カプチーノとクロワッサンがあれば、おいしい朝食になる。しかも無料だとしたら、なおさらそうだろう。しかし、個人情報やプライバシーを犠牲にするだけの価値はあるだろうか。
消費者向けのウイルス対策や仮想プライベートネットワーク(VPN)といったデータプライバシー製品を提供するSurfsharkは、その問いに対する答えを確認したくなった。そこで、同社は米国時間5月30日朝、ニューヨーク市にある高級カフェを借りた。時折困惑した表情を浮かべながら入店した客たちは、現金やクレジットカードで支払う代わりに、個人情報の一部を提供するよう求められた。
カプチーノやラテの代金はメールアドレスで、エキゾチックなシングルオリジンのハンドドリップコーヒーの場合は住所が求められた。アボカドトーストやキヌアサラダなどのフードメニューの代金は、クレジットカードのセキュリティコードだ。それらの情報はカードに書かれ、レジ係に渡されたのち、即座にシュレッダーにかけられた。
もちろん、けげんな表情を浮かべる人もいたが、こうした情報と引き換えに「無料」で何かを手に入れるチャンスに飛びついた人が大半だった。もしかしたら、こうしたデータを個人情報とはみなしていなかったのかもしれない。このテスト結果は、食料品店で割引を適用してもらうために電話番号を教えたり、お気に入りのレストランでポイントをためるためにメールアドレスを教えたりといった、多くの人々が日常的に行っている行動を反映している。
しかし、一見無害に思えるこれらの行動は、後で重大な結果を招く可能性もある。企業が収集したデータが、詐欺目的で悪用しようとたくらむサイバー犯罪者に盗まれたり、データブローカーに売られて、彼ら自身の利益のために使用されたり共有されたりといったこともあり得るからだ。いずれの場合も、個人のデジタルプライバシーの残った部分が、少しずつ削り取られていくことになる。
Surfsharkのグローバルテクノロジー広報責任者のLina Survila氏によると、それらの概念は人々にとって、非常に抽象的なものに見えることがあるという。カフェでの実験の狙いは、共感できる視覚的要素を加えることで、自分の情報を渡してしまう前に人々に立ち止まって考えてもらうことにあった。
Survila氏はイベントの終盤に、「非常に多くの反応があった。人々に考えてもらうきっかけになったことを願っている」と語った。
例えば、同氏によると、メールアドレスを教えてほしいと言われたある男性は、笑って、「構わないよ。どうせ皆が知っているアドレスだから」と答えたという。
そうした考え方は米国人に特有のものだと、リトアニアに住むSurvila氏は言う。欧州人は自分の個人情報に関して、米国人よりもはるかに慎重であり、たとえ何かを無料で得られるとしても、個人情報を教える可能性は低いそうだ。
また、今回の実験の目的は、実際にデータを収集することではなく、人々の意識を高めることだという点にも注意したい。客は偽の情報を渡すこともでき、渡されたカードは食べ物やドリンクを受け取った客の目の前ですべて儀式のようにシュレッダーにかけられていた。
英語には「ただの昼食(今回の場合は朝食だが)なんてものはない」(つまり「ただほど高いものはない」の意)という古いことわざがあるが、5月30日の朝にこのカフェを訪れた人は全員、無料の食事にありつくことができたというわけだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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