サムスンの「Galaxy Ring」を人差し指にはめてみると、ごく普通のジュエリーの1つのように感じられた。外装は光沢のある仕上げのチタン製で、表面はわずかに窪んでいる。その控えめで他には見られないデザインは、珍しい結婚指輪だと言ってもおかしくないようにも見えた。しかし、その高級感のある金属製の外装の内側には、睡眠の状態や心拍数、活動量を計測するためのいくつものセンサーが搭載されている。
装着感は非常に軽く、自分が健康データを収集する器具を着けていることを忘れてしまいそうになるほどだ。Galaxy Ringは399.99ドル(約6万3000円)で、重さはわずか2.3~3.0gであり、9種類のサイズと、3種類のカラーバリエーション(光沢のあるゴールド、つや消しシルバー、つや消しブラック)が用意されている。
米国時間7月10日にサムスンの製品発表イベント「Unpacked」で詳細が発表されたこの期待の製品は、まだ新しいスマートリング市場の新たなスタンダードになる可能性がある。スマートリングはまだスマートウォッチほどは普及していないが、ウェアラブル業界が健康やウェルネスのトラッキングを重視するようになったことで、「Ouraリング」や「Ultrahuman Ring AIR」などの人気が高まっている。
スマートリングには、スマートウォッチにはない利点がいくつかあり、一般にバッテリーの充電間隔が長く、寝るときに着けていても違和感が少ない。サムスンはスマートリングを扱っている企業としては最も大きく、間違いなくこの分野に(願わくば良い方に)大きな影響を与えるとみられている。
まずは、いくつかの誰もが知りたがっている情報から説明しよう。
デモエリアで短時間試着した限りでは、着け心地は非常に快適だった。実際、あまりも快適だったため、撮影が終わった後、リングを着ていることをすっかり忘れて、そのまま立ち去りそうになったほどだった。
Galaxy Ringには傷に強いグレード5のチタンが使われているため、ジムでのウェイトリフティングや、日常生活での使用にも耐えられるはずだ。また、水深100mに耐えられる防水性能を備えており、IP68の防水規格に準拠している。
Galaxy Ringはどの指に着けても構わないのだが、サムスンは、ジェスチャー操作を正確を読み取るためには人差し指に装着するのが望ましいとしている。ジェスチャー操作は、指を合わせる動作をすることで動画や写真を撮影できるという気が利いた機能だ。
スマートリングはスマートウォッチのようにバンドを締めたり緩めたりすることによる調整ができないため、正しいフィット感を得られるかどうかはより一層重要になる。サムスンのウェブサイトでは、予約注文プロセスの一環として無料のリングサイズ測定キットを提供しており、少なくとも24時間は希望する指にサイズゲージを装着して、ぴったりと触れた状態で快適に装着できるかどうかを確認するよう勧めている。
最適な指輪のサイズは、運動や体重の変化、毎月の女性ホルモンの周期的変化などが原因で、時間の経過とともに変動することがある。Movanoの「Evie Ring」は、このようなサイズの変動に適応しやすいように、リングに切れ目が入った採用した女性向けのデザインを採用している。サムスンは、30日以内に間違ったサイズを購入したことに気づいた場合、指輪の交換に対応する可能性があると述べている。
Galaxy Ringは毎日24時間にわたり着用して使うことを想定して作られており、歩数、心拍数、全体的な活動レベルなどのさまざまな指標を1日中収集する。このリングにはディスプレイがないため、統計値や指標は「Samsung Health」アプリで確認することになる。Galaxy Ringは、睡眠中も以下の情報を収集し続ける。
Galaxy Ringは、睡眠中に頭の近くにスマートフォンを置き、Samsung Healthで機能を有効にすることで、いびきを検出することもできる。また、サムスンは米食品医薬品局(FDA)から睡眠時無呼吸症候群を検出する機能の認証を受けているが、この機能は一部の国のGalaxy Watchでしか利用できないということも知っておいた方がいいだろう。
リングを着けたまま朝になると、心拍数、睡眠、活動量などのさまざまな指標から算出された「Energy Score」が100点満点で表示される。これは、Ouraリングの「コンディションスコア」やFitbitの「今日のエナジースコア」と似た指標だ。
サムスンは、Galaxy AIで個々のユーザーに合わせた情報を提供することによって(これには「Wellness Tips」と呼ばれる機能が含まれる)、ほかのフィットネストラッカーや健康トラッカーとの差別化を図ろうとしている。この情報には、運動の目標や睡眠に関するさまざまなアドバイスも含まれている。例えば眠りに落ちるまでの時間が長すぎることが分かれば、寝る前に瞑想を行うことを勧めてくるかもしれない。またWellness Tipsが、データを長期的に比較して体を動かすべき時間や休憩すべき時間があるかどうかを調べ、夜の睡眠のスケジュールを調整するよう提案する場合もある。
