軌道に戻せなかった」と振り返る。同社は当初、インフレはリユース市場に追い風になると期待していたが、実際には可処分所得の低下が消費の厳選傾向につながり、メルカリで扱う嗜好品などの需要が低下したという。
こうした低迷を受け、メルカリは2024年4〜6月に米国で大規模なレイオフを実施。マーケティング費用も見直した。その結果、 営業利益から株式報酬や減価償却費を除いた調整後営業利益は、2023年6月期の-4800万ドルから、2024年6月期には-1700万ドルに圧縮した。
また、業績の反転に向けた施策として、米国で販売手数料の無料化を開始したほか、将来成長に向けてZ世代の取り込みを強化。さらに、日本で出品された商品を米国のメルカリから買える「越境取引」の導入などで、米国事業を成長軌道に乗せたい考えだ。
なお、メルカリが米国事業を開始してすでに10年目だ。長年の投資にも関わらず赤字が継続し、さらにGMVも減少に転じている。一部株主からは「米国事業から撤退すべき」との声も聞かれる。
こうした批判について、山田CEOは「米国市場のポテンシャルは引き続き大きい」と説明する。
「日本国内にも伸びしろはあるが、中長期的には米国の方がポテンシャルは大きい。(現状の米国事業も)赤字ではあるが、日本円で1000億円以上の流通の規模感で、売上もかなりだ。打つべき手を打てば、まだまだ成長できる余地はある」(山田CEO)
また、「米国事業は山田CEOの個人的な思い入れなのでは」との批判に対しては「私の思いもあるが、会社としてリスクとリターンを考えても、充分に割の合う投資だと考えている」とコメント。「『私が個人的にやりたいから見込みなしで投資している』との意見もあるが、そうではない」とも付け加えた。
また、執行役員 VP of Corporate 兼 CFOを務める江田清香氏は、米国市場のポテンシャルについて、同国のリユース市場の拡大を挙げたほか、「メルカリは米国の(リユース市場での)シェアは数%しか取れておらず、成長できれば可能性が無限大」とも説明した。
なお、前述の通りメルカリは2025年6月期の通期で、米国事業のブレークイーブンをめざすと表明したが、同目標を達成できない場合はどうなるのか。
この問いに対して山田氏は「会社としてはあらゆる選択肢を常に考えている」と述べた。一方で「現時点ではブレークイーブンの実現に向けてリストラを含む組織再編をしている」とも述べ、未達を想定して話す段階ではないと強調。「一旦ブレークイーブンに持っていけるところまでは来ている」と達成に自信を示した。
なお、株主還元については「当面は成長投資と財務基盤の強化を優先し、現時点において配当の予定はない」とした。
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