麻倉怜士のデジタル時評--最新スマートフォンから現代に蘇ったアナログまで、2023年ベスト10

 2023年のオーディオ&ビジュアル機器を振り返ると、ハイエンドモデルが数多く登場してきたという印象だ。中でもこれまで培ってきた分野でノウハウを結集し、新たな知恵を入れ、ハイエンドモデルを生み出すメーカーが目立っていたように思う。

 ただ少し残念に感じたのは、純粋なUHDBDプレーヤーの新製品が少なかったこと。これはコンテンツの流通経路が変わったことによる影響が大きいのではないだろうか。現在、コンテンツはパッケージではなく、配信での提供が増えてきている。手軽に見られるため、視聴者数は獲得しやすいが、画質、音質のクオリティから考えると、やはり物足りない。

 技術を結集したハイエンドモデルの登場と、コンテンツの流通経路の変化が顕著だった2023年は、オーディオ&ビジュアル機器における結節点のような年だったように思える。そんな1年を振り返り、特にインパクトが強く、心に残った10選を紹介する。

  1. 10位:カメラ部の革新に踏み切った最新スマートフォン
  2. 9位:光と影の凜なる世界、モノクロ専用のデジタル一眼レフ
  3. 8位:坂本龍一さんが監修を務めた新時代の映画館音響システム
  4. 7位:かつての音を現代に蘇らせるアナログアンプ
  5. 6位:まさに録音芸術の革命、スタジオクオリティで聴けるコンサート
  6. 5位:こんな高音質なサウンドバーはほかにない、驚きを与えてくれる貴重な1台
  7. 4位:現代テレビシーンの最高峰、新画質価値を獲得した有機ELテレビ
  8. 3位:「音再生機」から「音楽再生機」に進化した、音楽ファンのためのDAC
  9. 2位:香港のオーディオファンも釘付け、高音質コンテンツがついにSACDでも
  10. 1位:音の表現力の豊潤さに刮目する、究極の表現型AVアンプ

10位:カメラ部の革新に踏み切った最新スマートフォン

ソニー「Xperia1 V」(スマートフォン)
ソニー「Xperia1 V」(スマートフォン)

 ソニーのハイエンドスマホ、Xperia1シリーズが最新の「V」で、カメラ部の革新に踏み切った。1つが最新映像センサーの搭載。カメラ群が縦に超広角、広角、望遠と並ぶが、メインの広角用センサーの暗部感度を前作比で2倍に上げた。感度向上には、受光素子の隣にあるトランジスタを裏面に移し、その分の受光面積を拡大。画素サイズを実質4倍に拡大して記録するピクセルビニング技術も初めて採り入れたこの合わせ技の効果は大きい。光を多く取り込めるので、回路で無理に増感する必要も減り、ノイズも減る。実際に暗黒に近い環境で撮影したが、被写体の姿形はきちんと分かり、ノイズも少なかった。

 さらに色合いや明るさ、コントラストなどの画質要素をパッケージにした「クリエイティブルック」を採用し、撮り手のクリエイティヴィテイを刺激。これは、ソニーの一眼カメラ「アルファ」用に開発された機能だが、簡単撮影をモットーとするスマホにこそふさわしいといえよう。

 スマートフォンのもう1つの雄はGoogleの「Pixel 8 Pro」だが、こちらはたいへんコンピューター的。「消しゴムマジック」を使って画像や音声編集ができ、完成度も高い。それに対し、Xperia VはCMOS、レンズ、画作りとテレビやカメラで培ってきた伝統の映像の技術をいかしており、ソニーらしいスマートフォンだと思う。

9位:光と影の凜なる世界、モノクロ専用のデジタル一眼レフ

リコーイメージング「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」(デジタル一眼レフカメラ)
リコーイメージング「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」(デジタル一眼レフカメラ)

 白黒写真は本質的に深い。コントラストと階調だけで語られる、光と影の凜なる世界の風景だが、そんな白黒写真を愛する愛好家に贈られるのが「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」だ。その名の通り、モノクロ専用のデジタル一眼レフになる。

