2022年11月の登場以降、革新的なAIとして一世を風靡しているChatGPT。まるで人間のような会話が可能な自動生成型AIは、人間の仕事を代替しうる存在として、大きな注目を浴びている。「ぜひ仕事に活かしてみたい」という読者も多いだろう。
一方で、どうすればこれを使いこなせるのか、わからないという方もいるはずだ。「ChatGPT、70点の回答を100点に育てあげるプロンプトマネジメント講座」では、日々の仕事に活かすために必要な知識や使い方を連載でお届けしている。解説は、大手企業の新規事業創出をサポートするフィラメントの代表取締役、角勝(すみまさる)氏。角氏は、新規事業やそれに適した人材育成のためのアイデアを練るための相棒として、日常的にChatGPTを使用している。
この記事は連載9回目にあたるが、今回と次回の2回に分けて、とある実験の模様をお見せする。それは「ChatGPTにキャリアコンサルタントになってもらう」というものだ。キャリアコンサルタントの仕事は、生成AIによって代替されうるのか。未来への想像を膨らませながら、お読みいただきたい。
「転職したいと悩んでいるのですが…何からはじめたらよいか教えてください」
ChatGPTという名のキャリアコンサルタントに対して、まずはありきたりな質問をするところから実験をはじめよう。この問いに対する答えは、いかにも生真面目そうな長文だった。
画像では見にくいかもしれないが「自己分析」「市場調査」「ネットワーキング」などの6つの項目について、それぞれ2~3個ずつの要素が羅列されている。たとえば、自己分析の項目には「興味と情熱」「スキルと経験」「価値観と働き方の好み」の3つの要素がある。
もしキャリアコンサルタントにこんなものを示されたら、多くの人はうんざりするだろう。思考すべき要素の数は14もあり、ひとつひとつ取り組むのは面倒だからだ。しかも、思考の指針も示されていないから、それぞれを一から考えなければいけない。
こういった思索は転職時には不可欠であるが、人間のキャリアコンサルタントなら、すべての思考を転職希望者に委ねることはしない。相談相手との対話のなかで、ひとつひとつの答えを探り、分析していくだろう。実は、ChatGPTにもそれに近いことをしてもらえる。ChatGPTからユーザーに、“逆質問”をするように指示するのだ。
今回は14個の要素のうち最も上にある「自己分析―興味と情熱」に的を絞り、「私の興味と情熱を明確化するための問いかけを、私に投げかけてくれませんか? できれば深く考えずに答えることができる選択型の問いかけを、複数回にわたって投げかけてもらって、その回答内容を分析してほしいです」と伝えた。コツは、ChatGPTに選択肢を作らせることだ。こうすれば、ユーザーは手間をかけずに回答することができる。
そして表示されたのが、下の5つの質問だ。少々長くなるが、私の答えとともに書き出していこう。
あなたが休日に最もやりたいことはどれですか?
私の回答→B
どの種類の本を読むことが多いですか?
私の回答→D
どのジャンルの映画を観ることが多いですか?
私の回答→D
仕事で最も重要だと感じるのはどれですか?
私の回答→A
新しい環境や変化に直面したとき、どう反応しますか?
私の回答→D
どれも、性格診断や適職診断にありそうな質問だ。私の回答に対して、ChatGPTはどのような分析を返してくれるだろうか。内容次第では、先に挙げたような診断ツールの作成にも、生成AIが使えそうだ。では、ChatGPTによる診断結果を見てみよう。
私の感覚にはなるが、人が作った適職診断と近いレベルの分析がなされているように思う。「新規事業開発、製品設計、テクノロジー関連の職種」といったように、具体的なポジションも示された。14個ある要素のうち、一つ目の診断でここまでしっかりした答えを出してくれるのだから、対話を重ねればそれなりの精度の診断を得られるのではないか。やや雰囲気的な回答に感じられる部分もあるが、ChatGPTの言っていることはあながち間違っていない。自己認識のきっかけ程度にはなってくれそうだ。
ChatGPTによる分析結果を読むと、ポジティブな言葉が多いことがわかる。「社交性がある」「想像力が豊か」「リーダーシップを発揮」「柔軟性があり、直感的な判断ができる」など、やたらと私をほめてくれている。
キャリアコンサルタントが転職希望者と対話するとき、ネガティブな言葉を多用するケースはあまりないだろう。転職希望者が未来の仕事に対して前向きな気持ちを持てるように、褒めちぎりはせずとも、ポジティブなアドバイスをするはずだ。そう考えると、今回の実験で垣間見えてきたChatGPTの姿勢は、キャリアコンサルタント向きといえるのかもしれない。
次回は、今回の続きとして、ChatGPTにさらに多くの逆質問をしてもらう。生成AIはキャリアコンサルタントになりうるのか、私なりの結論をお見せしたい。
角 勝
株式会社フィラメント代表取締役CEO。
関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。
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