日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)が10月4日から、指定価格制度をスタートし、その対象となる第1号製品であるドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム」の新製品2機種を発表した。いずれもオープンプライスだが、日立初の13kgモデルとなる「BD-STX130J」の価格が37万円前後(税込)、12kgモデルの「BD-SX120J」が33万円前後で販売されることになる。
日立GLS 常務取締役COOの伊藤芳子氏は「指定価格制度により、価格がどんどん下がるという状況がなくなる。必要以上の価格下落を抑え、適正な価格で価値を購入してもらえるようになる。指定価格制度については、販売店からの理解を得られていると理解しており、今後、ユーザーへの認知度の浸透を図りたい」と語った。
指定価格制度とは、メーカーが販売店の在庫リスクについて責任を持ち、売れ残った商品の返品を可能にする一方で、対象製品の販売価格はメーカーが指定し、値引き販売ができないようにする。すでにパナソニックがこの仕組みを導入しており、日立GLSは2社目となる。
日立GLSでは、2022年7月からこの仕組みを検討しており、大手量販店や地域家電店などと対話を進め、制度構築を進めてきた。
また、日立GLSのドラム式洗濯乾燥機を生産している茨城県日立市の多賀事業所では、指定価格の対象となる今回の新製品向けに生産ラインを新設。需要にあわせて安定的な供給を図る体制を敷いたことも明らかにした。さらに、同社が日立グループと連動し、2年前から推進している物流改革の成果を生かし、即納体制や返品時の効率的な輸送なども実現するという。
日立GLSでは、今後1年間で、製品ラインアップの約10%を指定価格制度の対象とする。商品カテゴリーは明らかにしていないが、同社では、洗濯機、冷蔵庫、掃除機を重要分野としており、これらの分野での高付加価値モデルの一部が対象になりそうだ。今回、指定価格制度の対象の第1号製品にドラム式洗濯乾燥機を選んだのも、機能面での差別化が図りやすい点が背景にある。実際、ドラム式洗濯乾燥機では、パナソニックと日立GLSの2社で約6割のシェアを持つ。
「今回の新製品は、『らく はや きれい』に加えて、ヒートポンプを初めて採用することで、より省エネで洗濯ができる。技術的に困難な部分を両立させたものであり、お客様に価値を提供し、刺さる製品になっている。日立独自の『風アイロン』や『らくメンテ』の進化に加えて、社会課題である省エネにも対応できる」と自信をみせた。
なお、既存製品は指定価格の対象とはならず、新製品の発表にあわせて対象製品の品ぞろえを行っていく。また、日立ジョンソンコントロールズ空調のルームエアコン「白くまくん」は指定価格制度の対象にはならない。
日立GLSでは、新たな販売店制度として、「日立家電品正規取扱店」を開始し、これらの店舗を対象に指定価格制度を実施する。それ以外の店舗では指定価格の対象となる製品は販売できない。
日立ブランドの家電を主に取り扱う家電品専門地域小売店である「日立チェーンストール」店をはじめとする地域家電店のほか、家電量販店、通販サイトなどと、これまでの販売店契約をもとにして新たな契約を結び、10月4日には全国1万5500店舗が契約。2024年3月には、1万6000店舗になる予定だ。
契約条件は、日立GLSから製品を仕入れて、消費者に直接販売する店舗であることが前提であり、顧客に対して製品情報を提供できること、家電品の設置や工事を実施できること、アフターサービスや廃棄、リサイクルをサポートできることが契約に盛り込まれているという。
これにより、販売だけでなく、アフターサービスを含めた製品のライフサイクル全体をサポートする体制を強化できるとしている。
10月4日午後6時から、日立家電品正規取扱店を検索できるウェブサイトをオープン。現時点では大手家電量販店が掲載されているだけだが、11月初旬には地域家電店も検索できるようになる。また、同制度に参加している店舗は、日立家電品正規取扱店であること示すマークを表示できる。さらに、指定価格対象製品のサイトには、「この商品はお取り扱い先を限定しております」と表記し、日立家電品正規取扱店でしか購入できないことを示す。
日立GLSでは、今回の日立家電品正規取扱店制度および指定価格制度の導入により、すべての店舗で、同一価格で販売できるようになり、製品ライフサイクルの長期化につながることを見込んでいる。これまでは、販売開始から一定の期間を経過すると値引きが行われ、販売開始時に比べると、平均して2割引き、大きいときには4割引き程度で販売され、在庫処分されることもあった。
また、これまでは、価格を維持するために毎年のようにマイナーチェンジを行っていたが、2年に1回のメジャーバージョンアップに開発リソースを集中させることで、付加価値機能の進化にもつなげることができると想定している。
「良い製品を出すために、お客様の声に耳を傾け、腰を据えて開発できる期間を持つことができる」(日立GLSの伊藤常務取締役 COO)という。
さらに、販売開始時から終売時点までの販売数量の平準化を可能とし、在庫の適正化、収益の安定化などのメリットがある。
一方、販売店においては、価格競争ではなく、製品の価値の訴求に注力できるほか、接客力やアフターサービスによる差別化を図ることができ、付加価値販売の強化によって、収益性を高めることができるというメリットを想定している。
日立GLSでは、国内の家電市場における販売形態などが多様化するなか、安心して家電品を購入できる環境づくりを目指しており、今回の指定価格制度の開始は、それを加速する施策に位置づけている。
同社ではパーパスを掲げ、目指す姿として、「360°ハピネス ひとりひとりに、笑顔のある暮らしを」と打ち出している。指定価格制度は、これを実現する手段として、同社事業戦略の重要な柱のひとつになる。
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