 かつて白黒フィルム時代のカメラはすべて白黒専用だったが、デジカメ時代になると、カラーが当たり前。本機は世界的にもデジタル一眼レフとして初の白黒カメラだ。

 一般にデジカメはモノクロモードを持つのに、なぜ「専用」が必要なのか。実はデジカメのモノクロモードより、画質が圧倒的に良いのである。その理由は、センサー。カラーフィルターで色づけするカラーセンサーは、一画素が一色なので、他色は回りから融通し補間しなければならない。その過程で情報ロスが発生する。ところが、白黒センサーにはカラーフィルターがないので、そんな不都合がない。さらにフィルターが不要なので、素子に届く光の量が増え、受光感度が高くなる。

 PENTAX K-3 Mark III Monochromeは、デジカメ設計の流儀である高感度領域での撮影時にノイズリダクション(NR)を使っていない。その理由は、
ノイズ形状がたいへん美しいからだ。カラーセンサーでは、ノイズ形状に大小のバラツキがあり、汚い。そこでNRが必須になり、その結果、フォーカスが甘くなる。しかし、白黒センサーのノイズ粒子はさらさらと、細かく均一。しかも人の視覚特性から、ノイズが被写体に作用し、視覚的にフォーカスが締まったように見える。

 ピントが合った被写体の背景のボケ味も素敵。カラーセンサーでは、ボケ部分にボテッとした塊が散見されるが、白黒センサーでは、スムーズで階調推移がたいへんなめらか。味わいが美しい、自然で心地好いボケだ。白黒写真の魅力を心底、味わいたいなら、本機を推薦しよう。

8位:坂本龍一さんが監修を務めた新時代の映画館音響システム

「109シネマズプレミアム新宿」(シネマコンプレックス)
「109シネマズプレミアム新宿」(シネマコンプレックス)

 東京の新宿歌舞伎町に建立された地上48階、地下5階の「東急歌舞伎町タワー」の9~10階は、最新シネマコンプレックス「109シネマズプレミアム新宿」だ。シアター数は8。「シアター3」はDolby Atmos、「シアター6」は270度/3面の「ScreenX」、「シアター8」は35mm映写機によるフィルム投映と、多彩な映画コンテンツに対応している。

 ここは、かつて数々の名作を上映してきた「新宿ミラノ座」があった場所。その跡地にできる映画館として、音にもこだわっているのだという。音響監修を務めたのは坂本龍一さん。ロビーのサウンド、開場を告げるチャイム音、本編直前のロゴテーマを作曲したほか、映画の音については「曇りのない正確な音に。スピーカーだけではなくて、アンプにもこだわって欲しい」とリクエストがあったという。

 実際に映画館でCD、UHDBDを聴く形で音質をチェックしてみたところ、たいへん驚いた。まったくもって、普通のハイエンドオーディオの音ではないか。私のリスニングルームでいつも聴いているような緻密で流麗、そして生成り的な音の質感が、そのまま聴けたのである。

 多くの映画館の音は強調的、人為的、演出的なのだが、ここはたいへんナチュラル。良い意味で「普通の音」だ。冒頭のアコースティック・ベースの進行が端正で、スムーズ。低音が過度にでしゃばらず、バランスも好適。ボーカルもいつも聴いているような清涼でしなやかなものだ。

 映画の音はどうか。映画館が独自の音作りをして大向こうを唸らせたい劇音では、まるでない。個性を配し、作品が持つ音情報を高忠実度に再生する、換言するとディレクターズ・インテンションを徹底的に尊重した、新時代のハイファイシアターサウンドといえるだろう。

7位:かつての音を現代に蘇らせるアナログアンプ

オーラデザイン「VA 40 rebirth」(インテグレーテッドアンプ)
オーラデザイン「VA 40 rebirth」(インテグレーテッドアンプ)

 オーラデザイン「VA 40 rebirth」は、ピュアアナログアンプの最新傑作だ。1980年代後半のオーラデザイン初代「VA 40」のシンプルデザインを踏襲。伝統の「MOSFETシングル・プッシュプル」構成は音楽を新鮮に奏し、躍動的で闊達な進行が実に心地好い。新潟県の燕三条で金属加工されたシャシーはまさに工芸品だ。

