欧州のeコマース関連の調査を行っているCross-Border Commerce Europeによれば、欧州では2021年の「Reコマース(中古品販売)市場」が750億ユーロ(約12兆円)規模となり、2025年には160%増が予想されているという。
特に伸長しているカテゴリーが「ファッション」と「電化製品」で、中でもフランスは、ファッションの中古品の普及率が35%、家電が20%に拡大(2023年時点、Foxintelligence調べ)。中古品販売の普及が進んでいる。
欧州発の中古品販売を展開する企業も急成長している。例えば、スマートフォンを扱うフィンランド発のSwappieは年平均成長率が477.43%、家電やゲームなどを扱うフランス発のBack Marketは2023年の売り上げが前年比220%、ファッションアイテムや雑貨などを扱うリトアニア発のVintedは2022年の売り上げが前年比約150%となった。
本記事では、欧州メディアを参照するとともに、世界18カ国で事業を展開するBack Marketへの取材を通じて、欧州のReコマースの現状と未来予測を伝える。
Cross-Border Commerce Europeによれば、欧州のReコマース市場は小売市場全体の20倍の早さで成長しているという。2024年からの3年間で、eコマースに対するReコマースの市場シェアは12.3%から14%に増加すると予測されている。
同調査における「国境を越えた持続可能なマーケットプレイス(中古品のマーケットプレイス)2022~2023年」のトップ5は以下となる。
今回取材したBack Marketは上記ランキングでは11位だが、電化製品カテゴリーにおいては、欧州市場を牽引する存在だ。同社は、新品以下の価格かつ、従来の中古品以上の品質と補償を持ち合わせた「リファービッシュ(整備済)製品」のマーケットプレイスであり、日本を含む18カ国でサービスを提供している。
フランス本社の広報担当社によると、欧州でReコマース市場が急成長している背景には、さまざまな要因があるという。
「インフレや環境問題への関心の高まりのほか、電化製品においては新製品発表の熱狂に対する消費者の疲労感、スマホの新機種のイノベーションの低下などが相まって、市場が成長していると考えられる。同時に、中古品の再生・販売業者のエコシステムや販売チャネルの成熟、中古品の供給増、法規制の進歩などもあげられ、消費者がますます安価で環境にやさしい代替品に興味を示す理由になっている」(Back Market広報担当者)
2023年の同社の売り上げは前年比220%となり、成長を牽引しているカテゴリーは、「スマートフォン」「タブレット」「ノートPC」だ。主力製品はスマホだが、全売上に占める割合は徐々に低下しており、2018年は85%だったのに対し、現時点では70%を切っている。これについて広報担当者は、「中古品の多様化が加速している証拠だ」と説明した。
欧州全体でReコマース市場が伸長しているが、中でもフランスでは「電化製品」「ファッション」ともに普及率が高い。
Back Marketの広報担当者によれば、「フランスにおける中古、及び整備済スマホの市場シェアは32.7%(Foxintelligence調べ、2023年8月時点)にのぼる」とのこと。約3人に1人が中古のスマホを使用していることになる。
Cross-Border Commerce Europeの調査では、欧州の消費者へのアンケートを通じて、「中古品への価値観」の変化も伝えている。
また、Back Marketも2023年9月、8カ国(フランス、スペイン、ドイツ、英国、日本、アメリカ、韓国、オーストラリア)で18歳以上、1カ国あたり1000人を対象とした消費者調査を実施。リファービッシュスマホの購入意欲の高まりを伝えている。
こういった意識変化の背景には、中古品の品質向上に加え、エコフレンドリーである点も関係しているようだ。Back Marketの広報担当者は、「2014年の創業当時はエコロジーを考慮した顧客はわずか3%だったが、今では25%以上の顧客がエコロジーを第一に考え、リファービッシュ品を購入している」と話した。
フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)とBack Marketが行った調査によれば、リファービッシュ品は新品のスマホと比較して、必要となる資源や排出される二酸化酸素・電子ゴミが9割ほど少ないという。
EUではサーキュラーエコノミー政策の柱の一つとして「デジタル製品パスポート」の導入が検討されており、これが実現すれば、より一層Reコマース市場が拡大するかもしれない。同制度は原材料調達、生産、流通、リサイクルにいたるまで、一連の環境負荷情報や資源循環性の電子記録で、これにより個別製品のライフサイクルが追跡可能となる。
Back Marketの広報担当社は、「デジタル製品パスポートの枠組みが正しければ、改修部門にとって非常に有用なツールとなるだろう。個別の製品情報や修理履歴などが透明になれば、再生業者の作業が容易になる。さらに品質にまつわる情報を提供できることで、消費者の安心にもつながるはずだ」と言及した。
同社では、Reコマース市場の未来を次のように予測している。
Back Marketは欧米で事業を拡大した後、2021年に日本に進出した。日本においても中古市場は伸びており、リサイクル通信によれば2009年から13年連続で拡大、市場規模は2.9兆円にのぼる。そのうち、17.1%を「携帯・スマホ」が占めている。
このような勢いも後押しとなり、Back Marketの日本国内の売り上げは毎年3~4倍(昨対比)ペースで伸長しているそうだ。
Back Market Japan代表の山口亮氏は、「当社のお客様は大半が20〜30代で女性の割合が3分の1となり、これまで中古品を購入していた層とは異なる層が拡大していると考えている。近年は、子ども用としてリーズナブルなリファービッシュスマホが選ばれるケースも増えている」と話す。
同社では発売から2〜3年が経過した製品が人気だという。最近ではスマホを購入した顧客が、タブレットやノートPCなど別のリファービッシュ品を購入するリピート利用も見られているという。
山口氏によると、2025年までに同社のプラットフォームを通じて、国内でも中古の電子機器の買い取りを開始予定だという。同時にプラットフォームでリファービッシュ品を購入する場合は、買取金額を割り引いた差額で購入できる。
日本において同社が売り上げを拡大するには、以下の3点がポイントになると山口氏は話した。
Back Marketでは、1カ月の返品・返金保証と1年間の動作保証を提供し、消費者が安心して購入できるサービスを目指している。新品と比較して圧倒的に手頃な価格であれば、リファービッシュ品の選択が国内でも浸透していくかもしれない。
小林香織
フリーライター/北欧イノベーション研究家
「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】などの記事を執筆。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6ヵ月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材する。2022年3月より東京拠点に戻しつつ、北欧イノベーションの研究を継続する。
公式HP:https://love-trip-kaori.com
Facebook :@everlasting.k.k
Twitter:@k_programming
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス