テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。
ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。今回ゲストとして登場いただいたのは、丸紅 穀物油糧部事業開発課課長の桑野洋平氏。昨今注目が集まる昆虫を水産養殖の飼料原料として活用する取り組みについて聞いた。
加納:桑野さんがいらっしゃる穀物油糧部は、どんな事業を展開されているのでしょうか。
桑野氏:丸紅の食料ビジネスの中でも家畜やその飼料が事業領域になっています。本部の従業員数は400人強。コーヒーや菓子などを取り扱う第1本部と畜産関係を手掛ける第2本部に分かれています。
大野氏:穀物油糧部という部署名自体が、IT業界に身を置く人間からすると、業務内容の想像つかないというか。
桑野氏:トウモロコシや小麦、大豆といった穀物を扱っています。北南米等から穀物を輸入し、それが食品加工メーカーを通してパンやお菓子になるというイメージです。大豆であれば食用油になりますし、トウモロコシであれば最終的に飼料になります。
大野氏:そうなんですね。私たちはきっとどこかで丸紅の恩恵を受けて、普段生活しているってことですね。その中で昆虫タンパクの活用に向けた取り組みを手掛けられているとのことですが、そもそもなぜこの事業を始められたのですか。
桑野氏:丸紅のグループ会社に日清丸紅飼料という会社があり、ここは家畜や魚向けの飼料を製造しています。水産飼料は、カタクチイワシを粉にした魚粉と呼ばれるものがメインなのですが、原料は有限。サステナブルではないんですね。そこで、魚の品質を担保しながら餌をいかにサステナブルにしていくかという部分に着目して始めたのが今回の昆虫タンパクを水産飼料に活用する取り組みです。
大野氏:養殖業にかかるコストのうち、魚粉の価格はどの程度の割合を占めているのですか。
桑野氏:全体の7~8割が飼料のコストにあたります。その中のさらに60%が魚粉の価格になりますので大きな部分を占める形になります。
大野氏:イワシが有限飼料ということもありますが、そもそも漁獲量が落ちていたり、燃料が高騰したりと、水産業の大変さが伝わってくるニュースが多いですが。
桑野氏:おっしゃるとおりで、魚が獲れないが故に値段が高騰していく部分もありますし、20年前に比べると魚粉の価格は6~7倍、ここ1~2年でも2倍近くに高騰しています。ただ、ここまで上がったから今度は落ちるかというとそうではなくて、高価格が継続していくのではないかと見ています。
大野氏:魚を食べる人口が非常に増えてきているにもかかわらず飼料は高騰している。資源自体も枯渇してきている、という流れのなかで昆虫に注目されたのですね。
加納:昆虫食と聞くと、お菓子などに配合して人間が食べるものというイメージだったのですが。
桑野氏:私たちは人間向けではなく、昆虫由来の原料を魚の餌に活用するために、本取り組みを推進しています。
大野氏:フランスの昆虫製造企業であるYnsect(インセクト)と協業されたそうですね。
桑野氏:インセクトは、世界の中でも最大手クラスの昆虫タンパク製造会社です。本社はパリにあり、フランスの郊外に工場を持っています。昆虫養殖を手掛ける企業は世界にたくさんありますが、実際に商業ベースで手掛けているのがインセクトの強みです。
大野氏:ここと手を組んで、事業を開始される感じなのですね。
桑野氏:そうですね。用途としては水産飼料のほかペットフードなどにも使われており、かなり大きな市場になってくるかと思います。ペットにも穀物アレルギーなどがあって、通常のペットフードの代替としての需要も見込めると思っています。
大野氏:昆虫養殖をビジネス的に考えると、単価を下げるためにも大規模に飼育する生産性の向上が重要だと思います。インセクトではこのあたりの優位性も高いのですか。
桑野氏:そうですね。これからはコストを下げていくのが一番大事になってくるかと思います。インセクトでは、フランスに2つの工場を持ち、11月には最新の工場が稼働を開始しました。これにより、生産能力は今までの1000倍程度になっています。加えて、現在建設中の工場もあり、将来的に低コストで供給ができる見通しが立っています。
大野氏:大規模飼育について、もう少し詳しく教えてください。プロモーション映像などを見ると、かなり自動化が進んでいるようですが。
桑野氏:もちろん人の手を通してやるべき作業もありますが、新工場についてはほぼ自動化しています。2022年に現地視察をしましたが、オペレーション上は人手がほぼいらないレベルの工場になっています。働き手不足は世界的にも課題の1つですが、工場内の作業を自動化することで、解消できる可能性があります。サステナブルの観点からしても自動化は非常に重要だと考えています。
下記の内容を中心に、音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」で、以下のお話の続きを配信しています。ぜひ音声にてお聞きください。
大野泰敬氏
スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー
事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。
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