 オーラデザインは、1989年に英国で創業したオーディオブランド。創業直後にB&Wの子会社として製造を続けた後、オーラデザイン・ジャパンへとブランドが移管され、現在に至る。VA 40 rebirthは日本国内で製造した、創業35周年の記念モデル。当時の回路設計を忠実に再現した純粋なアナログアンプとしてデザインされ、デジタル入力を持たず、ディスプレイ表示もない。

 アニバーサリーモデルとなったVA 40 rebirthのコンセプトはアドバンテージを明確なものとする瑞々しい音楽再現だ。それを長く評価されてきた優秀なローレベルのリニアリティと、新たに手にしたハイパワーレスポンスが叶えている。かつてオーラデザインが聴かせた音を現代に蘇らせる、今、聴いて欲しいアナログアンプだ。

6位:まさに録音芸術の革命、スタジオクオリティで聴けるコンサート

藤田恵美「ヘッドホン・コンサート」(SACD)
藤田恵美「ヘッドホン・コンサート」(SACD)

 スタジオ録音とライブ録音には、メリットとデメリットがある。スタジオでは、音響的に理想的な条件の下で高音質で録音できる。何テイクも重ね、部分的なパッチワークも加え、完成度をとことん高められる一方、ライブのような、観客との有言無言のコミュニケートからもたらされる、音楽的な感興の高まりとは無縁だ。

 ライブ収録は、そうしたビビットな緊張感から生み出される音楽性は獲得できるが、音の品格が低い。会場に広く拡声するためのPAの音が被ってしまい、鈍重な音になる。この二つのメリットを合体できないか。つまり「ライブの躍動」と「スタジオ録音の高品質」が、同時に得られれば、理想の音楽性と高音質が実現できるわけだ。それこそが「ヘッドホン・コンサート」だ。

 第2弾となるヘッドホンコンサートには、私も観客として参加。マイク、ヘッドアンプ、録音機などの機材は、まさにスタジオ録音そのもので、通常のライブで使用する客席用のPAスピーカー、奏者用の返しスピーカーは、いっさい無かった。客席では声がかすかに聞こえるだけ。しかしヘッドホンをつければ、実にクリアな演奏と歌唱が聴けた。

 このようなポップのライブはPAで拡声するので、どうしても音が分厚く、メタリックな尖りが加わり、質感は低くなる。そのためライブでは音質を無視し、ライブならではの興趣を楽しむことにしているのだが、ヘッドホンコンサートは、まったく違った。ライブ自体がものすごく高音質。スタジオと同じ機材でPAはないため、当然といえば当然だが、まさに「ライブ音質の革命」だと思った。

 それがそのままSACDになった本作は、高音質は当然。ボーカルの質感が緻密でナチュラル、粒子も細かい。ピアノ、ヴァイオリン、ギター、アコーディオンなどの楽器も明瞭で、上質だ。1曲目の「All My Loving」と12曲目の「Perfect (Encore)」に収録されている拍手の音も実に生々しい。これは客席では感じなかったことで、拍手もスタジオクオリティなのである。ヘッドホンコンサートはまさに録音芸術の革命だ。

5位:こんな高音質なサウンドバーはほかにない、驚きを与えてくれる貴重な1台

ゼンハイザー「AMBEO Soundbar Plus」(サウンドバー)
ゼンハイザー「AMBEO Soundbar Plus」(サウンドバー)

 薄型の液晶テレビや有機ELテレビは音が悪い。薄いボディの中に内蔵された小さなスピーカーは音が良いはずはない。その状況を救うのがサウンドバーだ。最近、国内外のサウンドバー22機種を試聴する機会を得たが、その中で圧倒的な高音質を聴かせたのが、ゼンハイザーの「AMBEO Soundbar Plus」だった。

 本体には、合計9基のスピーカーを搭載し、7.1.4ch(平面7+サブウーファー1、上方4)再生を実現。一般にサウンドバーは、「映画音声の迫力再生」が最大の目的のため、迫力系の強調音になりがちだが、本機はそうした誇張感はたいへん少なく、ナチュラルで素直な音。2チャンネルのCD再生でも、音楽をきれいにバランスよく、細部まで丁寧に聴かせてくれる。こんな高音質なサウンドバーはほかにない。