Galaxy Ringは、ウォーキングやジョギングなどの特定の有酸素運動を自動検出する機能を持っているため、ワークアウトの記録を取るためにスマートフォンを引っ張り出してくる必要はない。Galaxy Watchの自動ワークアウト検出機能は、筆者がこれまでにテストしてきたウェアラブルで経験した中でも、もっとも優れた機能の1つだったので、Galaxy Ringでもうまく機能してくれることを期待している。
またGalaxy Ringも、スマートウォッチのように、一定時間動いていないと体を動かすように通知してくる。ただし、リングには画面も振動機能も付いていないため、リング自体が通知を出せるわけではない。そのため、通知はスマートフォンや(装着していれば)Galaxy Watchから届くことになる。
Galaxy Ringは、Galaxy Watchと同じように、心拍数が高すぎる時や低すぎる時に通知を発するほか、皮膚温センサーを使って月経周期をトラッキングする機能も持っている。
Galaxy Ringの充電ケースは、これまでに使ったことがある他のスマートリングのものよりも、ずっとスタイリッシュで、しかも実用的だ。ケースは蓋付きの透明な箱で、リングの充電状況が分かるようになっている。LEDが光ってバッテリー残量を示し、リングがスマートフォンとペアリングしている時には、光り方が変わるようになっているのだ。
OuraリングやUltrahuman Ring AIRなどをはじめとする他のスマートリングの場合、充電パッドを使用しているため、充電中のリングは露出した状態になっている。そのため、Galaxy Ringのように、ケースごとバッグに放り込んでおいて移動中に充電したりすることはできない。他のスマートリングは充電器をコンセントに接続しておく必要があるが、Galaxy Ringはケース自体に1.5回分の充電が可能なバッテリーが内蔵されている。
Galaxy Ringのバッテリー持続時間は、サイズが5~11号なら最大6日間、12号と13号は最大で7日間になっている。これに対して、第3世代のOuraリングは、1度の充電で約4日間しか持たない。筆者は、できればGalaxy Ringには、LEDを光らせるなどしてバッテリーが少なくなったことが分かる機能を付けてほしいと考えている。Ouraリングなどの場合、バッテリーが減ったかどうかを知るには、スマートフォンの通知に頼らなくてはならない。そのため筆者は、何度か通知を見逃してOuraリングが充電切れの状態で寝てしまい、1晩分の睡眠データを取り損ねたことがある。
Galaxy RingとGalaxy Watchを両方とも買う金銭的余裕があれば、この2つを連携させて一緒に使うことができる。Samsung Healthアプリは、両方を着けていればそれを認識し、どちらのデバイスの信号の方が明確かを判断して、より正確なデータだけを使用する。また、どちらか一方のセンサーを自動的にオフにして、バッテリー持続時間を延ばす機能もある。
Galaxy Ringは、Android 11以降のスマートフォンとペアリングさせることができるが、Energy ScoreなどのGalaxy AIを使った一部の健康情報を利用するにはGalaxyシリーズのスマートフォンが必要になる。
Galaxy Ringは健康を主眼に置いた製品だが、スマートフォンの操作にも使え、指を2回摘まむと、スマートフォンで写真を撮ったり、アラームを止めたりすることができる。これは、「Apple Watch Series 9」の「ダブルタップ」や、Galaxy Watchで採用されているサムスン独自の「ユニバーサルジェスチャー」に似たものだ。
またGalaxy Ringは、「Samsung Find」アプリにも対応している。家の中でリングをなくしてしまったときは、スマートフォンかウェブのインターフェースと通信することができる。この機能を使って緑と赤のLEDを点滅させれば、ソファーの下に転がり込んでいたり、ベッドシーツに紛れ込んだりしていても見つけやすくなる。
筆者は、今後数日から数週間にわたってGalaxy Ringのテストを行う予定で、このリングの使い勝手を調べるのを楽しみにしている。試しに使ってみた際の着け心地は良好だったため、このリングを常に着け続けてスマートウォッチと比較するのが楽しみであり、特に睡眠トラッキング機能には期待している。そのため筆者は、おそらく何度か昼寝をすることになるだろう。もちろん、テストのためだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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