“共創の価値を最大化させる「組織・チーム・文化づくり」”をテーマに、事業を成功に導くチームづくりのヒントを様々なキーマンに聞くオンライン・セッション「CNET Japan Live 2023」。2月13日はゲーミフィケーションのナレッジを用いた事業を展開するセガ エックスディー(セガXD)の代表取締役社長執行役員CEOを務める谷英高氏が登壇し、事業を成功に導くヒントと共創の事例について語った。
セガXDは、ゲーム会社のセガと電通グループによる合弁会社で、エンタテインメントビジネスで培われたノウハウをベースにしたゲーミフィケーションをコアメソッドにするCX(カスタマーエクスペリエンス)デザインカンパニーとして2016年8月に設立された。「世界をよくする、衝動をつくろう。」をテーマに、これまで蓄積してきたノウハウを世の中に役立てることを目指し、企業や自治体などのクライアントに対し一番の強みであるゲーミフィケーションを用いた課題解決を提案している。
谷氏はエンジニアとしてセガに新卒入社し、ソーシャルゲームでリードエンジニアを担当した後、複数の新規事業立ち上げや開発責任者などを担当している。自身もゲーム機が世に出始めると共に成長し、エンタテイメントの中で育ってきた経験を持つ。
「当社は共創によって設立され、ゲーミフィケーションとは共創体験を作っていくことだと考えている。事業戦略から開発、プロモーションまで一気通貫で行い、ゲームに関連するXRやメタバースなどの先端技術も活用するが、一番のポイントはビジョンや顧客の行動心理といった感情に近いところを起点に、何よりも心理的にも行動的にも使いたくなる体験設計にすることを意識している」
セガXDではバイアスやナッジ、ユーザー属性といった要素についてゲーミフィケーションを用いてわかりやすく伝えるノウハウがあり、考え方としてはゲームの機構や体験デザインを駆使し、顧客の内発的欲求を引き出すことで気持ちを動かし行動につなげる。一般的にモチベーションのデザインは3段階分かれており、同社のゲーミフィケーションは3.0まで要求を満たす体験設計になっている。
共創でも使える独自のフレームワークとしては、情緒的価値を中心としたエモーションフロー、行動変容を中心としたグロースサイクル、感情を動かす属性と要素があり、実際の案件に対するファクトに落として伝えるノウハウを持っている。
その上で共創に必要なミッション・ビジョン・バリューを設定しているが、特に必要なのは社外との共創を目指す”X-tainment Company”であることと、社内で共創する文化を作って共に達成するバリューにすることだという。こうしたチームや組織にいつも見える形で共創を意識付けていくことは非常に重要だとしている。
とはいえ、初めて会うクライアント企業といきなり共創しようとしてもなかなか上手くいかないこともある。そこで共創のための共感を作る有効手段の一つとしてワークショップの開催がある。
「まずは小さなグループで幼少期の思い出や原体験をシェアし、共感できる価値観を客観的に評価。そこで最後に選ばれたものに対してアイデアを深堀りしていくという作業を我々も一緒に行い、そこに生まれた共感を共創に実現させていく」
実際の取り組みとしては、採用選考にゲーミフィケーションを取り入れた例があり、人事や事業担当者と学生が共創しながら行われた。さらに大阪の泉大津市の例では、自治体と学生と連携して防災訓練を行い、当事者意識を生み出すことで若年層の行動変容につなげることに成功した。同じく自治体の例として、公会計にインフォグラフィックスを活用した「町ちがいさがし」を採用したところ、住民に共創の意識を持ってもらうことができたという。
ゲームの技術を活用した例としては、ドコモと親会社のセガが持つキャラクターを用いて、XR技術のプロモーションを共創した事例もある。いずれにしても、自分からやりたくなる気持ちにする方法であることから、教育領域での活用も活発に進んでいるという。
会社が設立された当初は、クライアントを見つけるためにアイデアを数百社に持ち込むなど営業に力を入れていたが、事例ができてからは紹介でビジネスが広がり、最近は幅広い業種から問い合わせが増えてきた。
「事業設計などは、担当者がやりたいものになりがちだが、ゲーミフィケーションを取り入れることで感情的な部分や原体験に落とし込むことができ、カスタマージャーニーがより良いものにできるという効果もある」
最後に谷氏は「共創には、まず共感がなければ実現できないと考えており、相手にバイアスを持たないことも大事。今後は皆さん自身が持つノウハウを共創の意識が持てる文化づくりにするようディスカッションできれば」とコメントし、セッションを締め括った。
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