 本機の白眉は、世界的な研究機関「フラウンホーファー」と共同開発した立体音響技術「AMBEO」だ。スピーカーからビーム状に絞った音流を放出し、天井や壁に反射させ、室内空間に複数のバーチャルチャンネルを形成する。その効果は素晴らしく、この手の仮想チャンネル生成技術は、多くのサウンドバーが搭載しているが、AMBEOは最上のパフォーマンスだ。

 Dolby AtmosやDTS:Xなどの3D規格で制作されたコンテンツはもちろんのこと、2チャンネル音源でも、見事な立体音響が聴ける。あるべき位置に、きちんと音像が定位し、音場全体の臨場感が豊潤にして、音場の密度や解像感が高い。しかも、前述したように音質が良い。AMBEO Soundbar Plusはこれほどの上質な音と立体音響が得られるのかとの驚きを与えてくれる、貴重なサウンドバーだ。

4位:現代テレビシーンの最高峰、新画質価値を獲得した有機ELテレビ

パナソニック「TH-65MZ2500」(有機ELテレビ)
パナソニック「TH-65MZ2500」(有機ELテレビ)

 パナソニックの有機ELテレビは、2021、2022年と連続してすばらしい内容だったが、今回の「TH-65MZ2500」は現代のテレビシーンの最高峰と言えるだろう。

 その素晴らしさは、まずパネルの使いこなし。そもそもパナソニックのハイエンドモデルである2000番シリーズは、GZから始まってHZ、JZと来るすべてのモデルで、パネルの使い方が極めて巧みだ。パネルの改良点を捉えるだけでなく、それをテコに、全体のクオリティをレイズ・アップ。

 LGディスプレイの最新の高輝度有機ELパネル「META」をいち早く搭載し、ピーク輝度は2100ニットをマーク。従来機では、高いピークを持つ高輝度コンテンツは、白が飛んでいたが、MZ2500はそんな場面でも、しっかりと階調が呈示される。

 ほかの有機ELテレビも同様の高輝度を獲得しているモデルもあるが、MZ2500は、輝度のみならず、暗部、中間部の階調性能、色再現も改善され、総合的に新しい画質価値を獲得している。「自分たちの絵はこうだ!」と押し付けるのではなく、入力した信号に対して、「表現したいものを代弁」する表現的有機ELテレビという言い方もできよう。パナソニック流の精緻な画質設計の技が、さらに鋭く磨かれている。

3位:「音再生機」から「音楽再生機」に進化した、音楽ファンのためのDAC

RME「ADI-2/4 Pro SE」(AD/DAコンバーター)
RME「ADI-2/4 Pro SE」(AD/DAコンバーター)

 ADI-2/4 Pro SEは音楽的なボキャブラリーを、ひじょうな高解像度で表現する、刮目のDACだ。音の芯をたいへんしっかりと描く。音の中核の回りに剛毅な響きを配し、ディテールに至る音のグラテーションがたいへん豊潤で、音の情報量がひじょうに多い。周波数特性、ダイナミックレンジ特性、音のスピードといったオーディオ的なスペックが十全のクオリティであることに加え、音楽性が実に豊かなのが前作に比べ、表情の豊かさ、豊穣さ、音楽的なボキャブラリーの豊富さが際立つ。これまでは、まさに録音機メーカーが作ったDACというイメージで、モニター的な正確な音の再生にこだわっていたが、本機は「音再生機」から「音楽再生機」に進化している。

 ウィーン・フィルの「Neujahrskonzert 2023 / New Year's Concert 2023 / Concert du Nouvel An 2023」を聴いたところ、音場細部の描写、ダイナミックレンジの広さというオーディオ的な美質もぬかりなく、さらに躍動感、伸びのクリアさ、音色のカラフルさという、音楽を愉しく聴くエッセンスが濃厚な、エモーショナルな鳴り方である。単に音を再生するだけでなく、そこに生命力を付加し、音楽をより深く聴かせてくれた。

