オンラインストアを侵食するAI生成本--実在の著者をかたるケースも

Maria Diaz (ZDNET.com) 翻訳校正: 佐藤卓 長谷睦 (ガリレオ)2023年08月17日 11時40分

 人工知能(AI)ツールが普及し、容易にアクセス可能になるにつれて、さまざまな業界が、AIを導入しつつ、同時にAIに対する防御も進めるという新たな課題に直面している。出版業界はその最たる例で、すでにAIが「書いた」書籍がオンラインストアにあふれる事態に対応を迫られている。

ロボットの手がタイプライターを打つイラスト
提供:Moor Studio via iStock/Getty Images Plus

 このような書籍はオンライン書店のバーチャルな「棚」を埋め尽くす状況だ。Amazonも例外ではない。電子書籍リーダーの「Kindle」を手がける同社は、電子書籍の販売拡大のけん引役として知られ、米国の書籍の流通の最大80%を支配しているとの報告もある。

 AIにより生成された書籍の広まりは、内容の質が懸念されるだけでなく、著者の真正性にまつわる問題さえ引き起こしている。というのも、こうしたAI生成の書籍の一部では実在する人物の名前が本人の許可なく著者名に使われ、当の本人がそのことに気づいていないケースもあるからだ。

 書籍紹介サイトのGoodreadsで自身の名前が勝手に使われている書籍を発見した著作家のJane Friedman氏は、「このような行為をはたらく者は誰であれ、私の名前を信頼し、私が実際に書いた本だと思って(Goodreadsに)書評を書いてくれた紹介者たちを食い物にしているのは間違いない。これらの本は私が書いたものではなく、AIによって作られた可能性が高い」と、最近のブログ記事で述べている。「私がTwitter/Xでこの件について不満を訴えたところ、ある著作家が返信で、先週だけで29冊の違法な書籍を報告しなければならなかったと教えてくれた。29冊もあったとは!」

 The New York Times(NYT)によれば、AI生成本が特に目立つのは旅行ガイドだが、料理、自己啓発、プログラミング、フィクションなど、他のジャンルにもこの傾向は広まっているという。SF雑誌のClarkesworld Magazineは、「ChatGPT」の登場からわずか数カ月後に、投稿小説の新規受付を停止せざるを得なくなった。AIによって書かれた小説の投稿が増えたからだ。

 ChatGPT、「Bing AI」「Google Bard」「Claude」などのAIチャットボットは、さまざまな文体の文章を生成できるため、テキストコンテンツの作成に利用されるケースが激増している。また、有効なメールアドレスさえあればアカウントを登録できるため、幅広い層がアクセスできる。しかも利用するのも極めて簡単で、直感的に操作できるチャットウィンドウに質問やプロンプトを入力するだけで、ボットが会話形式で答えを返してくれる。

 つまり、誰もがこうした生成AIツールを使って、記事、コード、手紙、履歴書を書き、書籍を執筆できるわけだ。

 「タイプライターやコンピューターと同じように、いずれはテクノロジーが編集者や創作者に力をもたらしてくれると信じているが、あくまで作家が中心にいるという(出版業界の)ビジネスモデルに変化が起きているようには見えない」と、投資会社のKohlberg Kravis Roberts(KKR)でプライベートエクイティパートナーを務めるTed Oberwager氏は先ごろ、ニュースサイトAxiosの取材に対して述べている。「著者、人間同士のつながり、そして経験は、置き換られるものではない」と同氏は指摘した。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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