1992年のディストピアSF小説「スノウ・クラッシュ」で「メタバース」という用語を初めて使用したNeal Stephenson氏は、楽観派である。
同氏は米国時間5月31日、拡張現実(AR)をテーマとしたカンファレンス「Augmented World Expo(AWE)」での講演で、「この数年ほどの間に、多くのこと、つまり、メタバースの構築を実際に開始するのに必要なさまざまな前提条件が出そろったように感じる」と語った。
同氏はメタバースに強い興味を抱いているが、それは小説に限ったことでなはい。同氏は1990年代以降、ARヘッドセットメーカーのMagic Leapを含むいくつかのスタートアップ企業で働いてきたが、現在関与しているスタートアップ企業LAMINA1では、メタバースの基盤の構築に取り組んでいる。同社は、それが将来的にオープンな基盤になって、開発者が簡単にそこで何かを構築したり、人々が気軽に訪問したりできるようになることを期待している。
人々にその価値を納得させるのは、容易ではないだろう。メタバースは2021年に大きな話題となったが、それ以降、人々の関心は大幅に低下している。Facebookは社名をMetaに変更したが、投資家たちは、メタバースで利益を得ようとする同社の野心を激しく非難してきた。そして、メタバースで販売可能な商品を作成する人々が正当に利益を得られる「分散型」メタバースツールの構築を目指したWeb3運動も、詐欺やセキュリティ脆弱性、「ラグプル」といった根強い問題に悩まされている。ラグプルとは、投資を募るプロジェクト運営者が仮想通貨(暗号資産)を大々的に宣伝した後、その資金を持ち逃げすることだ。投資した人には、価値のない資産しか残らない。
Creative Strategiesでアナリストを務めるOlivier Blanchard氏は、コンピューターによって生成される仮想現実(VR)、コンピューター画像を現実世界と融合させるAR、そして、それら両方の要素を含むXRがメインストリームに浸透するという考えに懐疑的である。
「AIのゴールドラッシュが沈静化し、Appleが何らかの方向性をついに示したときに、メインストリームの消費者の関心を引きたいのなら、将来の目標の方向性を決める必要があるだろう」と同氏は話す。「メタバースやXRを手がける企業は今後、自社のソリューションについて、単に高価で複雑なだけなのではなく、それによってユーザーの生活がどう改善されるかということをユーザーに明確に伝える必要が出てくる」
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