 これまでのADIは録音機メーカーのDACだったが、ADI-2/4 Pro SEはすべての音楽ファンのためのDACになったと言えるだろう。

2位:香港のオーディオファンも釘付け、高音質コンテンツがついにSACDでも

「情家みえ・エトレーヌ」SACD
「情家みえ・エトレーヌ」SACD

 「エトレーヌ」は2017年に日本の代々木スタジオで録音した作品だ。これまでCD、LPで発売していたが、SACDは今回が初めて。録音時には、CD用としてのPro Toolsのハイレゾデジタルと共に、LP用にテープで高品位アナログ記録しており、今回のSACDは、このLP用のピュアアナログプロセスを元に制作している。

 鮮明で突きぬけ感があり、同時に包容感、高い温度感を持ち、アナログ的な音の濃厚さと階調感、ボーカルの持つ芳しい香りが心に染み入る音だが、これが、香港のオーディオ・マニアの耳を虜にした。8月11~13日に香港で開催したアジア圏最大級のオーディオ・ビジュアル展示会「香港AVショー」で販売したところ、3日間で200枚以上のSACDと、数十枚のLPを売り上げた。

 香港のユーザーは、実に正直で、いまひとつのものには見向きもしないが、良いものは、並んでも待っても欲しい。会場では、販売元のUAレコードの副代表を務める私と代表の晴男氏のサイン会も実施。1日中、大繁盛で列が遠くまで続いた。「ありがとう」と握手すると、お客さんは「素晴らしいSACD、ありがとう」と応えてくれた。日本のオーディオショーではなかなか見られない光景だ。

1位:音の表現力の豊潤さに刮目する、究極の表現型AVアンプ

デノン「AVC-A1H」(AVセンター)
デノン「AVC-A1H」(AVセンター)

 デノンから登場した16年ぶりのハイエンドAVアンプ「AVC-A1H」は、音の表現力の豊潤さに刮目する。「A1」はデノンのAVアンプの最高級モデルのナンバーで、DVD音声のドルビーデジタルやDTSに対応した1996年の「AVP-A1」を皮切りに、11年後の2007年にはドルビーやDTSのロスレス(可逆)圧縮音に対応した「AVC-A1HD」が登場。それから16年後のいま、3D音響に「完全に対応」したAVC-A1Hがデビューした。

 ハイエンド製品はシャワー効果として、技術イメージ、ブランドイメージを最高度に涵養でき、その後の製品作りを支える重要な存在だ。しかしそれは短期間ではつくれない。技術の発展、部品の革新、フォーマットの新規登場……などの諸条件が整って初めて、開発が可能になる。つまりこの間にこれらの条件が整備され、16年もの歳月を掛けて、ようやく完成に至ったのがAVC-A1Hなのだ。

 最大のポイントは「15chパワーアンプ」。AVアンプは長い間、平面の5.1chの時代が続き、10年ほど前から、立体音場のDolby Atmosに対応してきたが、それでも、アンプ数は最大13ch。AVC-A1Hは、なぜ2ch増やしたのか。実は2014年Dolby Atmosが発進した時に、ドルビー研究所から配布されたデモディスクの中に「9.1.6ch(フロア9.1ch + 天井6ch)」のテストトーンが収録されていたのである。つまりドルビーはAtmosのチャンネル数として、最大15(サブウーファー用の0.1を除く)を想定していたわけで、その理想に「完全に対応」したのだ。

 デノンは「15chの最高音質」を実現するため、1chごとにモジュール化したアンプを左右対称に配置する「モノリス・コンストラクション」を採用。加えて、全体にわたる低インピーダンス(動的抵抗)化、低ノイズ化、電源の強力化、チャンネル間のクロストーク(信号の漏れ)の最小化などの設計に徹底的に取り組んだ。

 音のインプレッションだが、「ハイエンドなエンターテイメント」とは何かを、真剣に考え抜いた音だ。よりヒューマンに、より情緒的に表現し、映画の音の三要素の台詞、音楽、効果音のそれぞれで、「感情表現力」が圧倒的。台詞に込められた思い、音楽の情感、そして効果音の臨場感や現場感……などその音が持っている、もっとも深い部分の意味合いまでを白日の元に聴かせてくれる。音楽音源もそのミュージシャンが、ここまでの感情を音に込めていたのかが分かる。まさに究極の表現型AVアンプである。

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