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ChatGPTで注目される生成系AI--有用だがリスクも、企業や学生のスタンスは?

 生成系AIが注目を集めている。特に、OpenAIのAIチャットサービス「ChatGPT」は、ニュースを耳にしない日はないほどだ。企業や学校、若者を含むユーザーたちは、生成系AIについてどのようにとらえているのか。

世界で増加するAI活用企業

 企業のAI導入状況はどうなっているのだろうか。IBMの「世界のAI導入状況2022」によると、35%の企業が「AIを業務に活用している」と回答し、検討中の企業も42%いた。既に活用している企業は、2021年に比べて13ポイント増加している。大企業は中堅企業よりもAIを活用する割合が高く、国別に見ると中国やインドが高かった。4分の1の企業が人材不足やスキル不足を理由にAIを導入しており、また、5分の1の企業が環境面のプレッシャーを理由に導入している。

 AI導入の最大の障壁については、「AIに関するスキル、専門知識、またはナレッジが限られている」が34%で最多に。続いて「料金が高すぎる」(29%)、「モデル開発用のツール/プラットフォームが不足している」(25%)、「プロジェクトが複雑すぎる、または統合や拡張が難しすぎる」(24%)、「データが複雑すぎる」(24%)などが挙げられている。

 国内状況を見ると、ソニービズネットワークスの「2022年最新AI導入状況調査」では、AI導入企業の3社に2社が3年以内に導入している。これはコロナ禍前後と重なっており、影響がある可能性がある。AI導入によって4割以上の人が業務の作業時間を削減できたと感じる一方、大幅な削減は今後の挑戦としている。

 AI導入企業の課題は、効率的な運用ができていないことと人材不足が、企業がAI未導入である理由としても人材不足が挙げられている。人材不足のためにAIを導入したいと考えるものの、知識を持つ人材が不足しているために導入できないというジレンマに陥っていることがわかるだろう。

嘘や課題も多いが可能性も広がる生成系AI

 次々と機能に優れた生成系AIが登場し、一般人でも利用しやすい環境が整いつつある。ChatGPT、「Bing AI」「Bard」あたりは特に注目を集めていると言っていいだろう。

 中でも機能が高いと評判のChatGPTは、驚くようなクオリティのものを瞬時に生み出してくる。質問するだけで読書感想文やレポートを書いたり、条件を出すだけでビジネスメールを作り出したりしてくれる。英文作成も容易だし、プログラミングコード作成までできてしまう。

 しかし、事実関係を尋ねるとまったくの嘘を述べることも多く、存在しないものを回答に混ぜてくるなど、残念ながら信頼性には乏しい。また、2021年9月までの情報で学習しているため、最新の情報には対応できていない。

 同時に、入力したもので学習する仕組みなので、個人情報流出、著作権侵害などにつながるリスクもある。

禁止から活用まで企業による対応の違い

 執筆時点における、ChatGPTに対する国内企業のスタンスはさまざまだ。

 例えばNTTドコモは、執筆時点ではChatGPTの使用を禁止している。ヤフーは、情報管理や著作権問題などの観点からクリアしなければいけない問題が多いため、議論中ではあるものの現時点では利用しないという。

 一方で、業務効率化に活用し始めている企業も多く、社員に積極的に利用させたり、活用を奨励したりするところも増えている。パナソニックホールディングスは、子会社パナソニックコネクトが既に活用している「ConnectGPT」をベースに、グループ全社員9万人向けにAIアシスタントサービス「PX-GPT」を展開している。

 なお、同社で導入の際には、AI利用の注意喚起とともに、「社内情報・営業秘密・個人情報などの入力はしない」などのルールを定めている。

 国内ではまだ、AIが持つ懸念点も企業における導入の障壁になっている、といえそうだ。

学生でも利用の意向はバラバラ

 若者世代は、生成系AIについてどのように考えているのだろうか。講師を務める大学の受講生を対象に聞いたところ、ChatGPTの認知度は約半数、利用率は1割程度だった。

 「わからない」「悪用されないか心配」などの声が多い一方で、「素晴らしい機能」「便利な機能で自分でも使いたい」という声も。「大学のレポートなどで悪用する可能性もあるので制限したほうがいい」「自信がないので使う機会はないと思う」という学生もいたが、一部には既に使いこなしている学生もいた。

 AIの活用によって、業務の一部がなくなり従業員が減らされるという見立てがある。事実、既に一部のイラストレーターが失職したという報道などもある。確かによくわからないものは怖いが、時代は待ってくれない。個人も企業も活用すべき時がきたのではないだろうか。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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