パナソニック コネクトと第一食品は完全院外調理の拡大に向け、両社で開発したトレイメイク自動化システムを第一食品の相模原工場に導入した。3月29日から運用を開始し、6月時点で2つの病院に食事を提供している。今回のシステムは、給食現場の人手不足解消に役立つとして期待がかかる。報道陣向けの工場見学の様子をレポートする。
第一食品は病院などへ給食を提供する事業を手掛けている給食サービス事業者だ。2000年からは、完全院外調理サービスをスタート。セントラルキッチンで作った食事を提供する同サービスは、院内調理に比べると人員が少なくてすむほか、病院内に広い調理スペースを用意しなくてもよいといったメリットから、現在約100の病院に採用されているという。労働人口減少を背景に、今後も院外調理を利用する病院は増えると予想されている。
現在同社の完全院外調理サービスは、大阪・兵庫・岡山・神奈川の4つのセントラルキッチンで調理を行なっている。献立作成、材料調達、調理、盛り付け、トレイメイクという製造工程の中、もっとも難易度が高い作業が「トレイメイク」だという。
トレイメイク工程は、入院患者の病態に合わせた調理品を組み合わせ、トレイ上にセットする作業工程。調理品を組み合わせる作業は、「たんぱく制限食」「塩分制限食」など、患者の病態にあわせるほか、アレルギーも考慮する必要がある。そのため、「調理品の組み合わせは1億通りに及ぶ」(第一食品担当者)とのこと。もちろん、誤配膳は許されず、安心・安全な食事提供が大前提だ。そのため経験豊かな熟練のスタッフの育成・確保が欠かせない。また、病院食は、365日3食欠かさずに提供する必要があり、朝食の仕込みや夕食後の片付けなどのために、早朝・深夜の勤務が必要のため、人材の確保が課題となっている。
こうした課題を解決するため第一食品とパナソニック コネクトはトレイメイク作業の自動化システムの開発に着手。
トレイメイクの作業の工程をチェックして、どの工程を自動化するか調査したほか、1食あたり4秒でトレイメイクする作業スピードに対応しつつ、食材を崩したりこぼしたりしない仕組みづくりを開発した。
具体的には、従来紙の食札(食事の内容を記載したカード)を元に手作業で行なっていた調理品の組み合わせ作業を自動化。病院からの食事オーダー情報をシステムに取り込み、該当する調理品の皿を棚から自動で送り出し、その調理品をモニター画面をみながら作業員がトレイにセットする仕組みにした。
また、避けるべき食材とそれに対する代替食材を使った献立提案を行なうソフトも導入した。食札をデータ化することで、印刷・トレイに置く作業などの手間が省けるほか、トレイに調理品をセットする際の作業はモニタ画面で確認しながら行えるようになった。また、従来は食札に手書きで代替食材の献立を記入していたが、ソフトで行なうことでトレイメイク前の作業の軽減にもつなげた。
本システムの導入により現場からは「皿を探す作業がなくなり負荷が軽減された」「配膳計画がデータ化されたことで、前後工程との連携が容易になった」といった声がきかれたという。
また、従来トレイメイク作業のスタッフの育成には約2年要していたが、本システム導入により「入社2日目のスタッフでも作業が可能になった」(第一食品担当者)とのことで、作業難易度を低減できたという。また、従来1ラインに最低14名必要だった人員は、4名(相模原工場では現在5名で運用)で運用できるようにした。
調理品の管理はRFIDタグではなく、二次元バーコードで管理している。当初は単品管理が可能なRFIDタグによる管理も検討したそうだ。だが、病院の場合、検査などの関係で食事の時間がずれる患者もいる。その際は、レンジで温め直してから食事を提供するのだが、RFIDタグはレンジの加熱で壊れてしまう。そこで、バーコードを使って管理をすることになったのだという。
完全院外調理のデメリットをあえて聞くと、2つ教えてくれた。1つは、注文の締切りが早いこと。院内厨房の場合、急な入院患者に対する食事の提供も柔軟に行えるが、完全院外調理の場合は、食事の提供時間の24時間前が締切りとなっている。2つめは、メニュー、食器、トレイは全て共通のため、個々の施設での個性は出しにくいところとしている。
今後、第一食品では自社工場への本システム導入をすすめるほか、複数の施設や病院を運営している医療法人との提携などを視野にいれ、展開を広げていく考え。2022年12月期57億円の売上高を2043年12月までに3000億円を目指すとしている。パナソニック コネクトは、トレイメイクを起点とした完全院外調理の効率化・高品質化を今後もすすめ、完全院外調理における現場最適化を支援していくという。
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