ソフトバンクグループは8月7日の決算会見で、直近の株式市場の乱高下、そしてAIバブルを懸念する声に対して見解を述べた。
同社の2025年3月期第1四半期の決算は、最終損益が1743億円の赤字だった。5597億円の投資利益を計上したが、円安の影響でドル建ての負債が膨張したことが響いた。
同社が最重要指標と位置づけている時価純資産(NAV)は、2023年12月末の19.2兆円から、2024年6月末時点では35.3兆円へと大幅に増加した。Armの株価上昇や円安などによって、ドル建て資産が膨らんだことが貢献した。
一方、直近の株式市場やドル円相場は急落し、8月5日には日経平均株価が1987年のブラックマンデーを超える下落幅を記録するなど、ボラティリティが高まっている。ソフトバンクGの保有資産もその影響を受け、8月6日時点の株価と為替レートを適用したNAVは24.9兆円と、6月末時点から10兆円以上も減少した。
こうした金融市場の混乱について、同社で取締役 専務執行役員 CFO 兼 CISOを務める後藤芳光氏「市場は激変している」と述べる一方、純負債を保有株式価値で割ったLTVは8月6日時点でも10.9%と低水準であると強調。投資のレバレッジ水準は低く、財務的には何ら問題ないとした。
後藤氏によると、昨今の株価急騰と急落は、2008年のリーマンショックよりは、2000年のITバブルに近いと見ているという。リーマンショックでは実在しない価値への期待が株価を吊り上げたのに対して、ITバブルはインターネットという実在する価値への期待が積み上がっていった。そして、今回はAIがそうであるという見立てだ。
なお、この数週間でNVIDIAやインテルなど多くの半導体銘柄が急落している。世間ではAIバブルの崩壊する懸念もある。
こうした懸念に対して後藤氏は「ポジティブな評価が積み重なりながら半年間の株価上昇があったが、それを見直すタイミングが今なんじゃないか。半年間の市場の動きは正しかったのか、いろいろな人が批判的に見た時にどうなるか、チェックをしているタイミングだと思っている」と述べた。
なお、ITバブルは一旦崩壊し、GAFAが台頭するまでの間は低迷が続いた。AIも同じ道をたどるのだろうか。
後藤氏は「我々はAI原理主義者で、AIが将来の世の中をどう変えるかだけを見ている。AIの産業群が更に発展するのは自明だが、我々が考えているよりも長い時間がかかるかもしれない」と述べた。
一方で、現時点で投資のレバレッジ比率は低く、安全運転を貫いている点にも触れ「私達は会社としての体力はしっかりある」とし、仮にバブルがはじけたとしても、持ちこたえる体力が十分にあると説明した。
なお、ソフトバンクグループは投資会社であり、今回の株価下落局面は「買い場」のようにも思える。後藤氏は「手元には4.3兆円がある。全体感でいけば、株価が下がっていけば投資の好機だ」と述べた。
一方で「そうは言っても8月5日はこの数十年で最大の下げで、その翌日はこの数十年で最大の上げ。そんな乱高下するマーケットなので、保守的に見るべきタイミングだ」とも強調。「1日だけ下がってもそこで買うのは無理」とも述べ、マーケットのボラティリティが収まるまでは慎重姿勢で崩さないと説明した。
今回の決算発表にあわせて、ソフトバンクグループは5000億円を上限とする自社株買いを発表した。取得期間は2024年8月8日から2025年8月7日までの1年間。後藤氏は「今は自己株取得についてベストなタイミングと判断した」と説明した。
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