茨城県境町、出前館、エアロネクストは4月5日、デジタル化やドローンなどの次世代高度技術の活用による連携において、連携締結協定式およびドローンの出発式を開催した。
当日は、出前館のロゴがあしらわれたACSL製の物流専用ドローン「AirTruck」が、初フライトを披露。出前館のアプリで注文したピザーラのピザを、ドローンがレベル3飛行で配送した。
茨城県境町、エアロネクスト、セイノーホールディングス、BOLDLY、セネックは、2022年10月3日に「ドローン、自動運転バスを含む次世代高度技術の活用に関する連携協定」を締結して実証を続けてきた。
2023年2月3日には、新スマート物流「SkyHub(スカイハブ)」の拠点「ドローンデポ境町」を開所。なお、SkyHubとは、セイノーホールディングスとエアロネクストが共同で開発を推進する、ドローン配送と陸上輸送を組み合わせた新しい物流システムだ。
境町は、山梨県小菅村、北海道上士幌町、福井県敦賀市、千葉県勝浦市に続いて、SkyHubが社会実装フェーズに入った全国で5つめの自治体で、このたび晴れてサービス提供開始となった。
注目は、出前館のアプリとSkyHubが融合した点だ。出前館アプリを開くと、これまでは境町で注文できる店舗は1つしかなかったが、SkyHubが地元の飲食店や小売店の商品を取り扱うモールとして出前館に出店することで、新たに17店舗、約300品目の商品を注文できるようになった。
10時迄に注文した商品は12〜13時にお届け、16時迄に注文した商品は18〜19時にお届け予定で、配送料は一律500円。商品は、出前館アプリ内の「SkyHub Delivery 境町店」か、希望者に配布された紙のカタログから確認できる。当面は電話での注文も受け付ける。
市街地など、陸送のほうが配送効率がよいエリアはトラックで、市街地から離れた地区への配送はドローンで行う予定だ。ドローンの配送ルートは現在、5ルートに開通のめどが立っており、将来的にはレベル4での日本初のドローン配送サービス実装を目指すという。
境町は、地域住民が利用できる自動運転バスを実用化しており、全国から自治体が視察に訪れる注目度の高い自治体だが、境町長の橋本正裕氏は、「先進的な技術を導入したいからやっているのではなく、あくまでも困っている人を助けるため、境町を住み続けられる町にするために、自動運転バスに続いてドローンも活用していきたい」と話す。
また、橋本氏は、「境町よりも高齢化率が高いなど、もっと困っている自治体はたくさんあるので、境町でサービスを磨いて、ぜひ他のエリアにも展開していただきたい」と、事業者を激励した。
出前館で社長を務める藤井英雄氏は、「今後は、私たちのサービス単体では難しかったエリアにも展開していきたい。社会課題の解決に向けて、自治体さんとの連携も強化していく」と話した。
エアロネクスト 社長の田路圭輔氏も、出前館とは2021年にコロナ禍で昼夜なく勤務する医療従事者へ、吉野家のホカホカの牛丼をドローンで届けた実証以来、協業の可能性を模索し続けてきたことを明かす。
「SkyHubが町の商店のモールとして出前館に出店することで、町全体のお店、住民の方がデリバリーサービスを利用できるようになる。また、出前館のサービスを過疎地域も含めて、全国津々浦々まで普及させることにもつながる」と、“町まるごとECモール化”への意気込みを語った。
連携協定締結式には、エアロネクストと共に新スマート物流「SkyHub」の社会実装を精力的に進めているセイノーホールディングス 執行役員の河合秀治氏をはじめ、自動運転バスの運用を担っているセネック 取締役副社長の和歌良幸氏、自動運転バスの遠隔監視システムの開発を手がけるBOLDLY 市場創生部渉外部課課長の星野達哉氏も出席。近く、デリバリーサービスの配送手段として、自動運転バスの活用も予定しているという。出発式にも多くの関係者が駆けつけ、「参画店舗を50、100と増やしていこう」という声が聞かれるなど、「住み続けたい町」への期待が高まっていた。
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